【サービス】
まちづくりの一環としてフラワー長井線の車両に「FREESPOT」設置山形鉄道、いち早く“列車インターネット”を実現■URL 山形県南陽市の赤湯駅から長井市を経由して白鷹町の荒砥駅までを結ぶローカル線で、全国に先駆けて“列車インターネット”が実現した。山形鉄道が6月末、フラワー長井線の車両内に「FREESPOT」を設置し、乗客が無料で利用できる公衆無線LANサービス「Netトレイン」を開始した。 同社が保有する8両の車両のうち5両に無線アクセスポイントなどのネット接続機器を導入。運行される約8割の列車でNetトレインが利用できる。車内からインターネットへは128kbpsのPHSで接続する構成だ。沿線で2カ所ほど電波状態が悪い場所があるものの、走行中でも途切れることなくネット接続できるという。列車インターネットは成田エクスプレスや予讃線の特急などで実験が行なわれた事例があるが、本サービスとして提供するのは、全国で初めてではないかとしている。「もちろん、このサービスで少しでも利用拡大につながればいいというのが導入理由だが、当社や地域の話題提供として、『ローカル線でなんでこんなサービスを始めるの?』と思われる時期に先駆けて実施したかった」(山形鉄道)。 今回のサービスは、鉄道会社や通信会社だけでなく、地元の団体や企業との協力により実現した点が注目される。従来からFREESPOTの展開に取り組んできた長井市のまちづくり団体「長井村塾」と、同じく自らもFREESPOTを導入しているホテル和泉屋がまちづくりの一環として昨年暮れに計画したのが始まり。企画にあたっては、「個人で列車に乗り込み、電界強度や通信速度など、回線の確保が可能かどうか実験を繰り返してきた」(長井村塾)。その結果、十分に列車インターネットが実現可能であることが判明した。 しかし、技術的に可能である一方で、やはり経営の厳しいローカル線では「コストがかかることは受け入れてもらえない状況」だったという。そこで、長井村塾とホテル和泉屋では、「鉄道会社の経費ゼロ」を目指して機器ベンダーや回線事業者、ISPなどにも協力を要請。メルコやネクストマジック、AUショップ長井、DDIポケット、プロバイダーのE-JANがこれに応じたことで、今年2月末に列車インターネットを山形鉄道に提案するに至ったという。サービス開始にあたっては、地元の企業14社から広告掲載料というかたちで資金の提供も受けている。「行政主導ではなく、自分たちでできることからやってみようとの思い」(ホテル和泉屋の後藤オーナー)で企画し、「なるべく参加されている皆さんのプラスになるような仕組みづくりに特に配慮」(長井村塾)した結果である。 また、フラワー長井線は通学の足としての利用がメインだということで、「地域に密着した事業にするために、高校生にも協力してもらった」(長井村塾)。車内に設置する無線アクセスポイントなどの機器を収容するボックスは、地元の工業高校に依頼して制作してもらったものだという。「学生にも列車の中でIT機器に触れる機会を提供し、学生の技術水準が上がれば」(長井村塾)としている。
◎関連記事 (2003/7/15) [Reported by nagasawa@impress.co.jp] |
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