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オックスフォード大学William Dutton氏がWIP国際シンポジウムで講演


英オックスフォード大学インターネット研究所所長のWilliam Dutton氏
 7月13日、東京大学山上会館において「WIP国際シンポジウム~ユビキタス・ネットワーク社会で変わるライフスタイル~」と題したシンポジウムが開催された。このシンポジウムは、世界15カ国(間もなく24カ国に増加予定)でインターネットの利用実態と社会的影響に関する調査を進めているWorld Internet Project(WIP)が主催するもので、3日間に渡るWIPの国際会議の初日を一般公開のシンポジウムとして開催しているものだ。

 午前中の基調講演では、英オックスフォード大学インターネット研究所の所長を務めるWilliam Dutton氏が登場し、「ユビキタスアクセス時代の到来に伴い社会がどのように変化しているか」といった問題についての分析結果を語った。


デジタルデバイドは依然残り、さらに「ブロードバンド・デバイド」も

 Dutton氏はまず、いわゆるデジタルデバイド問題について「デジタルデバイドは昔からつきもの」と語った上で、「ユビキタス時代になるとデジタルデバイドはなくなるという意見もあり、実際アメリカではデジタルデバイドの懸念は払拭されつつあるが、依然としてデジタルデバイドの度合いの高い国は存在する」と述べ、国際間におけるデジタルデバイドが相当な問題になってきているとの認識を示した。

 また、所得額で下位1/4に属する層と上位1/4に属する層のインターネット利用率にははっきりとした差がついていることをデータで示した。その上で「PC所有率という点ではここまでの差はつかないため、明らかに家庭でインターネット接続ができるかどうかという点で差が現われている」と語った。

 さらに、男性と女性の間のインターネットの利用度に関しては「ユーザー数という単位ではさほどの差はないが、利用時間を単位とすると男性と女性の間の差が広がる」として、依然女性のインターネット利用度が低いとの考えを示した。

 そのほか、同氏らが英国内で行なったアンケート結果を元に「デジタルデバイドが解消に向かいつつある一方で、今度は『ブロードバンド・デバイド』とでも言うべき問題が出てきている」として、技術の進展に伴い今後もさまざまな形のデバイド問題が起こる可能性を示唆した。

 また同氏は前述のアンケート調査の結果から、学生や労働者に比べ55歳以上の退職者におけるインターネットの利用率が明らかに低いとのデータを提示。さらにWIPのデータから、これが英国内に限らず世界的な傾向であることを示している。「経済力の格差を織り込んだとしてもこの差は大きすぎる」と語り、高齢者を中心に経済力がありながらも、あえてインターネットを利用しない層が存在していると指摘。同氏はこれを「デジタル・チョイス」と呼び、どうしてこうなるのかといったことを今後考える必要があると問題提起した。


インターネットの利用頻度 オンライン友人を作った人数。日本は少ない傾向が

インターネットへの信頼感は経験年数によって上がる

 続いてDutton氏が取り上げたのが、インターネット上の情報への信頼度やリスクへの評価の問題。まず同氏は前述のアンケートから、新聞・テレビ・インターネットで流れるニュースに対して、それぞれの媒体がどの程度信頼できるかという評価の項目を取り出した。「インターネットを使ったことのない人は、ネットの信頼性が低く、一方現在使っている人はもちろん、過去に使ったことがある人もネットの信頼性が高い」とのデータを提示。またプライバシー侵害など、リスク要因への評価に対しては「ネットを使ったことのない人は非常に問題を深刻に捉えがち」と分析した。

 このことから同氏は「インターネットへの考え方は経験によって変わる」と述べ、それを裏付けるデータとしてインターネットの経験年数とオンラインショッピングの利用率に相関関係があるというデータを示し、経験年数が長くなるほど基本的に信頼感は上がるとの考え方を示した。一方で、「最近は迷惑メールやウイルスなどの問題があり、インターネット初心者はもちろんのこと、ヘビーユーザーに対してもネットへの信頼感を損ねる結果となっている」とも述べ、今後はこれらの問題により真剣に対応していく必要があると語った。


インターネットはむしろ社交性を促進させるが、日本は……

 同氏はさらに、インターネットについて時々聞かれる「ネットのやり過ぎで引きこもりになった」「コンピュータを相手にしていると、社交性が無くなる」といった批判が本当なのかという点について検証を行なった。

 同氏はWIPのデータをもとに「インターネットユーザーは非ユーザーに比べて、友人との社交関係に費やす時間が長い」「ユーザーへのアンケートでも、人付き合いにかける時間は変わらないか、むしろ増えていると答えたユーザーが大半だ」と述べ、「中には孤独を好む人もいるだろうが、それはむしろ例外的なケースだ」として前述の批判は根拠のないものだとした。

 また、インターネットユーザーがネット上でどのくらい友人が増えたかという調査についても、実際に会ったことがある・ないという点を問わず、全般的に友人が増える傾向があるほか、ヘビーユーザーになるほど、その度合いが強まるとの分析を披露。ただしこの点については、「日本は他の国に比べ、あまりオンラインで友人を作らない傾向がある」とも述べ、なぜこのような傾向が出るのかについて今後さらに調査を進める必要があると語った。


インターネットによってメディアの使い方はどう変わるか

 Dutton氏はインターネットの存在によって、メディアの使い方が変わるかどうかという点についても検証を行なった。

 同氏は「よくインターネットを使うと本を読まなくなるといわれるが、実際には米国を除いては、インターネットユーザーは非ユーザーに比べ本を読む時間が長い」と述べ、むしろインターネットは読書を補完するものとしての役割が強いとの認識を示した。一方で、テレビの視聴時間に関しては、はっきりインターネットユーザーの方が非ユーザーに比べて少なくなっており、同氏もこの点を「1960年代の研究者の夢が現実になってきている」と表現した。

 また、公共サービスへのインターネット経由のアクセスについては、英国内でのアンケート調査では約40%のユーザーが「学校や医療機関の検索のためにインターネットを利用したことがある」と答えたという。特徴的なのは、高齢者になるほどこういった公共サービスの利用率が上がる傾向があること。これは、先述の高齢者ほどインターネットの利用率が下がるという傾向とは全く逆であり、同氏は「高齢者は最初の敷居こそ高いものの、一度使い出すと非常に熱心に使う傾向があるのかもしれない」と語り、今後さらに調査を行なう必要性を認めた。

 最後に同氏は「ユビキタスコンピューティングは決してユートピアではない」と述べた上で、冒頭でも述べた新技術によって新たなDivide問題が発生することを改めて訴えた。そのほか、「インターネットが市民社会を後押しするのか、それとも市民社会の足かせになるかという問題あるが、重要なのはまず(インターネットの)経験を積むこと」「ユビキタス社会では多少プライバシーがなくなったとしてもネットワークにアクセスしたいというニーズが出てくることが考えられるが、それが監視社会につながらないようにバランスを図る必要がある」と語り、インターネットが市民の味方となるか敵となるかは今後のユーザーの動き次第であることを訴えた。


関連情報

URL
  WIP国際シンポジウム
  http://www.iii.u-tokyo.ac.jp/gnrl_info/news/list04/12.htm

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( 松林庵洋風 )
2004/07/13 17:55

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