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産官が集いユビキタス時代を語る「デジタルが広げるユビキタス社会」


 CEATEC JAPAN 2004・3日目の7日、「デジタルが広げるユビキタス社会」をテーマにパネルディスカッションが行なわれた。総務省、経済産業省に加え、松下電器産業、NTTレゾナント、NHKといった企業のトップが参加し、来たるべきユビキタス社会における期待と問題点などについて、忌憚のない意見交換が繰り広げられた。


会場風景 モデレータを務めたNHK総合企画室担当局長の和田郁夫氏

インフラ整備は進んだが、まだ不十分なITの利活用

総務省総合通信基盤局の有冨寛一郎局長
 モデレータを務めたNHK総合企画室担当局長の和田郁夫氏は、パネルディスカッションの冒頭、ユビキタス社会を次のように表現してみせた。

 「ユビキタスの語源はラテン語の、やおよろずの神を示す言葉からきている。これを、いつでも、だれでも、どこでも、という意味で活用している。一方、私は、ドラえもんの四次元ポケットと同じではないかとも思っている。四次元ポケットに手を入れるとその人の意志を読みとって、必要なものが出てくる。ユビキタスの世界は、まさに人間が日常的に必要だと思うことをインフラとして提供することではないだろうか。」

 こうした将来のユビキタス社会への期待、そして、そこで起こりうる課題やユーザーの不安、さらに、行政、企業、放送事業者が取り組まなくてはならない問題をそれぞれの立場から語った。

 まず、総務省総合通信基盤局の有冨寛一郎局長は、情報産業は我が国の戦略的重点分野であると説明した上で次のように語った。

 「情報通信インフラが高度化し、これまでの電話ネットワークではできないようなサービスが実現されるとともに、固定電話と携帯電話が融合して、ユビキタスの時代がやってくる。どこでも、誰でも、いつでもの世界を実現する上で、インターネット、ブロードバンド、モバイル、ワイヤレス、セキュリティ、プライバシーが重要であり、それをIBMWSPと呼んでいるが、この上でいくつかの重要な政策課題があると認識している。」

 その一方で有冨氏は、「影の部分といえるデジタルデバイドの問題、セキュリティの問題は産官学が共同でやること、国際的な視点で取り組むことが重要だといえる」とも提言した。


経済産業省商務情報政策局の豊田正和局長

NTTレゾナントの資宗克行社長
 経済産業省商務情報政策局の豊田正和局長は、「ビジョンとしてのe-Japan戦略、担い手たるIT産業の競争力強化、ITの高度化のための情報セキュリティの確保といった3つの視点が、デジタル社会実現に向けた重要な要素」とし、「インフラ整備は進んでいるものの、ITの利活用はまだ不十分。遠隔教育やテレワーカー、医療分野におけるレセプトのオンライン化など遅れているものもある」と指摘した。

 だが、デジタル家電に関しては、「多くの技術を有しており、これをベースに日本の得意とする摺り合わせも可能になる。また、垂直統合の動きをコンテンツの分野にも拡大していくことが可能になる。今後、情報家電を取り巻く環境は、デジタル化から、第2段階のネットワーク化を経て、第3段階のプラットフォーム化へと進展していくことになるが、それによってライフスタイルが大きく変化し、新たな市場を創出することができるだろう。一方で、海外などへの不正な技術流出を抑制することにも今後力を注いでいくことが必要だろう」と語った。

 通信事業者の立場からコメントしたのがNTTレゾナントの資宗克行社長。「ユビキタスネットワークによって、個人の生活が大きく変わることになる。活動範囲が倍増し、知の共有やコミュニティの形成、リアルに交流を支援するといった役割を果たすことになる」とする一方、「ユビキタス社会を実現する上で我々が技術的に解決しなければならない課題がある一方で、通信事業者だけでは解決できない問題も山積している。制度面での解決が必要なもの、サービスプロバイダーや機器メーカー、他の通信事業者などと協力して解決しなくてはならないことも多い」と産官の協力体制がユビキタス社会の実現には必要不可欠であることを強調した。


ユビキタス社会の実現には、安心・安全が絶対的に必要

松下電器パナソニックAVCネットワークス社の大坪文雄社長
 松下電器パナソニックAVCネットワークス社の大坪文雄社長は、唯一メーカーの立場からパネリストとして参加。ネットワークがメディアネットワーク、ホームネットワーク、IPネットワークの3つのネットワークの進化を経て、ユビキタスネットワークが形成されることを示し、携帯電話、インターネットや衛星放送、地上デジタル放送などとの連動によって、新たな使い方が創出されることを訴えた。

 「例えば、リモコンはAV機器の近くに置いておくというのがこれまでの使い方だったが、リモコンの役割を携帯電話が行なうようになれば、まさにリモコンを屋外に持ち出して利用しているのと同じになる」といった事例も示して見せた。

 だが、大坪社長は、「ユビキタス社会の実現には、安心・安全が絶対的に必要である」として、「メーカーの立場でいえば、ここにもビジネスチャンスがある」とした。

 ユーザーの観点ということで参加したのがジャーナリストの野中ともよ氏。同氏は、ユビキタス社会においては、デジタルデバイド、個人のプライバシー保護、新しい社会におけるルールづくりの点で不安があると切り出した。

 「デジタルデバイドがどう拡大するのかは不安。ただ、このデバイドを埋めるために税金を使って、なんでも行政に任せるというのではなく、NPOなどを活用し、メーカーや行政の枠を超えた解決も可能ではないか。便利になる一方で、個人のプライバシー保護をどうするのかといった点も問題。個人の購買履歴、行動履歴がどこまでストックされてしまうのか、といった不安がある。また、現時点では日本にはない情報窃盗罪をルール化することは今後の生活の中では当たり前のことになる。ルールづくりにコストがかかったとしても、絶対にやらなくてはならないこと。通信事業者、製造者、使用者の責任がどこまで問われるのかといった決めごとも必要」とした。

 NHKからは、モデレータの和田氏のほかに、理事の和崎信哉氏が放送事業者の立場でパネリストとして出席した。

 和崎氏は、「テレビの大画面化の動きと、携帯電話の進化および高度化は、放送事業者の進むべき道と重なっている」と前置きして、「地上デジタル放送はこの秋から視聴可能地域が拡大するなど、第2段階に入っている。地上デジタル放送を利用して、行政情報や、電子自治体サービスなどの入口とすることや、夜間の診療所や災害時の緊急避難場所など、地域ごとの情報を端末に提供するといったことも可能になる。携帯電話と放送の融合によって、災害時の安否情報の確認などが行ないやすくなる」とした。

 阪神大震災の際には、NHK教育テレビで24時間放送を1週間続けて、5万人の安否情報を流したが、実際には放送局に10万件の安否情報の問い合わせがあったという。これが1セグ放送を利用することで、20万件以上の安否情報の問い合わせに対応できるようになるという。

 これも、通信と放送の融合によって実現されるユビキタス社会のひとつの姿だといえるだろう。


ジャーナリストの野中ともよ氏 NHKからは、モデレータの和田氏のほかに、理事の和崎信哉氏が放送事業者の立場でパネリストとして出席

ブロードバンドが利用できない~デジタルデバイドは新たな過疎地問題にも

 その後、話題はデバイドの問題へと展開したが、総務省の有冨局長は、「デバイドには、年齢や経験値によって機器が使えないことがないようにする情報バリアフリーの問題と、ADSLや携帯電話が利用できないなどの地域によるデバイドを解決とするといった2つの課題がある。前者は、インターフェイスやユニバーサルサービスといった取り組みが必要だろう。一方、後者はブロードバンドが利用できないことで、お嫁さんが来ない、若い人が出ていく、という過疎地の深刻な問題にも発展しようとしている。行政に任せてやってもらうのではなく、もっと使う側がアピールして、解決して姿勢も必要ではないか」と提言した。

 松下電器の大坪氏は、「情報機器の相互接続性には協調して取り組んでいるが、操作性の部分は、メーカーの差別化としてこだわる部分であり、なかなか統一的なインターフェイスは難しい。ただ、努力して、異なるメーカーの製品を簡単につなげること、相互に使えることはやっていく必要がある」と話した。

 こうした動きに対して、経済産業省の豊田氏は、「行政側はガイドラインの策定や、技術支援体制を整えるなどの取り組みになるが、一方で、米国では消費者からの要求がコンシューマレポートのような形で発表され、産業界や政府に提言するといった動きもある。こうした環境を作っていくことも必要ではないだろうか」と話した。

 そのほか、パネルディスカッションでは、電波の割り当てなどの電波行政への取り組み、コンテンツの権利保護問題に対してパネリストからコメントを求めたほか、放送と通信の融合によって生じる新たなルールづくりの必要性などについても意見が出た。

 最後に、日本のデジタル家電産業の優位性について、パネラーに意見を求めたが、経産省の豊田氏は、「この分野において、日本がもっと元気になる施策を打ちたい。技術開発の促進を進めるとともに、開発された技術を守っていくことに力を注ぎたい。また、日本の消費者が商品やサービス、技術に対して、高度な要求を持つという消費者インフラの強みをもっと活かすべきだ。情報産業は、自動車産業と同様に日本にとって重要分野のひとつであり、緊張感のあるフロントランナーであり続けることが必要。日本の情報家電の競争力を維持し、事業者や産業界が次々と新しいものを出すことができる環境づくりを支援したい」とした。

 パネルディスカッションは、約2時間で終了。和田氏は、「ユビキタス社会に向けて欠かすことができない要素は、ユーザーの視点であり、安心、安全、簡単といった点に立ち返って考えることが必要」とまとめた。


関連情報

URL
  CEATEC JAPAN 2004
  http://www.ceatec.com/


( 大河原克行 )
2004/10/08 22:29

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