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デジタルコンテンツ保護法制の世界状況


 個人情報保護やデジタルデータの著作権など、ネットワーク社会と関わりの深い法律を主なテーマとする情報ネットワーク法学会の第4回研究大会が、11月6日に慶應義塾大学三田キャンパスにおいて開かれた。今回はその中から、午前中の個別報告におけるデジタル財産権関連の発表を紹介する。


韓国ではデジタルコンテンツやデータベース作者に対して特別の保護

一橋大学大学院の徐煕錫氏
 デジタル財産権関連については、日本以外の諸外国における法制度の整備状況、国際的な紛争になった場合の法管轄の問題といった点に関する発表がメインとなった。一橋大学大学院の徐煕錫氏からは、韓国におけるデジタルコンテンツ保護法制の現状に関する解説があったが、ここで注目なのは韓国において、著作権がもともと存在しない、あるいは期限切れとなっている著作物をデジタル化した人間や、創作性が認められないデータベース(DB)を構築した人間に対しても、立法によりある程度の保護を与えているということだ。

 韓国におけるデジタルコンテンツ保護法制については、2002年に成立・施行された「オンラインデジタルコンテンツ産業発展法」により、「情報通信網上で使用されるデジタルコンテンツ」を制作するために非デジタルな情報のデジタルへの加工や、デジタル情報であってもそれを別の形態に加工(ファイルフォーマットの変換など)した場合には、その加工を行なった人間に対し「複製・加工による営業利益の侵害禁止(作品の発表から5年間)」「技術的保護手段の無力化装置等の提供禁止」といった保護が行なわれている。ただし、あくまでこれらは「不正競争防止型の保護であり、決していわゆる『デジタル化権』を認めたものではない」と徐氏は注釈をつけた。

 この規定は基本的には全てのデジタルコンテンツに対して適用されるが、実際にはもととなる情報に著作権が認められる場合は著作権法における二次的著作物・編集著作物としての保護が優先する。そのため、対象となるのは実質的に「著作物として保護されないデジタルコンテンツ」ということになると徐氏は述べた。

 一方DBについては、2003年に改正された著作権法において、素材の選択や配列・構成に創作性が認められない(=編集著作物としての保護を受けない)DBについて、DBの作者に対して完成から5年間はDBの全部または「相当な部分」の複製や配布・伝送などに関する権利が与えられるようになったという(ただしDBに含まれる個別素材に対する著作権に影響を与えるものではなく、個別素材はDBの「相当な部分」には含まれない)。

 DBが日々更新されるようなものの場合は、「DBの更新のために『相当な投資』が行なわれた場合、その更新した部分について新たに権利が発生し5年間存続する」と徐氏は説明したが、これに対しては明治大学の夏井高人氏から「DBについては更新をした時点で『全く新しいDBが生まれた』と考えて、DB全体に対して保護期間が更新されるという考え方もある」として、実質的に権利が永久に続くことになるのではないかと指摘。徐氏も「今後『相当な投資』とは何を意味するのかについて悩まされると思う」と答え、この部分の判断については今後の判例の蓄積を待たねばならないとの考えを示した。


著作権における保護とデジタルコンテンツ保護との関係 従来の編集著作物と、改正後の編集著作物・データベースの関係

国際的な著作権紛争における裁判管轄権はどうあるべきか

青山学院大学法学部助手の伊藤敬也氏
 青山学院大学法学部助手の伊藤敬也氏は「デジタル知的財産と国際知的財産紛争」と題した発表を行なった。インターネット上におけるコンテンツの知的財産権を巡っては国をまたいだ形で問題が起こることも珍しくないが、そのような時に果たしてどこの国の裁判所で裁判を行なうべきかという点について、法律関係者の間で議論が紛糾しているのだという。

 伊藤氏は「同じ知的財産権でも、特許や商標のような登録制を取っているものの場合はまだどこの国と権利が結びつくのかがわかりやすいが、著作権の場合はネット上で著作物を公開した場合に『どこの国で著作物を公開したことになるのか』すら明確ではない」と語り、裁判の管轄権を巡って争いになりやすい背景を説明。サーバーの設置場所やコンテンツをアップロードした場所などを判断基準とするという考えについても「かえって恣意的な運用を招きかねない」と述べ、裁判管轄の選択の難しさを訴えた。

 この問題については、ハーグ国際私法会議でも議論が紛糾したほか、WIPO(世界知的所有権機関)においても議論が行なわれていたものの、「時間切れで条文化はされていない」状態だと伊藤氏は語った。しかし、著作権に関する国際条約であるベルヌ条約において、著作物が最初に公開された国(本源国)の定義は不可欠なものであるとして、伊藤氏は「今後実質的な議論を積み上げていくしかない」と語った。日本でも一部には「コンテンツに対しアクセスが可能な国全てで裁判が可能」とする見解もあるというが、伊藤氏はこれに対し「そんなことをすると諸外国で欠席裁判が相次いでしまうし、海外の判決の執行を自動承認するという日本の基本姿勢を考えると、外国での変な判決を受け入れてしまうことになりかねない」として警鐘を発した。

 また、この問題に対してはアメリカ法律協会(ALI)やドイツのMax Planck Instituteなどがいろいろと提案を行なっていると伊藤氏は説明した上で、「それらはいずれもアメリカやEUにとって都合のいい条文になっていて、アジアの立場を反映した提案がなされていない」と説明。今後日本が中心となってアジアの立場を踏まえたこの問題に対する解決策の提案を行なっていくべきとの姿勢を示した。


関連情報

URL
  情報ネットワーク法学会
  http://in-law.jp/
  第4回研究大会
  http://in-law.jp/taikai4.htm


( 松林庵洋風 )
2004/11/08 13:43

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