インテル・デベロッパ・フォーラム Japan 2005のワイヤレス・ブロードバンド・ワークショップで7日、総務省総合通信基盤局電波部電波政策課の塩崎充博氏と、韓国情報通信部電波放送政策局電波放送政策総括課の宋相勲氏が登場し、日韓両国におけるワイヤレスブロードバンドをにらんだ電波政策の概要について語った。
● 無線LAN・移動体通信に必要な帯域の捻出に挑む総務省
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総務省総合通信基盤局電波部電波政策課の塩崎充博氏
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まず塩崎氏は、今後の移動体通信(携帯電話など)・無線LAN関連の周波数需要予測を示した。これは、2003年に情報通信審議会が答申した電波政策ビジョンの中で示されたもので、2003年には移動体通信と無線LANとで合計約470MHz幅の帯域を使っているが、これが2013年には最大で約2,120MHzの帯域幅が必要になるという。移動体通信と無線LAN機器は特に3~6GHz帯における周波数需要が高いという状況から、2013年には6GHz以下の帯域で1.5GHz以上の帯域幅を確保する必要があると述べた。
しかし、すでに6GHz以下の帯域についてはほぼ周波数の割当が埋まった状態である上、上記の需要予測に従えば移動体通信と無線LANとで6GHz以下の帯域全体の4分の1以上を占めることになるため、帯域を確保することはそう簡単ではない。そこで総務省では、2003年10月に示した周波数の再編方針によって「今どこ(の帯域)が空きそうなのか、既存の事業者や新規参入を狙う事業者の目安となるものを示した」上で、2003年から順次実施している電波の利用状況調査が2005年度末で一巡することから、その調査結果を踏まえて具体的な帯域確保の検討に入る方針であると塩崎氏は語った。
さらに、現在総務省で開かれている「ワイヤレスブロードバンド推進研究会」においても具体的なシステムの検討等が進められており、「来週には中間報告書を出す予定である」という。ただこれまでの議論は「基本的な視点と具体的システムの検討に留まっていた」とのことで、今後はさらにワイヤレスブロードバンドに対する市場のニーズや、具体的な周波数分配案・普及推進方針等について検討を進めるほか「もし良いアイデアがあるようであれば、今後広く一般からの提案を募集していく予定だ」との方針も明らかにされた。同研究会では、11月をめどに最終報告を行なう予定だという。
これ以外にも塩崎氏は、電波の再配分をより素早く行なうための方法として2004年の電波法改正によって導入された「給付金制度」を使って、現在4.9~5GHz帯に存在する固定マイクロ局(電気通信事業者の中継局)を廃止し無線LAN用の帯域を確保する作業がすでに行なわれていることや、屋外の高出力型無線LAN局等の設置をよりスムーズに進めるために従来免許制となっていた無線局の一部に登録制を導入し、同一形態の基地局をまとめて登録した上でユーザー側で自由に基地局を設置し事後報告するといった形で迅速なシステムの導入が可能になったことなど、無線LAN等の利用促進のためのさまざまな政策を紹介。
さらに、現在国会に提出中の電波法改正案で電波利用料の規定が変更されることに伴い、新たに得られる電波利用料の一部を使って、電波の共用化の促進や現在は低い周波数帯を使っているシステムの高マイクロ波帯・ミリ波帯への移行、レーダーの狭帯域化やそれに必要な精密な測定技術の開発などといった内容の研究開発を行なう意向があることも合わせて紹介していた。
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日本国内における今後の周波数需要予測
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周波数の再編イメージ(2GHz以下)
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周波数の再編イメージ(2.5GHz以上)
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● 韓国の新しいモバイル向け通信規格「WiBro」とは?
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韓国情報通信部電波放送政策局電波放送政策総括課の宋相勲氏
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韓国情報通信部の宋氏は、韓国で2006年にスタートする予定の新しい移動体向け通信方式「WiBro(ワイブロ)」の概要について説明した。
WiBroとは、「WiMAX」として知られるIEEE 802.16規格をベースに、韓国のETRI(電子通信研究院)らが中心となって拡張を行なった無線通信の規格だ。宋氏によれば、当初は韓国の標準化機関であるTTA(Telecommunications Technology Association)において独自に標準化が進められていたため、韓国国内の独自規格としての色彩が濃かったが、2004年6月にSamsungとIntelによる共同提案がTTA並びにIEEEに提出されたことに加え、2004年7月にはMICがWiBroのベースとしてWiMAXのモバイル対応規格であるIEEE 802.16eを採用することを決定したことから、現在ではWiBroとIEEE 802.16eは非常に近い関係にあるという。
WiBroは当初「Portable Internet」の名称で開発が進められていたことからもわかるように、当初からインターネットなどのデータ通信用途を主眼に置き、「Mobility」「Low Cost」「High Data Rate」「Anytime, Anywhere」の4要素を重視して開発されてきたという。ブロードバンドサービス全般の中におけるWiBroの位置づけについて、宋氏は「いわばEV-DOとWi-Fiの間を埋めるものになる」と表現したが、一方で「3GとWiBroが潜在的に競合関係になるのは否めない」との見解も示した。ただ宋氏は「cdma2000が全国サービスなのに対し、WiBroは需要の多い都市部に集中させることを想定している」とも語っており、両者の住み分けは可能だとの考えを示している。
すでに韓国ではWiBro用に2.3GHz帯の帯域が割り当てられており、サービスを提供する事業者としてはKT、Hanaro Telecom、SK Telecomの3社に免許が与えられている。ただKTとSK Telecomの2社に対しては「サービス開始から3年後の時点で加入者が500万件を超えていること」を条件に、両社が持つ設備の最大3割をMVNO(Mobile Virtual Network Operator)に提供することを義務付けているという。政府では免許時に「2006年6月までにサービスを開始する」ことを義務付けているが、今のところKTが2006年4月にサービスを開始する予定を明らかにしている以外はスケジュールは明らかになっていないと宋氏は語った。
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韓国におけるWiBroの周波数割当状況
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関連情報
■URL
インテル・デベロッパ・フォーラム Japan 2005
http://www.intel.co.jp/jp/idf/
( 松林庵洋風 )
2005/04/08 13:05
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