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「著作権法改正は“大技”ではなく“中技”で着々と」文化庁吉川氏


 東京都内で26日、日本音楽著作権協会(JASRAC)主催による「JASRACシンポジウム2004」が開催された。「音楽コンテンツ流通の現状と末来」と題した今回のシンポジウムでは、文化庁長官官房著作権課の吉川晃課長が「コンテンツ流通と著作権」をテーマに基調講演を行なった。


ネットでは現実のビジネスほどコンテンツが流れていない~利用者の需要が不足!?

 吉川氏によると、コンテンツのインターネット配信に関しては著作権法に不備があるという。例えば、「放送については著作権の保護が明記されているが、インターネットによるライブ中継は現行法ではカバーされていない」。楽曲配信についても「モノに音を固定した『レコード』が前提。直接的にはインターネット配信について書いていない」。また、現行著作権法が施行された1971年当時とiPodなどのHDD型録音機器が存在する現在を比較し、HDD型録音機器は数千曲のコピーが可能でPCとも連携できることから、「当時に比べて『私的使用の複製』が肥大化している」と指摘した。

 吉川氏は著作権法上の不備は認めた上で、コンテンツの流通状況についても言及した。「インターネット配信を利用することでコンテンツの利用が促進される可能性は十分にある」としながらも、「利用者側の需要が不足しているためか、現実のビジネスほどコンテンツが流れていない状況だ」と分析。さらに一部カテゴリのコンテンツについては「市場が成立していない」とし、著作権法の厳しさを理由にするだけではなく、コンテンツへの需要を高める努力も必要だとの見方を示した。


2002年までの改正は国際的な対応がメインだった

文化庁長官官房著作権課の吉川晃課長
 コンテンツ流通の変化に応じて、著作権法の改正も頻繁に行なわれている。吉川氏によると「平成に入ってから、11回もの改正を行なっている」という。例えば、1997年と2002年の改正では「送信可能化権」を権利者に付与し、2000年と2003年には教育・福祉分野での権利制限の拡大、2004年に入ってからは「書籍・雑誌の貸与権」「音楽レコード還流防止措置」などを明記した。

 ただし、2002年までは「ローマ条約」で定めれられた「著作隣接権」を初めとする、WTOの協定やWIPO著作権条約などの「国際条約に対応するための国内的な法整備が主だった」という。また、米国やEUの要望だったという1996年の「著作隣接権保護条約対象の遡及拡大」については、「遡及拡大は通常行なわない。米欧に対応するための苦渋の選択だった」とコメントした。

 こうした国際的な対応がひと段落した2002年以降も、調整がついた事項から改正するという「パッチワーク的な改正をしてきてしまった」。これまでは「関係者の利害調整が難航した事柄は結論を先送りにしてきた」「体系的な観点での包括的な見直しはできなかった」とし、今後は「緊急性・重要性が高い問題を課題とし、結論はすぐに出ないかもしれないが早期から検討を始める」という。

 具体的には、HDD型録音機器の普及に応じた「私的録音録画補償金制度」の改正や、書籍・雑誌の貸与権に伴った「公共貸与権」などである。しかし、例えば私的録音録画補償金制度についてはメーカーと権利者で利害が激しく対立しており「簡単に答えはでない。アンシャンレジーム(旧体制)を壊すことは難しい」とコメント。「まずは議論するための材料を揃え、すぐに対処できる問題なのか、それとも1年ぐらいかかるのか、さらに3年くらいかかるものなのかといった分類をする。100年に1度の“大技”を考えて強引に対処するつもりはなく、10年に1度レベルの“中技”で着実に作業していく」と粘り強く改正を進める意思を示した。


著作権分科会の法制問題小委員会には権利者団体含まず

 吉川氏は著作権分科会についても言及した。まず、優先検討課題の設定を行なう法制問題小委員会については、「これまでは小委員会に権利者団体の代表が委員として参加してもらっていたが、20数名の委員のうち半数以上が権利者側だったため、国会でも批判された」とし、「特定の団体だけを選ぶことも難しいので、次回からは小委員会に権利者団体の代表を含めないことにした」という。なお、著作権分科会には権利者団体の代表も入る。「小委員会の原案に権利者団体の意見を反映することは難しくなり、権利者には不満かもしれない」が、最終的に報告するのは分科会だとし、「全体を見て欲しい」と訴えた。また、分科会での中間報告は公表し、「期間的にも余裕をもってパブリックコメントの募集を行なう」とした。

 知財立国という観点では、先進諸国と比較して著作権保護期間などで不利な面がある国内権利者の権利保護が大事だとする一方で、コンテンツの利用促進も考慮しなければならないという。しかしながら、米国のように、法律で明記するのではなく、判例の積み重ねで規定された私的利用の考え方“フェアユース”には批判的で、「何がフェアユースか明確でないため現場が混乱する。著作権法でフェアユースのガイドラインを規定するということもありえないし、裁判をやってみないとわからないという状況には耐えられないだろう」と問題を分析した。

 吉川氏は最後に「35年前にできた現行著作権法の空白地帯を、現代の要請に応じた改正で埋めていきたい」と述べて講演を締めくくった。


関連情報

URL
  JASRACシンポジウム2004
  http://www.jasrac.or.jp/culture/schedule/2004/1126.html

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( 鷹木 創 )
2004/11/26 19:50

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