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日本テレコムの倉重英樹取締役代表執行役社長
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ITU TELECOM ASIA 2004のフォーラム「Building on broadband」では、ソフトバンクグループの日本テレコムで取締役代表執行役社長を務める倉重英樹氏が「For Your Networking Universe」と題し、日本におけるブロードバンドの現状と未来について講演した。
アジアのブロードバンド加入者数は近年急速な成長を遂げ、世界全体におけるアジアのブロードバンド加入者シェアは44%に達した。また、家庭におけるブロードバンドの普及率でも、韓国と香港が世界を牽引している。
日本では高速通信が可能な3G携帯電話を含めるとブロードバンドの加入者数がすでに2,000万を超えており、アジアにおけるブロードバンド普及率の高さに大きく貢献しているという。倉重氏はこのようにブロードバンドが日本で急速に普及した要因の1つとして、日本政府が主導したブロードバンドの普及促進政策を挙げた。
日本では「世界でもっとも安価かつ高速なインターネット環境を実現する」ことを目的とした「e-Japan戦略」が進められたほか、2004年8月にはユビキタスネット社会を2010年までに構築する「u-Japan」といった施策が発表されている。倉重氏はこれらのブロードバンド普及促進政策に加え、「NTTが保有するメタル回線や光ファイバ回線を他のキャリアへ開放するといった自由競争の促進も影響が大きい」と語った。
さらに3G携帯電話への周波数割り当てでは、諸外国でIT産業が衰退した理由とされているオークション制度を採用しなかった点や、ワイヤレスブロードバンドサービスへの周波数割り当てといった施策を評価。これら主要な政策を維持していくことがブロードバンド通信市場のさらなる成長に必要だと語った。
倉重氏は、ブロードバンドの急速な普及を、輸送手段の発展の歴史と比較。「時速20kmの自転車と比較して3倍の速度の自動車、10倍の列車、45倍の飛行機が登場することで生活は劇的に変化した」とした上で、「通信速度が1,000倍近く高速化されるであろうIT分野では、より大きな変化が起きる」との考えを示した。
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e-Japan/u-Japan戦略やNTT網の開放といった日本政府の施策を評価
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通信速度は輸送手段の進化よりも大きな変化を生み出す
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さらに倉重氏は、日本の家庭における生活必需品とブロードバンドの普及率データを紹介。「ブロードバンドはこの数年で普及率30%と大幅に伸びており、すでに一般化かつなくてはならないものとなっている」とした上で、「20世紀は冷蔵庫やテレビなど、ライフスタイルを大きく変化させる製品やサービスが登場した。ブロードバンドも同様にライフスタイルを変化させるサービスであり、20世紀はテレビの時代、インターネットの時代を経てブロードバンドの時代へ突入する」と語った。
人々のライフスタイルが変化することはワークスタイルの変化につながり、それは結果として企業のビジネスモデルの変化へと結びつく。日本テレコムはそうした21世紀における新たなネットワーク社会に適したライフスタイルやビジネスモデルの提案を進めていくとともに、最先端の技術を駆使してこれらを現実化することに注力していくという。
なお、同日に予定されていたソフトバンクグループCEOの孫正義氏による講演は、孫氏が出席をキャンセルしたために急遽中止となった。
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21世紀はブロードバンドがライフスタイル商品となる
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ライフスタイルの変化はビジネスモデルの変化に繋がる
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■URL
ITU TELECOM ASIA 2004(英文)
http://www.itu.int/ASIA2004/
日本テレコム
http://www.japan-telecom.co.jp/
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( 甲斐祐樹 )
2004/09/09 11:26
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