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村井氏「ヤマハはSOHO市場の開拓者」~ヤマハルータ10周年記念講演


 ヤマハは21日、ルータ製品の発売10周年を記念して「通信ネットワーク これまでの10年、これからの10年」と題した記念講演を都内で開催した。講演では、慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授と、ヤマハのAV・IT事業本部 通信機器開発部の部長を務める高山明氏が、インターネットとヤマハのルータ製品のこれまでの歩みと今後のビジョンについて語った。


先進的な日本のインターネット市場とヤマハのルータ製品

慶應義塾大学の村井純教授
 村井氏は講演の冒頭でヤマハのルータ製品発売10周年に祝辞を述べた後、ヤマハのルータがインターネットに果たしてきた役割や製品の特徴を挙げ、「SOHOという市場は日本で独自の発展を遂げており、その市場のリーダーとして開拓者の役割をヤマハが担っていた」と語った。ISDNというインフラが全国で利用できるという環境が整っていたこともあり、SOHOや個人をターゲットにしたルータがこれほど早く普及したのは日本特有の現象で、これがその後のブロードバンドの普及にも大きな影響を与えたとした。

 また、村井氏はヤマハのルータ製品の特徴として「大胆なオンラインサービス」を挙げた。ヤマハでは、ルータ製品を発売した最初期から、ファームウェアのアップデートやマニュアルの公開をインターネットで行なっていた。村井氏は、「記憶にある限りでは、こうしたサービスをコンシューマー製品で行なったのはヤマハが最初」として、今ではあたりまえになっているアップデートやマニュアルの公開など、インターネットの有効な使い方を示したという意味でもヤマハの果たした役割は大きいと述べた。

 さらに、「ヤマハのルータではIPv6を早い段階からサポートしており、IPv6に対応した製品が数多く家庭にまで入り込んでいるのも日本の独自性であり、世界的に見れば先進性でもある」とした。こうした日本の先進性から新しいマーケットが誕生しようとしており、これが今後の10年において重要になってくるだろうと語った。

 今後の通信機器の課題としては、高速化とともにいかに遅延を少なくするかという点が重要になるだろうとして、村井氏が最近行なった非圧縮のHD映像によるテレビ会議の実験を紹介した。HD映像を非圧縮で送信するためには1.5Gbpsという超広帯域が必要となるが、映像を圧縮するプロセスが省略されるために遅延が少なくなり、テレビ会議などもスムーズに行なえるという。また、VoIPの分野でも遅延は重要な課題であり、こうしたリアルタイムコミュニケーションの分野でインターネットが使われることで、初めて本当の意味での「速度」がインターネットでも求められるようになってきたとした。

 村井氏は、ブロードバンドやIPv6分野での先進性など、日本のインターネットはマーケットもユーザーもいい意味で独自性を持った形で発展しており、この日本の独自性が世界に進出していくのが今後の10年になるだろうとした。また、「日本ではヤマハがいいルータを作っていると言うと、海外では驚かれる。ヤマハのルータは凄いということが、世界の誰もが知っているようになっていって欲しい」と述べて講演を締めくくった。


今後の10年ではIPと音楽アプリケーションの融合を目指す

ヤマハのAV・IT事業本部 通信機器開発部の高山明部長
 後半はヤマハの高山氏が、ルータ製品のこれまでの歩みと今後の目標を語った。高山氏はまず、ヤマハがルータを製品化した経緯について、「18年前にシンセサイザー『DX-7』で培ったDSPの技術を他の製品にも利用できないかというのが出発点だった」と語った。このDSP技術はまずFAXモデムに採用され、さらにISDN製品へと応用されていったという。

 そして1995年に、ヤマハはルータ製品の第1号となる「RT100i」を発売する。RT100iはISDNのTA機能を内蔵したルータで、当時としては他の製品の半額以下となる20万円を切る価格で発売され話題となった。また、当初から「rt100i-users」というメーリングリストを立ち上げ、ユーザーの声を開発に生かす体制を整えたこともこれまでの製品作りにはない特徴であり、ヤマハにとっても大きな意義のある製品になったと語った。

 高山氏はヤマハのルータ製品を年表とともに挙げ、ルータ製品のこれまでの10年を振り返った。インターネットが広く個人にも普及していった1998年には、個人やSOHO用途をターゲットとした「NetVolante RTA50i」を発売し、企業ネットワークのブロードバンド化を受けて、2002年にはVPN機能を備えた「RTX1000」を発売するなど、インターネット環境の変化とともに製品も進化してきたとした。

 また、この間ヤマハでは先端技術についても積極的に先取りしてきたとして、1997年からはIPSec、1998年からはIPv6とVoIPの分野でWIDEプロジェクトなど研究機関と共同研究を進めてきたことなどを紹介。ヤマハのルータ製品の特徴としては、高性能や安全性といったことに加えて、こうした様々な先進技術にチャレンジしてきた先進性が高いことを挙げた。

 高山氏は、ヤマハのこれからの10年について、これまでの10年と同様にユーザーの声に耳を傾けていくとして、ルータ製品には通信事業者が利用するものからエンドユーザーが利用するものまで様々なものがあるが、ヤマハでは個人やSOHOなどで利用される「カスタマーエッジルータ」を今後とも作り続けていきたいと語った。

 また、ヤマハという企業の特性を生かして、これまでも通信カラオケ用のルータや、「MIDI over IP」といった技術の開発を進めてきたが、今後はさらにIPのリアルタイム性を追求し、IPと音楽アプリケーションの融合を目指していきたいとして、講演を締めくくった。


ヤマハのルーター製品とインターネットの歩み(1994~1997年) ヤマハのルーター製品とインターネットの歩み(1998~2001年)

ヤマハのルーター製品とインターネットの歩み(2002~2005年) ヤマハのルーター製品第1号「RT100i」

関連情報

URL
  YAMAHA ROUTER WEBSITE
  http://netvolante.jp/


( 三柳英樹 )
2005/01/21 20:38

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