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ライブドア照井副社長が語る「D-cubicが月額525円で提供できる理由」


 WIRELESS JAPAN 2005の基調講演では、ライブドアのネットワーク事業本部本部長兼執行役員上級副社長である照井知基氏が、6月に発表した公衆無線LANサービス「D-cubic」に関する講演を行なった。


D-cubicとポータルやデータセンターとの相乗効果を狙う

講演を行なったライブドアの照井上級副社長

照井氏が挙げた「これまでの公衆無線LANサービスの課題」。これらをD-cubicが解決するという
 照井氏は、D-cubicを始めるに至った理由を、これまでの公衆無線LANサービスの課題を例に挙げて説明。「使える場所がない、料金が高いなど、既存サービスには不満な点が多かった」とした上で、ローミングについても「海外の場合、空港ではさまざまなISPがローミングしているのに、この分野でも日本は遅れている」と指摘。無線LANが技術的につなぎ方が難しいというユーザーの声もあるとした。

 D-cubicに関しては、2004年の4月か5月頃に、同社の堀江貴文社長と食事した際の雑談がきっかけだという。照井氏は「その当時は野球の新規参入よりも前で会社の認知度も低く、いかにポータルに人を集めるか悩んだ時期だった」とコメント。その答えとして「インフラを持っていれば、Yahoo! BBとYahoo! JAPANのようなポータルとの相乗効果が生まれるのではないか」とのアイディアが浮かんだという。

 Yahoo! BBはADSLをベースとした事業を展開しているが、照井氏は「今さらADSLで参入するよりも、一気に無線まで持っていきたい」との考えからモバイル事業での参入を選択。さまざまな技術を検討し、1年がかりで準備した結果がD-cubicだとした。

 月額525円という低価格を売りにするD-cubicだが、照井氏は「525円でのサービス提供がなぜ実現できたかと言えば、我々は通信事業である前にポータルであるから」とコメント。「もちろん、無線LAN事業でも単体で利益を出し黒字化する予定だが」と断った上で、「D-cubicはlivedoorのIDさえあれば、無料でlivedoorのサービスが利用できる。livedoorのポータルと相乗効果を出すことで、525円の通信料にプラスしてポータルでの収益が見込める」との考えを示した。

 また、ポータルへの集客力を高めることで、広告収入などの売上も見込むほか、法人向けには、D-cubicに併せて同社のデータセンター事業も提供していく。「データセンターは元々ある事業だが、無線の事業と一緒に相乗効果を出していきたい」。照井氏は「525円は過激な価格設定ではあるが、こういった相乗効果に加えて、無線LANのデバイスも充実してることから、十分なユーザー獲得が見込める」との自信を示した。

 エリアに関しては、「屋外の基地局設置では地下や高層ビルをいかにカバーするかが課題」とし、既存設備を持っている事業者とのローミングや、ビル管理者との交渉でビル内の基地局設置なども進めていく方針。また、IEEE 802.11aに関しても「現在は屋内利用だが、屋外でも利用可能になれば対応する」とし、「すでに現在設置しているアクセスポイントは、IEEE 802.11aに拡張できるスロットを用意している」と付け加えた。


D-cubicの特徴 ポータルやデータセンターとの相乗効果を図る

六本木周辺のアクセスポイント設置図 ホテルオークラ東京別館のロビー前に設置されたアクセスポイント

iBurstとWi-Fiを組み合わせてエリアをカバー。PLCの採用も視野に

iBurstを採用した全国展開を視野に
 2005年10月にはIEEE 802.11b/gの無線LANで正式サービスを開始するが、今後はiBurstの採用も検討する。照井氏はiBurstの位置付けについて「基本的にはWi-Fiと横並びの形になる」と、あくまでD-cubicの中に取り入れる技術と説明。「Wi-Fiは人口密集地には効率的だが、人口が少ないエリアでは非効率的でコストも高くなり、必然的に525円では提供できなくなる」とした上で、iBurstであれば1基地局で10km近いエリアカバーが可能になるため、「こういった技術を採用することでより強くて広いサービスを提供する」方針を示した。

 ハンドオーバーもiBurstを採用した理由の1つ。「100m程度であればWi-Fiで十分だが、自動車や電車などで利用するには、ハンドオーバーはWi-Fiの大きな課題」。照井氏は京セラまで実際に足を運び、iBurstの実証実験のデモを体験。「非常に良くできていて、携帯電話よりちょっと電波が悪いかな、程度の感覚で使えた」との感想を示し、「電車などの移動中にもiBurstは効率が良く、この分野も積極的に研究してサービスを運用していきたい」と語った。

 また、PLC(電力線搬送通信)の導入も視野にあるという。「今はインフラに光ファイバが必要だが、コンセントがあればどこでもインターネット、という時代がすぐそこまで来ている」。

 ただし、iBurstもPLCのどちらも、実際には総務省の認可を待つ必要がある上に、2GHz帯についてはアイピーモバイル、ウィルコムの2社も割り当てを要望している。新規事業者1社のみに割り当てる方針の2GHz帯だが、照井氏は「電波は公共の物であり、企業体力や資金といった事業の継続性が総務省から求められているが、幸いフジテレビからまとまったお金をいただけていることもあり、十分に継続できる力はある」とコメント。「総務省の認可が受けられれば、iBurstは最短で2005年度中、PLCは2006年春頃になるのではないか」との考えを示した。

 なお、3GやWiMAXといったモバイル技術に関しては「3Gはまったく考えていなかったが、WiMAXは検討の対象だった」とコメント。「WiMAXとiBurstは比較的似ているが、開発面ではiBurstがリードしている印象だった」とした上で、「まずはWi-Fiで片っ端からインフラを構築することが重要で、WiMAXも完成度が高ければ採用の可能性はあるし、Wi-FiをやめてiBurstだけになるかもしれない。無責任かもしれないが、こればかりやってみないとわからない部分だ」とした。

 無線LANの干渉について会場から質問が上がると、照井氏は「電波自体はユーザーが選択すべきもの」と回答。「干渉がまったくないとは言わないが、他社のビジネスに大きな損害を与えるほどの干渉はないという前提。問題が起きたら対応していく」との姿勢を示した。

 ローミングについては「近日中にiPass、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)との提携を発表する。iPassは海外ローミングに強く、KCCSは元々PHSの技術を持っていて、Wi-FiとPHSで最適なインフラを選択するような形になるだろう」とコメント。また、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)から公衆無線LANに関して接触があったという一部報道については「コンタクトは来ていない」と否定した上で、「そういう話があれば当然前向きに検討する」とした。


関連情報

URL
  WIRELESS JAPAN 2005
  http://www.ric.co.jp/expo/wj2005/
  D-cubic
  http://wireless.livedoor.com/

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( 甲斐祐樹 )
2005/07/15 19:13

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