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イベントレポート
【 2009/06/12 】
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【 2009/06/11 】
アナログ停波後の周波数帯域を利用したマルチメディアサービス
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主催者企画コーナーでは「ServersMan@iPhone」のデモも
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国内初のデジタルサイネージ展示会、裸眼で見られる3D映像など
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【 2009/06/10 】
CO2排出量が都内最多の地域、東大工学部のグリーンプロジェクト
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IPv4アドレス枯渇で「Google マップ」が“虫食い”に!?
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「Interop Tokyo 2009」展示会が開幕、今年はひろゆき氏の講演も
[14:53]

「WinnyはCDの売り上げに関係なし」慶應大学経済学部の田中助教授


 「Winnyでのファイル交換は音楽CDの売り上げを減少させていない」と慶應義塾大学経済学部の田中辰雄助教授。2004年6月からオリコンの上位曲を対象に行なったという調査結果を、7日に開催された財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAj)のシンポジウム「P2Pコミュニケーションの可能性と法的課題 ―コンテンツ産業はP2Pといかに向き合うべきか―」で発表した。


経済学的アプローチでWinnyとCD売り上げの関連性を調査

慶應義塾大学経済学部の田中助教授
 田中氏によれば、今回の研究・調査はモバイル社会研究所の2004年度研究調査プロジェクトとして実施されたもの。著作権の最適な保護水準を調査したという。「音楽や映画などのデータは『情報財』だ。これらは追加費用なしでコピーできるから、無償で全員が利用することが最適。しかし、創作のためにはインセンティブとなる報酬が必要で、著作権による保護を強化することになる」と分析、経済学的アプローチで最適な保護水準を求めたという。

 調査ではオリコンの週間ランキング上位30曲を対象に、Winnyにおける参照量から曲の容量を推定し、ダウンロード数の概況を測定した。ダウンロード数を横軸、売り上げを縦軸にとってグラフ化すると、「ダウンロードされている曲ほどCDが売れている」ことがわかる右上がりの線になる。ただし、「人気のある音楽は売り上げ、ダウンロード数ともに増加するため、Winnyの影響があるのかどうかわかりにくい」。そこで、ダウンロード数から売り上げ枚数を求める式を「操作変数法」を採用して設定。田中氏によれば、「この数式の中でダウンロード数に掛かる係数が負になれば、CDの売り上げが下がると主張できる」と解説する。


WinnyがCD売り上げ減少の原因とは言えない。コピー恐れずにネット配信せよ

 調査の結果、ダウンロード数の係数は「正」で「ダウンロードが増えたからといってCDの売り上げが下がるとは言えない。Winnyのファイル交換が、CD売り上げの減少と言うことはできない」と結論付けた。

 こうした結果から田中氏は、「ファイル交換サービスで試聴し、気に入ると購入するような“宣伝効果”や“探索効果”があるのではないか」と分析。「インディーズレーベルや中堅アーティストの作品は、ファイル交換サービスに流すとアクセスがぐっと増えるケースもある」と紹介した。

 最後に「組織的な大規模違法コピーは取り締まるべき」とした上で「現状の著作権を強化する必要はない。言い換えれば現状の著作権保護は過剰で、売り上げが停滞しているのであれば、むしろ著作権の保護をゆるめるべき」と主張し、「ファイル交換サービスで違法コピーされることを恐れず、インターネット配信に進むべきだ」との見解を示した。


ダウンロード数を横軸に、売り上げを縦軸にとってグラフを作成 調査の結果、ダウンロード数の係数は「正」だった

「P2Pの流通技術が見えてこない」ヤマハ戸叶氏

ヤマハ法務・知的財産部音楽著作権マネージャーを務める戸叶氏
 しかしながら、P2Pによるインターネット配信への危惧を語るコンテンツプロバイダーもいる。ヤマハ法務・知的財産部音楽著作権マネージャーを務める戸叶(とかの)司武郎氏は「P2Pを禁止すべきとは誰も主張していない」とした上で、「P2Pの流通技術が見えてこない」という。

 「われわれコンテンツプロバイダーのビジネスは、ユーザー1人につき月額100円~300円の“チャリンビジネス”。この収入から著作権ホルダーにロイヤリティを分配する。P2Pネットワークで、利用者個人を特定し正しく課金して、ロイヤリティを分配することができるのか。例えば、携帯電話では、着うたと着メロだけで月間1億5,000万のダウンロードがある。このロイヤリティを分配するためのレポートを出力するには、高い技術とスピード感が大事だ。P2Pネットワークにおいて、こうした業務に耐え得る管理データベースがあるのかどうかという現実的な課題がある。」

 戸叶氏は、著作権ホルダーやコンテンツホルダーにもP2P技術について意見を聞いたところ、ACCSやJASRACなどは「P2P技術について、権利保護の仕組みがなければ、管理保護の観点からインフラに責任を求めることを辞さない。著作物利用の対応が正しくなされていないため、権利者としては許容できない」としながらも、「P2P技術は分散処理で重要な技術として認めている」という。

 著作権ホルダーとは微妙に立ち位置が異なるものの、コンテンツプロバイダーにとっても配信コストの低いP2Pは重要な技術。戸叶氏は「P2Pはインフラ技術の選択肢の1つ。顧客獲得からサービス提供、課金システム、ロイヤリティ分配までの一連業務を行なうための利点と欠点を見極めたい」と語った。


関連情報

URL
  P2Pコミュニケーションの可能性と法的課題
  http://www.dcaj.org/contents/frame03.html


( 鷹木 創 )
2005/03/08 14:12

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