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南山大学・町村教授が講演「2003年のネットワーク判例回顧」


 日本弁護士連合会 コンピュータ委員会は3日、シンポジウム「ネットワーク時代における個人情報保護の最前線」を東京都千代田区にある弁護士会館で開催した。

 シンポジウムでは、南山大学法学部教授の町村泰貴教授が「2003年のネットワーク判例回顧」と題した講演を行なった。講演では、インターネットを中心とした情報ネットワークを介した情報交換に関連して生じた民事・刑事の訴訟事件が取り上げられた。


どこまでが“特定電気通信役務提供者”にあたるのか

南山大学法学部教授の町村泰貴氏
 町村教授によれば、今年のネットワーク判例の中心は2002年に施行されたプロバイダー責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)の適用を巡る判決が相次いだと語った。講演では、それらの判決を類型ごとに分けて説明。そのうち、プロバイダーの発信者情報開示請求に関した判例では、請求が認められたケースと認めないケースがあったという。

 開示が認められたケースとしては、ヤフーの掲示板上で起こったトラブルについて、ヤフーが被告になって発信者情報を開示せよとの訴訟が行なわれ、発信者の意向を確かめた上で、住所や教授名を開示した。それにも関わらず、IPアドレスの開示を求めて訴訟が継続され、2003年3月31日に請求を認める判決が行なわれた。

 この判例について町村教授、「いささか疑問が残る」とコメント。紛争解決を可能とするための手段である発信者情報開示請求権の要件を満たしているかどうかという点に疑問が残るという。逆に、「紛争に絡む何らかの要件を発信者情報開示請求権を使って探索した疑いが非常に強い」とも付け加えた。

 また、労働者派遣会社の羽田タートルサービスに関連した2つの判例も紹介された。同社を巡った1件目の裁判では、羽田タートルサービスがWebサイト上で同社の労働条件などを非難した人物について、Webサイトを提供したレンタルサーバー会社と、発信者が利用したインターネットアクセスプロバイダー(経由プロバイダー)に対して、発信者情報の請求を求めて提訴した。判決では、レンタルサーバー会社に情報開示が認められたが、経由プロバイダーについては特定電気通信役務提供者に当たらないとして請求は棄却された。

 これに関連して、羽田タートルサービスの代理人である弁護士が巨大掲示板「2ちゃんねる」で“DQN弁護士”などと誹謗中傷され、弁護士が発信者情報開示を請求した裁判では、経由プロバイダー側に対する情報開示も認容された。本判決では、特定電気通信とは、発信者がWebサイトを使って不特定多数に情報を発信したものを指し、サーバープロバイダーだけではなく、経由プロバイダーも特定電気通信役務提供者にあたるとされた。

 しかしながら町村教授は、発信者が利用する全ての業者を特定電気通信役務提供者であるとするならば、電話回線を提供する会社も含まれる可能性があるとした。このため、どこまでを適用範囲に入れるかについては「慎重に考えなくてはならない」と語った。

 また、エステサロン「TBC」の顧客データがファイル交換ソフト「WinMX」上で交換が行なわれた事件でも、交換を行なったユーザーが使用するインターネットアクセスプロバイダーに対して発信者情報の開示が認めている。


プロバイダーの発信者情報開示請求の肯定例など 情報発信者自身の民事責任肯定例など

情報発信者自身の民事責任

 このほか町村教授は、情報発信者自身の民事責任の肯定例や否定例を紹介。肯定例としては、2ちゃんねるの管理人が発行するメールマガジンで化粧品・健康食品会社「DHC」に対する誹謗があったとして、DHCが損害賠償を求めた訴訟では、約700万円の損害賠償支払いが命じられた例を挙げた。

 町村教授はまとめとして、「プロバイダー責任制限法の適用が本格化した年」とコメントし、プロバイダーに対する民事責任も定着しつつあるという。特に2ちゃんねるに関連した事件では「掲示板サービスを提供するサービスプロバイダー自身に名誉毀損を求めるケースが増えてきている」と語り、今後はプロバイダーに対する刑事責任の追求が焦点になっていくのではないかとした。

 また、発信者に対する民事および刑事の損害賠償請求については、名誉毀損のボーダーラインをどこで引くかをプロバイダー側が判断しなくてはならないのは難しい問題になっていくと述べ、講演を締めくくった。


今後の課題

関連情報

URL
  日本弁護士連合会
  http://www.nichibenren.or.jp/

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「プロバイダ責任制限法制緊急シンポジウム」開催(2003/10/23)


( 村松健至 )
2003/12/03 21:10

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