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【Web Services Conference 2003】
WebサービスのデファクトスタンダードはXML?


モデレータを勤めた慶應義塾大学 W3C Device Independence アクティビティリード/プロジェクト助教授の北川和裕氏
 8月28日、29日の2日間、東京・渋谷でWebサービスのコンファレンス「Web Services Conference 2003」が開催されている。初日の28日、リコー、NTTドコモらのパネラーを迎え、「Webサービスとデジタルホームネットワーク」と題したディスカッションが開催された。

 ディスカッションは、慶應義塾大学 W3C Device Independence アクティビティリード/プロジェクト助教授の北川和裕氏がモデレータを、NTTドコモ iモードビジネス部IMT移動機企画担当 山田和宏氏、リコー ソフトウェア研究開発本部ユビキタスソリューション研究所 金崎克己氏がパネラーを勤めた。

 進行は、リコー金崎氏、ドコモ山田氏がそれぞれ両社のWebサービスへの取り組みについてプレゼンテーションを行なった後、W3Cの北川氏が問題提起をする形となった。


すべての機器がつながって通信する世界には標準化が必要

リコー ソフトウェア研究開発本部ユビキタスソリューション研究所 金崎克己氏
 まず最初にプレゼンテーションを行なったリコーの金崎氏は「事務機器の中でもWebサービスが使えるようになってきた。複合機を軸にしたデジタルドキュメントと紙のドキュメントのやりとりに取り組んでいる」と概要を述べた後、「最近はスキャンの作業自体、複合機のそばでやることが多く、スキャンというより配信に近い。PCでもPCじゃない機器でも閲覧できるドキュメント、つまり、すべてがつながっていくユビキタスドキュメントを目指している」と今後の見通しについて語った。

 そこで必要なのが、異なる機器でプリント、保管、配信、管理などの運用を司るインターフェイスだ。金崎氏はこのシーンこそ、まさにWebサービスの出番だと強調する。「ドキュメントがどこにあっても取り出せる“ドキュメントハイウェイ構想”にあって、機器とPCソフトのシームレスな連携は必須。保管、配信、印刷、管理ごとに仕様を決め、それに沿った製品を作っていけばいろいろな面で有利だ。これはWebベースで実現するのが適当」と補足した。

 また、「家電、携帯電話、PDAなどと今後繋がっていくだろうが、その際には業界の標準化が重要になるのではないかと思う」と語り、企業ごとのバリューチェーン競争ではなく、標準化に沿った形での発展が望ましいとの考え方を示した。

 課題についてはセキュリティについて言及したほか、「ブラウザがあれば使える、というWebのインターフェイスを用意するのはいいが、そこで事足りるケースも多い。ここから複数のアプリケーションがブラウザから行えるような“サービス”に発展させていかなければならないし、そのためには標準化が必要になるだろう」とまとめた。


リコーの目指すユビキタスドキュメント Webサービスには標準化が重要

iモードはネットワークコンピュータ

NTTドコモ iモードビジネス部IMT移動機企画担当 山田和宏氏
 一方、ドコモの山田氏は冒頭、「iモードは“話すケータイ”から“使うケータイ”へ進化し、iアプリを積んだ時点で十数年前のコンピュータ並の機能になったんじゃないかと思う。単なる電話、単なるブラウザがついた電話、単なるブラウザとJavaが乗った電話というところから推し進めていくことが重要だ」とiモードの「ネットワークコンピュータ」として業界をリードしてきた自負をのぞかせた。

 次いで、人口のおよそ3分の1、4000万人弱までユーザーを増やしたドコモのビジネス戦略、「iモード・ストラテジー」について触れ、「ユーザーが増えればマーケットが大きくなり、マーケットが大きくなればコンテンツが増える。そしてまたユーザーが増える」と解説。いわゆる「ポジティブ・フィードバック」がiモードのビジネスモデルの大きな特徴だとした。

 また、「技術・ビジネスモデル・マーケティング」を戦略の3本柱とし、デファクトスタンダードな技術を取り入れていくこと、ユーザー指向のサービス、CMではJavaという用語を出さず、ゲームができるということをアピールするような、「できることをアピールするマーケティング」が重要だと語った。

 このほか、「リアル世界との連携」もiモードの大きな特徴として挙げ、ビデオレンタルの会員証や電子チケット、カラオケのリモコン、携帯電話でジュースが買えるCmodeなど、赤外線やJavaを使ったソリューションを紹介。さらに、「Javaが(仮想世界の)ネットワークと(リアルなハードウェアの)赤外線を繋げる役割を果たす。iアプリも、ダウンロードできるゲームなどのシンプルなものだけではなく、ネットワークコンピュータとして利用できるようなアプリケーションが用意されている」と語り、冒頭の「iモードはネットワークコンピュータ」という見解を最後に繰り返す形でまとめられた。


 両者の発表を受け、モデレータの北川氏はWebサービスの発展について、「(Webサービスを)共通な基盤で動かすことができる仕組みが必要だ。高い相互運用性があるXMLコーディングが一番適当なのではないか」とその見通しを語った。一方で、「XMLは処理コストが高く、いろいろな機器で使うことを考えると、CPUが速ければいいという問題ではない」「ハードウェアを差別化すると共通の基盤で動かない。ここから、サービスの差別化を促す仕組みがないとまずいだろう」「既存のサービスの置き換えから新しいサービスへ変えていかなければダメ。ただの置き換えでは新しいマーケットを開拓できない」などと語り、標準化されたWebサービス実現に当たっての問題を提起した。


iモードストラテジー iモードストラテジーを支える技術・ビジネスモデル・マーケティングの3本柱

Webサービスはすべての人がサービスを改良できる

 その後、北川氏は、「Webサービスはどんなブレイクスルーを起こすか」と質問を投げかけると、リコー金崎氏は「開発がラクだから使っているというのが現状で、ここから顧客にとってどういいか、ということを考えなければならない。せっかくいろいろなところと繋がり、オープンな基盤で動くWebサービスでは、社内とかそういうレベルでなく、いろいろなところからアイデアが出て、どんどん新しいアプリケーションが出てくるだろう。メーカー主導でなく、ユーザーの欲求をユーザーがかなえるような形になっていく」と予測した。

 ドコモ山田氏も同様に、「顧客側がソリューションを作れるという発想がいい。が、客まかせにして、基盤を提供する我々が顧客に完全に満足して頂いてるとは考えられない。ケータイがどのようなWebサービスに対応して、(Webサービスが一般的になる)時代がいつ来るか、そして来た暁に、どの機能を載せればいいのか、という点が我々にはまだ見えてない。これが載ってればいいんだよ、というのがあれば、iモードの次なるブレイクスルーになるのではないのかと思うが、それがなにか、確信を持てるまでにまだ至っていない」と語った。

 モデレータ、スピーカー双方が「まだはっきりとしたアプリケーションが見えていない」と語るWebサービスだが、その特性についてリコーの金崎氏は「Webサービスは異なるプラットフォームを繋げるものですから、まったく関係ないものを繋げて新たな価値を生みだすのがWebサービスの本質ではないだろうか」と語る。


標準化のキーテクノロジーはXML

 ここで、モデレータの北川氏は視点を変え、機器間の通信プロトコルにはSOAP(通信内容の記述にXMLを用い、言語やプラットフォームに依存しないプロトコル)が適してるのではないかと提言。

 これについて、ドコモの山田氏は「全く関係ないものを繋げる」難しさを「デバイスとのやりとりをするシステムを構築するのは難しいこと。赤外線同士では繋がるけれど、機器の制御側は独自のプロトコル、ケータイ側もHTTPしか通しません、ということで通信ができないケースが多い」と語った後、「Webサービスからiアプリまでの経路は、標準の仕様で通信して、そこから変換するのはドコモがやりましょう、というような切り分けが必要だ。じゃ、ここをXMLで繋げましょう、というようにできると大きく変わるのではないかと思う」と述べ、個人的意見としながらも、SOAPを含むXMLがキーテクノロジーになるのではないかとの考えを示した。

 リコー金崎氏は、「Javaが載っているから買うんではなくて、Javaが載っているとこういうことができるんだなぁというイメージがあるから買う。同じようにSOAPでも同じことが起こらないとうまくいかないのではないか。ただ、複数ベンダーにまたがるサービスを提供するにはいい方法のひとつ」と答えた。

 北川氏はさらに通信プロトコルについての話題を発展させ、「コンソーシアムを作るなり、なんなりの標準化活動をしなければならないだろう」との考えを示し、これを受けたドコモの山田氏は「標準がないとなにもできない、ということではない。じゃあ、バラバラでやるのがいいかというとそれも違う。そのあたりのバランスが必要。そういう意味で、やわらかな合意と世の中の流れを汲み取ったスタンダードができればいい」と語った。

 最後に、モデレータの北川氏は「はっきりいうと、どんなWebサービスができるかというのは我々にもわからない。ただ、新しい発見や新しいビジネスがそこにあるのは確か。作る側だけではなく、ユーザー側の欲求も重要な役割を果たす」とまとめ、ディスカッションを締めくくった。


関連情報

URL
  Web Services Conference 2003
  http://www.idg.co.jp/expo/wsc/index.html


( 伊藤大地 )
2003/08/28 21:25

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