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Tim Berners-Lee氏、「Semantic Web」の将来展望を語る


 HTMLやXMLに代表されるWeb関連技術の標準化団体であるWorld Wide Web Consortium(W3C)が主催する技術カンファレンス「W3C Day Japan 2003」が14日、慶應義塾大学三田キャンパスにおいて開催された。Webの生みの親であり、現在はW3Cの技術統括責任者を務めるTim Berners-Lee氏が登場し、次世代のWeb技術として期待されている「Semantic Web」について将来展望を語った。

 Tim氏は当初、前日に来日予定だったものが、飛行機のトラブルで来日が当日にずれ込んだ。そのため、会場への到着が講演予定時刻に間に合わず、急遽講演の順番が最後に回されるなどのハプニングがあったものの、それらのトラブルによる疲れも見せず熱弁を振るった。


ヒープ構造こそがSemantic Web

 Tim氏はまず、「Web上のドキュメントスペースでは、どんな言語だろうがデータベースだろうが、実際には必ずURIを伴っている」と述べた上で、「コンピュータ上にあるものは全てリレーショナルデータベースとして考えることができ、その際に重要な“Subject”“Property”“Value”の3要素をXMLで記述したものが『Resource Description Framework(RDF)』だ」と解説した。その上で、「RDFがSQLの代わりに人気を博しているのはツリー構造を表記することができるからだが、ツリー構造では全てのデータの出発点と終着点を決めなくてはならない。そのため、利用価値は高いが全てのデータを1つのツリーにまとめるのは困難だ」と指摘し、「テーブル構造とツリー構造が混在したヒープ構造こそがSemantic Webだ」と述べた。

 Tim氏はその後、「人生はみなWebのようにつながっているものだ」と述べた上で「今は異なるアプリケーション間をどうやって接続してデータを交換するかに多くの労力が注がれている」と指摘。「RDFを(データ交換の)ハブにすれば、アプリケーションは容易にデータを相互で変換してやり取りすることができる」「プロプライエタリなフォーマットを使っているシステムではそうはいかない」とRDFの利点を訴えた。さらにTim氏は、「Semantic Webはバスのようなものであり、(外部への接続が)許可されたものはフィルタを通してどこまでもつながっていくことができる」と、RDFの利用にさらなる発展が期待できることも強調した。

 Semantic Webの現状については、「(RDFの上位層となる)オントロジの部分についてもコンソーシアムでの議論が進み、かなり安定性が高くなってきた」と説明し、「次の段階はルールを記述する言語(に関する議論)ということになる」「Logic FrameworkやProof Exchangeといった段階も研究課題として浮かび上がってきている」との認識を示した。


RDFをハブとして相互に接続されるシステムの概念図 Semantic Webの主な要素技術の関係を示した図

Semantic Webは徐々に広がっていく

1991年から1994年における、同氏が管理していたWebサーバーのアクセス数の推移
 最後にTim氏は、「数年後には、企業のCEO達が『何だかわからないが、とにかくSemantic Webが必要だ』と言い出す時代が来るのではないか」と、Semantic Webの将来に比較的楽観的な見方を示したが、一方で「(標準化にあたっては)たくさんのコミュニティの影響を受けることになるし、新しい設定に対して躊躇する人が多いのも問題だ」との心配も漏らした。雪だるまを引き合いに出し、「今のSemantic Webは、雪だるまがちょうど坂の途中に来ている段階(=『どうもうまく行きそうだ』との認識が広がりだす段階)であり、多くの業界が注目している」「多くの人に見られているわけだから、間違った方向には行きたくない」と述べ、このままSemantic Webを正しい発展の方向に導いていかなくてはいけないとの姿勢を強調していた。

 会場との質疑応答では、「Semantic Webを『ある日突然立ち上がるのではないか』と言う人がいるが、そんなことはないと思う」と述べ、Tim氏が管理していたあるWebサーバーにおける1991年から1994年のアクセスに関するデータを引き合いに出し、「Webの普及期も、個人個人のレベルではある日突然普及したように見えるかもしれないが、対数グラフにするとWebサーバーの負荷は年10倍ぐらいのペースでほぼ直線的に上昇している」「Semantic Webもこれと同じように、ある日突然普及しだすのではなく、徐々に広がっていくかたちになるのではないか」との見解を示した。


関連情報

URL
  W3C Day Japan 2003
  http://www.w3.org/2003/11/14-W3CDay-Japan/
  関連記事:Tim Berners-Lee氏らW3C代表メンバーがSFCに集合
  http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/981120/w3c.htm
  関連記事:Web技術セミナー「W3C Day」が慶應義塾大学で開催
  http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2001/1130/w3c.htm


( 松林庵洋風 )
2003/11/17 16:51

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