宇宙開発事業団(NASDA)は5日、東京都江東区にある日本未来科学館において「i-Spaceワークショップ2003」を開催した。i-Spaceとは、衛星によって情報インフラを構成しようという“宇宙インフラ”構想のこと。2005年度に予定されている超高速インターネット実験衛星「WINDS(Wideband InterNetworking engineering test and Demonstration Satellite)」の打ち上げを前に、既存の通信衛星を利用したパイロット実験が進められている。今回のワークショップでは、このプロジェクトに参加している企業などから2002年度の取り組み成果が発表されたほか、WINDSの可能性と課題について討論するパネルディスカッションなどが開かれた。
NASDAの衛星ミッション推進センターの説明によれば、i-SpaceではWINDSのほか、2004年度打ち上げ予定の「技術試験衛星VIII型(ETS-VIII)」の利用実験が計画されており、主に移動通信分野での実験を準備しているという。これは、アタッシュケース型のポータブル端末により、394kbpsまたは512kbpsの衛星通信を可能にするものだ。さらには、50bpsと超ナローバンドではあるがカード型の衛星端末や、携帯電話サイズの5kbps端末も開発中だという。これに対してメガ~ギガクラスとなるWINDSでは、教育、医療、災害などの特定分野やインターネットの固定通信を想定。こちらもアンテナのサイズなどにより1.5Mbps(直径45cm)、155Mbps(1.2m)、155~622Mbps(2.4m)、1.2Gbps(5m)という4段階の地球局設備が開発される。これにより、i-Spaceの利用実験では50bpsから1.2Gbpsまで宇宙インフラで提供するネットワークが用意されるとしている。
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実験端末/地球局のラインナップと通信速度
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ETS-VIII実験用ポータブル端末
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パネルディスカッションでは、8月に設立されたばかりの株式会社超高速衛星インターネットサービス企画の北原正悟代表取締役社長がパネリストとして登場し、「超高速衛星インターネットサービス(BroadBand Internet Service via Satellite:BBISS)」の構想を語った。WINDSの技術を活用した衛星を2007年度にも民間で打ち上げ、上り1.5Mbps/下り155Mbpsのサービスを、従来の衛星インターネットサービスの10分の1以下というADSL並みの料金での提供を目指すという。北原氏によれば、全国4,700万世帯のうち1割強にあたる530万世帯が現在、非ブロードバンド地域だという。今後ブロードバンドが拡大しても、2007年度でなお222万世帯が非ブロードバンド地域で残ると予測しており、これらデジタルデバイドの解消や大容量コンテンツの集配信などの要求にBBISSで応えていく考えだ。北原氏は、「WINDSの利用実験を通じてビジネスが可能であることを実証し、商用衛星につなげていきたい」と語った。
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株式会社超高速衛星インターネットサービス企画の北原正悟代表取締役社長
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北原氏の説明で用いられた、非ブロードバンド地域マップ
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関連情報
■URL
「i-Spaceワークショップ2003」の開催について
http://www.nasda.go.jp/press/2003/08/ispace_20030819_j.html
i-Space Homepage
http://oss1.tksc.nasda.go.jp/smpc/i-Space/index01_j.htm
i-Space利用実験計画
http://www.nasda.go.jp/projects/sat/ispace/index_j.html
関連記事:NASDA、超高速インターネット衛星の実験テーマを公募
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2002/0521/nasda.htm
関連記事:人工衛星を使ったFTTH並みの高速インターネット接続
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2003/08/20/195.html
( 永沢 茂 )
2003/09/05 18:57
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