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17kmの長距離無線LANからロボットハンドまで、CRLが研究施設を一般公開


 独立行政法人通信総合研究所(CRL)は8月1日から2日までの2日間、東京都小金井市にある研究施設を一般に公開するイベントを開催している。CRLが研究・開発に取り組んでいる通信や電波に関する先端技術を紹介するもので、広大な施設内で50以上のテーマの研究が展示されている。この記事では、数ある展示の中からネットワーク関連のものをいくつかとり上げる。


海を挟んで17kmの距離を結ぶ無線LAN

 ネットワーク通信技術を災害などの非常時に役立てるための研究を紹介しているのが、「非常時通信とセキュリティ」という展示。おなじみの「IAAシステム(被災者支援安否情報登録検索システム)」のほか、無線LANや無線ICタグ(RFID)を大きく紹介していた。

 無線LANは、災害時にキャリアに頼らない通信ネットワークを構築できる手段だとして活用が期待されているもので、CRLの研究では長距離化と信頼性向上のための研究開発を主に行なっている。長距離化の実験として、北海道稚内市の宗谷中学校に無線基地局を設置し、ブロードバンドインフラのない地域の同校から、宗谷湾をまたいで17kmの距離を1ホップで接続する2.4HGz帯の無線LANを構築した。

 展示会場では、同校の展望室に設置した日本最北端だというWebカメラの映像が映し出されており、実際に操作できるようになっていた。さすがにスペック通りの11Mbpsまでは出ないようだが、非常時通信だけでなく、過疎地への通信インフラとしても活用できるとしている。


稚内北星学園大学らと共同で実施している地域ネットワークの構成図 宗谷中学校に設置した、日本最北端のWebカメラからの映像

RFIDで災害時の安否確認を

 一方、RFIDは、文部科学省の「大都市大震災軽減化特別プロジェクト」の一環として取り組んでいるもの。例えば、一般の人が書き込めるRFIDを街中に設置し、災害時に住民が避難する際、これに自分のIDカード情報などを記録。その後、救助隊が訪れた際にRFIDからデータを吸い上げることで、安否確認を行なうイメージなどが示されていた。まだ予算が付いたばかりで具体的なシステムは開発されておらず、どのような場面でRFIDを活用できるか検討していくとう。

 会場ではまた、RFID自体がどういうものか説明するために、子供の靴などにRFIDを埋め込み、これを読み取り機にかざすことで「子供が接近しています!」などの音声が流れるデモも行なわれていた。自動車から検知すれば、交通事故対策にもなるとしている。ただし、RFIDの検知距離は今のところ1~3mだとしており、やはりこちらも長距離化が課題になるという。


右上の読み取り機に物をかざすとRFID内の情報を検知して音声が流れるデモ 「公開暗号鍵」の概念を説明するために制作したという特製金庫

ロボットハンドでネットワークじゃんけん

 CRLの「けいはんな情報通信融合研究センター」が開発したロボットハンド「ネットワークハンド“指来たす(ゆびきたす)”」が初めて一般に公開され、子供たちとじゃんけんをした。

 指来たすは、触覚付きのロボットハンドをネットワーク経由でコントロールできるシステム。身長1mあまりのロボットに5本の指を持つ左右2本のロボットハンドを備え付けられており、手袋型のコントローラーから遠隔操作できる。頭部にはカメラが搭載されており、操作側のモニターに映し出された3D映像を見ながら遠近感を把握できる。触覚付きということで、ロボットハンド側が何かをつかめば、手袋側にもその感触が伝わる仕組みとなっている。

 なお、3D映像の送信に50Mbpsの帯域が必要となるが、ロボットハンドの制御信号だけならPHSでも可能だという。何より、コントローラーが手袋型ということで、操作に高度な専門技能が要らない点が最大の特徴だ。例えば、宇宙ステーション内の実験を、地上にいる生徒が自ら行なえるようにするなどの活用が考えられるとしている。

 このプロジェクトは今年で3年目に入っており、あと2年の研究期間を残している。今後、カメラの高解像度化などに取り組み、教育や福祉分野などでの実用化を目指す。まずは、すでにハイビジョンの4倍にあたる800万画素のCMOSが開発されており、これを小型化して搭載していく予定だ。



日韓をネットで結んで無線LANラジコンの国際レース

 すでに本誌でもお伝えしたが、インターネット経由で遠隔地から運転できる無線LANラジコン“IPコントロールカー”のレースが開催され、日韓の会場で抽選で選ばれた子供たちが参加して腕を競った。

 レースは、日韓1名ずつがCRL内のコースを同時走行するもの。日本側は会場内にあるパソコンからコントロールし、韓国側は海を越えてインターネット経由で運転するかたちとなる。ネットワークの不調によって韓国側からコントロール不能になるアクシデントも見られたが、運転技術そのものは互角の勝負。4組が出走した1回目のレースは、日本が3勝1敗で勝利した。



子供だけでなく大人も楽しめる展示内容

 施設一般公開イベントでは、本来は難解な最先端の技術に触れてもらうため、小学生でも楽しめるような工夫が凝らされているのが特徴。無線LANラジコンのほか、クイズ形式のスタンプラリーやLANケーブルを自作する工作教室なども行なわれ、友達連れや親子連れの小学生でにぎわっている。

 とはいえ、紹介されている研究内容自体は専門家向けのもので、むしろ大人だからこそ楽しめる部分も大きい。高速無線システムとして実用化が期待されているUWB(Ultra Wide Band)のパネル展示で熱心に説明員に質問するビジネスマンや、14.85Gbpsの処理速度を実現したカオス暗号チップによるハイビジョンの伝送デモに群がる高校生、毎秒100億パケットの高速処理が可能な光パケットスイッチの巨大なプロトモデルに見入る若いカップルなどの姿も見られた。将来のインターネットに関わってくる基礎技術もあるため、インターネットに関心の高い本誌読者でも楽しめる内容と言えそうだ。同イベントの入場は無料。開場時間は午前10時から午後4時までとなっている。




関連情報
  CRL「2003施設一般公開」
  http://www2.crl.go.jp/kk/e414/2003ippan/index.html
  関連記事:CRLの研究施設公開イベントで、今年も“無線LANラジコン”が登場
  http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0730/crl.htm



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