24日、インテルが報道関係者向けに開催したイベント「インテル デジタルホーム プレスセミナー」において、来日中の米Intel CEO クレイグ・バレット氏がデジタル家電に関しての講演を行なった。
● PCをサーバーとし、すべての家電や携帯機器を接続可能に
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米Intel CEO クレイグ・バレット氏
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バレット氏の講演のメインテーマは「デジタルホーム」。PCをコンテンツサーバーとし、すべての家電やモバイルデバイスが相互接続可能になるというビジョンだ。講演の合間には、インテル日本法人代表取締役社長の吉田和正氏や、ソニー IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー デピュティプレジデントの木村敬治氏、スクウェア・エニックス代表取締役社長の和田洋一氏、米マイクロソフト副社長の古川享氏らそうそうたる顔ぶれが壇上に立った。
冒頭、バレット氏はコンピュータの歴史を振り返りながら、「単体のパソコンが個人によって使われる、という状況がずっと続いていた。1980年代はインテル、IBM、マイクロソフトの3社で成り立っていた。そこからマルチメディアの時代が到来し、CD-ROMの普及でさまざまなメディアが生まれた。テレビよりもパソコンのほうが売れるようになったのはこの時代だ。そしてインターネットの接続という時代が来た。この時代の特徴は、まったく新しい企業が生まれたことだ。GoogleやEbay、Yahooなど、パソコンがインターネットに接続された直後に生まれ、今までとは全く異なるビジネスが展開された。では、次は何か。デジタルホームだ」と語った。
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相互接続性とブロードバンド、そしてコンテンツの3つがデジタルホームの基盤になる
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どのコンテンツを、どの機器からでも接続可能になるのがデジタルホーム
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● 業界標準のプラットフォーム作りを目指すインテル
デジタルホームとは、PCを軸に、テレビ、オーディオ、デジカメ、携帯電話などさまざまなデバイスが接続され、コンテンツがどこに保存されていても、それを意識させることなく、どの端末からでも再生できる環境のことだ。これまでの家電業界は統一規格に沿った製品作りをしていたわけではなく、各社が独自のバリューチェーンを構築し、その価値を競っていた状況だった。
一方で、パソコンの世界は、早い段階でIBM/PC、DOS、Windowsとつらなるプラットフォームが確立していたため、メーカーやコンテンツメーカーは、同じ基盤の上で機能を追加したり、コストダウンによって競争を行なっていた。言うまでもなく後者のビジネスモデルで巨大になったのがインテルだが、そのもくろみは、PCの方式を家電にも取り入れることにある。すべての家電が相互接続可能になり、そしてその機器に、「インテル、入ってる」となることを目指しているわけだ。
バレット氏の論旨は明快で、終始、パソコンと家電デバイスをワイヤレス環境で接続させること、そしてその互換性を維持すること、そのための枠組み作りを進めること、この3点を強調していた。
バレット氏によれば、「世界有数の家電メーカーがひしめき、ブロードバンドのビット単価が世界でもトップレベルに安い日本は、もっとも早くデジタルホーム化する可能性のある国だ」という。一方で、日本におけるコンテンツへの関心はまだまだで、動画配信やオンラインゲームの利用率が欧米に比べて低いことを指摘し、「デジタルホーム化を加速するためには、エンターテイメント、学習、コミュニケーションなどの家庭での利用に即したコンテンツを揃える必要があるだろう」と語った。
業界標準のプラットフォームはインテルをはじめ、マイクロソフト、松下電器産業、ソニー、富士通、シャープら100社以上が参加するワーキンググループ「DHWG(Digital Home Working Group)」で現在協議中だ。バレット氏によれば、ガイドラインは第2四半期にも発表される予定で、今年後半には対応製品が発表されるとしている。
また、デジタルコンテンツの運用において大きな問題になる著作権保護に関しても、「著作権は当然守られるような仕組みにしなければならないが、一方で利用者の権利もまた守られなければならない。法的、技術的、さまざまな側面で現在議論されているが、自宅の内部でネットワーク化された機器間でのコンテンツ移動は自由にすべき」と意見を述べた。
その後もバレット氏は再三にわたって「PCや家電がお互いに相互接続できなければならない」「PCの可能性と家電の可能性を融合し、しかもシームレスに、簡単な操作で実現したい」などとコメント。最後には、業界全体の協力を訴えて講演を締めくくった。
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100kbps単価は日本が圧倒的に安い
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ワーキンググループでは標準規格の策定に取り組んでいる
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● インテルが開発したデジタルホーム向けPCのプロトタイプ
講演中にはインテルが開発したPCのプロトタイプモデルを公表。バイオWのような液晶パネル一体型のデスクトップ型パソコンで、ワイヤレスキーボードにはBluetoothを採用。さらにキーボードの左端に、液晶パネルをテレビのように使うためのリモコン、右端にはIP電話端末が取り付けられている。また、ブロードバンドコンテンツのデモとして、エイベックスのプロモーションビデオ配信サービス「Prismix.tv」やソニーピクチャーエンターテイメントの「スパイダーマン2」、Disney BBのオンラインゲーム「ToonTown」のデモが行なわれた。
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米インテルが開発したプロトタイプマシン
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テレビのようにパソコンを使うためのリモコンとIP電話端末がキーボードに設置されている
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● ソニー木村氏「互換性を保ち、コンテンツ共有を」
スクウェア・エニックスの和田洋一氏は、「オンラインゲームにおいて、思ったよりPCユーザーの伸びがいい。もはやユーザーは家庭用ゲーム機か、PCかと端末を選ばなくなってきている。ワイヤレスの技術も急速に伸びていて、携帯電話も重要なプラットフォーム。ゲームの場合、音楽や映画とは違い、あくまでもプログラムを走らせて楽しむものなので、メーカーとの協力や情報交換が重要だ」とコメントした。
また、ソニーの木村氏は、「バイオは当初からAVとPCの融合を考えてきた。これまで、コーデックや著作権保護技術、ホームネットワークを実現するソフトウェアの開発を進めてきたが、業界として重要なのは、いろいろなデバイスが出てくるなかで、いかに互換性を保ち、コンテンツを共有できるかということだ」と語った。ソニーのデモでは、バイオに保存された動画ファイルを、ソニー製のルームリンクを接続したパナソニック(松下電器産業)のテレビ、VIERAで再生するという非常にレアなシーンも見られた。
ゲストの中で最後に登場したのがマイクロソフトの古川氏。同氏はデジタルホームにおけるWindows XP Media PC Editionの重要性をアピールしながら、「コンテンツ、課金技術、著作権保護の3本立てでプラットフォームとして提供している。メーカーや行政などとコンセンサスを取り、社会的に認められながら築いていく必要がある」と語っている。
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ソニー IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー デピュティプレジデントの木村敬治氏
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スクウェア・エニックス代表取締役社長の和田洋一氏
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ソニーのデモでパナソニックのPDPテレビを使うなど、「相互接続性」が強調されたイベントだった
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米マイクロソフト副社長の古川享氏
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関連情報
■URL
デジタルホーム開発者セミナー(インテル)
http://www.intel.co.jp/jp/developer/event/dh/index.htm?iid=jpHPAGE+low_news_b&
インテルが掲げるデジタルホームの実現とは(BB Watch)
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/event/2881.html
( 伊藤大地 )
2004/02/24 17:31
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