「いわゆる“ワン切り”のIP電話版が発生している」と、7日に開催された財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAj)のシンポジウム「P2Pコミュニケーションの可能性と法的課題 ―コンテンツ産業はP2Pといかに向き合うべきか―」の講演で、ニフティ情報セキュリティ推進室の鈴木正朝課長が語った。
このIP電話版“ワン切り”は「VoIP SPAM」と呼ばれるもの。具体的な事例は明らかにしなかったものの、「例えば、同じ事業者間であれば掛け放題であることを悪用し、どんどん電話を掛けてメッセージを留守電に残しておく。テレクラなどの有料サービスに誘導することが目的だ」と概要を説明した。
鈴木氏によれば「VoIP SPAMが携帯電話のワン切りより悪質なのは、犯人からの電話が繋がり、留守電にメッセージが残ることだ」と説明。「低コストなIP電話ゆえに、犯罪者にとっても犯行の障壁が低くなってしまっている」とコメントした。
P2P技術も犯罪に利用され得る
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ニフティ情報セキュリティ推進室の鈴木課長
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IP電話だけでなくP2P技術も犯罪に利用される可能性がある。「例えば、SkypeなどP2P技術を利用したIP電話サービスの場合、センター側でログの管理や悪質なコールをフィルタリングすることが難しい」と分析する。
ただし、「違法コンテンツの配信であれば捕捉が困難だが、金銭目的であれば銀行口座などリアルな接点もあり、制度を整えることである程度抑止できるのではないか」とし、行政、司法などが取るべき対策案を訴えた。
行政側の対策は、経済産業省や警察が金融庁と連携して口座凍結の措置が取れるよう制度化するというもの。「大切なのはP2Pだけでなく、振り込め詐欺型メールやサイトの監視・通報制度の確立すること。また、凍結された事業者の救済措置もセットにして実施する必要がある。例えば、口座凍結に異議申し立てする事業者はクリーンな可能性もあるし、クリーンでないにせよ捕捉可能になる」という。
司法側の対策としては、「振り込んだ被害者の迅速な救済」を挙げた。2004年に福島武司弁護士が取り組んだケースを例に解説。「振り込め詐欺の口座がカタカナだったため、被告本人の特定が難しいとされ、不法行為の返還訴訟が滞った。弁護士照会では、所轄警察は捜査情報を開示せず、金融機関も教えてくれない。一度は却下されたが即時抗告し、最終的には訴状却下命令を取り消す結果になった」と厳しい現状を語った。
「もちろん、被害者の予備軍となる一般ユーザーのリテラシー向上は必須」と前置きした上で、「今後は警察の捜査で取得した口座情報を弁護士に開示する制度や、振り込んでしまった被害者に民事訴訟せずに現金を還付する簡便な手続きは可能かどうかを検討する必要がある」と要望。「P2Pに限らず、技術やサービスには光と闇の面ある。闇の部分を塞いでいくことは違法コンテンツと並んで今後検討していかなければならない課題だ」とコメントした。
関連情報
■URL
P2Pコミュニケーションの可能性と法的課題
http://www.dcaj.org/contents/frame03.html
( 鷹木 創 )
2005/03/07 21:28
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