デジタル時代の著作権のあり方について、著作権や著作隣接権を持つ権利者側の団体が一堂に会して啓蒙・普及を行なうことを目的とした「著作権フォーラム」(東京都行政書士会主催)が、17日に東京・有楽町のよみうりホールにて開催された。ここでは、自民党で知的財産政策小委員会の委員長を務め、昨今の「知的財産立国」政策にも大きな影響を与えたと言われている衆議院議員の甘利明氏と、内閣官房で知的財産戦略推進事務局の参事官を務める大木宰子氏の講演をレポートする。
● 著作権は今や文化戦略としてよりも経済戦略として重要~甘利氏
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衆議院議員の甘利明氏
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最初に登場した甘利氏は、冒頭で「今の日本の閉塞状況を打破するためには、知的財産を国家戦略として活用していかねばならない」と述べた上で、そのためには特許や実用新案といった企業活動に直結する知的財産権だけでなく、「新たなアイデアをデビューさせるために非常に重要」な著作権を保護することが不可欠であると語った。
甘利氏は著作権という概念について、「これまではもっぱら文化振興という視点でしか見られないことが多かったが、これからは経済戦略としても著作権は重要であり、今や文化戦略と経済戦略が表裏一体となっていることを意識しなければならない」と語った。その例として、「冬ソナ」ブームによって、単に韓国への旅行者が増加したとか韓国文化への関心が高まったといったことだけではなく、ドラマの中で登場した米国車が急に売れ出したといった影響が出ていることを挙げ、「これからは文化戦略が経済戦略を引っ張っていく」とその重要性を強調した。
そして、経済戦略としての著作権保護の具体例として、甘利氏らが中心となって議員立法で法案を提出、先の国会で成立した「コンテンツ振興法」を挙げ、「昔は『たかがアニメ』『たかがゲーム』とあなどられていたものが、今や世界経済の牽引力となってきている」「世界のアニメ市場は約15兆円規模と言われているが、そのうち65%を日本が占めている」と語った。数年前にディズニー映画の「ライオンキング」が手塚治虫氏の「ジャングル大帝」の模倣ではないかと騒がれた件についても、「あの時、手塚プロは『大人の対応』と称してディズニーを特に訴えなかったが、私に言わせればあれは『弱腰の対応』でしかない」として、今後はこのようなケースできちんと対価を要求できるような体制を整える必要があることを訴えた。
甘利氏はまた、「最近日本の映画やドラマの脚本を買ってハリウッドがリメイクするのがはやりになっているが、あれは相当に安く買い叩かれている」と語ったほか、海賊版についても「中国市場では今でもマーケット全体の半分ぐらいは海賊版が占めており、日本関係だけで2兆円ぐらいは損をしている」と述べ、このような形で本来得られるはずの収入を失わないためにも、今後在外公館や外務省などとも連係して「無法を許さないような体制作りを行なっていかなければならない」と語った。
● 知的創造のためにはサイクルを大きく回すことが重要~大木氏
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内閣官房で知的財産戦略推進事務局の参事官を務める大木宰子氏
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続いて登場した大木氏は、まず「知的創造のための『創造→保護→活用』のサイクルの効果を大きくするためには、サイクルを早く大きく回すことが重要」と語った上で、2004年5月に策定された「知的財産推進計画2004」の中から、著作権との関わりが深い部分を中心に6項目を取り上げて概略を説明した。
中でも大木氏が大きく取り上げたのが、国内に輸入される海賊版・模造品対策だ。大木氏は、「今や海賊版・模造品はテロ組織の重要な資金源の一つとなっている」と語り、知財戦略だけでなくテロ対策としても海賊版対策は非常に重要であると述べた上で、このために在外公館や外務省などの機能強化はもちろん、税関での水際の取締り、国内でのネットオークションなどを利用した販売行為の取締り強化を行なっていく考えを示した。
またその一環として、2004年4月に関税定率法が改正されたことにより、税関で海賊版・模造品の輸入が発見された場合、その輸出入に関わった業者や製造者の情報を税関が本来の権利者に通知できるようになったことを紹介し、「これまでは国をまたいだ形での悪質業者の摘発が難しかったが、この改正により権利者が海外業者の告発などを行なうことが容易になる」とその狙いを語った。
これ以外にも、コンテンツビジネスの振興を目的として、前述のコンテンツ振興法などの制度の整備に加え、エンターテイメント・ロイヤーのネットワークの構築、東京国際映画祭についてゲーム・音楽等のイベントの併設、マーケット機能の付与などによる抜本的強化を行なうといった具体的施策を実施する考えを示し、知的財産立国に必要な制度面の整備や人材育成を本格的に進めていく考えを示し、講演を締めくくった。
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大木氏が挙げた知財推進計画の6つのポイント
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関税定率法の改正による水際対策の強化
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関連情報
■URL
著作権フォーラム
http://www.chosakuken.soudancenter.com/forum/forum.html
東京都行政書士会 著作権相談センター
http://www.chosakuken.soudancenter.com/
( 松林庵洋風 )
2004/09/17 20:44
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