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インテル、2007年前半にはノートPC用のWiMAXチップセットをリリース予定


 インテル・デベロッパ・フォーラム Japan 2005のワイヤレスブロードバンドワークショップでは7日、パネルディスカッションが開かれ、主にWiMAXの将来性と可能性についてパネリストの間で積極的な議論が交わされた。


WiMAXには本当に可能性があるのか?

インテルの宗像義恵氏
 まずWiMAXの可能性について、インテルの宗像義恵氏は「インテルとしてWiMAXへの最大の興味は経済性とGlobal Harmonizationだ」と述べ、WiMAXへの大きな期待を語った。

 宗像氏は「社会的インフラとして整備される時に、例えば電話のような特定目的にしか使えない技術は結果的にコストが高くつく」「汎用性の高い技術を使うことで普遍的なインフラが作れるのではないか」と語った。また、「世界中どこでも使えるようになればスケーリングするためコストも安くなる」として、汎用性の高いWiMAXが普及することでインフラとしてのコストが低減できることをメリットとして強調した。宗像氏は「IEEE 802.11系の技術が広く普及したのもそれが大きな理由だと思う」とも述べ、WiMAXの普及はメーカー・ユーザー双方に大きなメリットがあることを訴えた。

 これに対し、一度冷静にサービスとしての住み分けについて考えるべきだとの考えを示したのが、ルートの真野浩社長だ。真野氏は、Wi-FiやWiMAX、UWBなど様々な無線通信の規格が乱立する現状に対し「技術としての住み分けは当然起こるだろうが、『何に使うか』という観点から考えたときに『WiMAXでなければできない』ということがどれだけあるのか」との疑問を提示した。

 真野氏はパネルディスカッションの前のセッションで「もしWi-FiにWiMAXと同じ電力が許可されるのであれば、5GHzのWiMAXよりも2.4GHzのWi-Fiの方が基地局のカバー範囲等の面で有利になる」と語り、技術そのものの優位性と周波数帯域や出力によって生まれる優位性を分けて考えるべきだとの見解を示していた。パネルディスカッションでも、「よく『Wi-FiではQoSができない』と言われるが、それは現在のWi-Fiが免許不要のISM Bandを使っているからであって、Wi-Fi専用の帯域が設けられればそれなりにQoSは実現できるし、ハンドオーバーも現在の最新技術を導入すればWi-Fiで十分実現可能だ」と述べ、サービスの形態になったときに何が実現できるのかが重要だと訴えた。

 ただ逆に言えば、WiMAXを使って本当に素晴らしいサービスが実現できるのであれば、一気にWiMAXが普及する可能性も十分にあり得るということになる。真野氏は「場合によってはドコモが4GのサービスをWiMAXで行なう可能性だってゼロではない」という表現でその可能性を指摘した。


固定通信、モバイル向け双方に課題を抱える

慶應義塾大学の中川正雄教授(左)と、ルートの真野浩社長(右)
 ところでWiMAXと一口に言っても、実際にはIEEE 802.16-2004規格をベースとする固定通信向けの規格と、IEEE 802.16eをベースとするモバイル向け規格の2つが存在し、それぞれに利用される局面は異なる。果たしてそれぞれの将来性はどうなのだろうか。

 固定通信向けのWiMAXについては、真野氏が「WiMAXではRural(地方)の通信コストが安くなることが期待されているようだが、かつて1万局の無線固定局をWi-Fiでやった経験から言えば非常に厳しい」「都心ではそもそも電波が飛びにくい上にADSL等との競争が激しい。一方、Ruralで半径3kmに電波を飛ばしたとしても、そのエリアに何世帯が住んでいるかと考えるとビジネスにはなりにくい」と述べ、少なくとも日本ではかなり厳しいとの見解を示した。真野氏は「行政がデジタルディバイド解消の一手段として(WiMAXを)使う可能性は考えられるが、シングルスター型のFTTHが月数千円で実現できるならそちらを採用した方がよい」とも述べ、地方でもWiMAXを使うくらいならFTTHを導入した方が手っ取り早いとの考えを示した。

 この点について宗像氏は「我々は世界中で考えているので、ブロードバンド環境が整っていない国ではバックホール向けなどにWiMAXを使うのは有効だろう」と述べたが、日本での問題については特に否定しなかった。総務省の塩崎充博氏も、過疎地のデジタルディバイド問題については「我々はまず携帯電話を優先して考えており、携帯電話がユニバーサルサービスに近くなってきていることから、いわゆる不感地帯解消のために電波利用料を一部投入する計画がある」として、デジタルディバイド解消にWiMAXを利用することには否定的だった。

 一方、モバイル向けのWiMAXについては、パネリストの多くは可能性があるとの考えで一致していた。ただし、課題となるのがバッテリーの持ちをよくするための省電力化の問題だ。慶應義塾大学の中川正雄教授は「(WiMAXや3.5G等で使われる)OFDMA方式には、信号のピーク電力を抑えなければならないという問題があり、実際3.5Gや4Gではそのあたりがネックとなって上りと下りの速度が非対称になるなどの問題が起きている」として、この問題はそう簡単には解決できないだろうと語った。


2007年前半にはノートPC用のWiMAXチップセットを

インテルのJohn Roman氏
 WiMAXに関しては、鷹山がWiMAX対応サービスの開始をアナウンスしたほか、韓国ではWiMAXと技術的にほぼ共通の内容を持つ「WiBro」が来年サービスを開始する予定となっている。サービスプロバイダー側の動きが徐々に明らかになってきているが、これに対応する製品の供給の方はどうなっているのだろうか。

 WiMAX対応のチップの供給については、インテルのJohn Roman氏が「具体的な名前は言えないが、インテル以外に少なくとも4社以上が対応チップの開発に手を挙げている」と述べた。インテルとしては間もなく市場に投入されると見られるWiMAX対応のチップセット「Rosedale」に加え、遅くとも2007年前半にはノートPC用のWiMAXチップセットを出す予定であることを明らかにした。また宗像氏は、「WiMAXの実装のリファレンスモデルとなるようなものをマーケットに投入していく」との意気込みも示している。

 韓国情報通信部の宋相勲氏は、WiBroとcdma2000の住み分けに関連して「おそらく韓国のメーカーからは『WiBro内蔵携帯電話』なども登場してくるだろう」「韓国のメーカーはあらゆる方式の研究を行なっているのであまり問題にはならない」と述べ、SamsungやLGなど韓国系のメーカーがすでにWiMAX対応製品の開発に着手していることをうかがわせた。


関連情報

URL
  インテル・デベロッパ・フォーラム Japan 2005
  http://www.intel.co.jp/jp/idf/


( 松林庵洋風 )
2005/04/08 14:36

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