独立行政法人通信総合研究所(CRL)は22日、1月に情報セキュリティセンターを発足したのに伴い、情報セキュリティ研究の現状と課題についてのパネル討論などを行なうシンポジウム「情報セキュリティ研究戦略シンポジウム」を開催した。
シンポジウムでは、CRL情報通信部門長である松島裕一氏が情報セキュリティセンターの役割や研究の方向性などを紹介した。
● ITサービス分野などと比較して、ITセキュリティは明らかに遅れている
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CRL情報通信部門長松島裕一氏
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松島氏は、まずブロードバンド利用者が1,400万件を突破し、携帯電話が8,000万加入を達成した現状を説明。「ブロードバンドユーザーが急激に拡大するのに比例して、危険性も増大している」と指摘した。また、企業の約76%、個人の約30%がウイルス等のセキュリティ被害に遭遇していることから、「IT機器やIT関連サービスの発展具合と比較して、ITセキュリティ分野は明らかに遅れていると言わざるを得ない」と語った。
● 新しい暗号方式や高機能暗号プロトコル開発を目指す
このような状況を踏まえ、CRLでは情報セキュリティセンターを発足し、災害時の非常時・重要通信技術やセキュリティログの広域監視に基づくサイバーテロ対策技術、新しい暗号方式や高機能暗号プロトコルの開発を目指すという。
具体的には研究の柱として3点を挙げた。1点目は災害時や非常時における情報通信確保のための技術や危機管理手法に関する研究。2点目はサイバー攻撃への対策技術の高度化やセキュアな利用者レベルでのネットワーク応用基盤構築の研究。3点目が暗号・認証アルゴリズムの設計手法、その強度に対する評価手法に関する研究や暗号技術評価プロジェクト(CRYPTREC)を通じた電子政府における暗号の選定となる。
● セキュリティ関連研究は4グループに分類して研究される
これらの研究は、研究テーマの総合調整を行なう「情報セキュリティ推進室」、災害・非常時の情報基盤技術に関する研究を行なう「セキュアネットワークG」、不正侵入やDoS、ウイルスなどに耐性のあるネットワーク基盤を研究する「セキュリティ高度化G」、公開鍵・共通鍵暗号技術・暗号プロトコルを研究する「セキュリティ基盤G」の4グループに分類して行なわれる予定だ。
また4月1日にはCRLと通信・放送機構(TAO)が統合され、情報通信研究機構(NICT)となることから、より大規模な研究開発機関を構築するほか、大学等の研究機関との連携も強化するとしている。最後に松島氏は「セキュリティ対策の現場であるTelecom-ISAC JapanやCRYPTRECに研究成果を提供し、有効活用に努める」と語り説明を終えた。
関連情報
■URL
情報セキュリティ研究戦略シンポジウム
http://www2.crl.go.jp/pub/whatsnew/press/040303/040303.html
( 大津 心 )
2004/03/22 19:41
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