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慶應義塾大学の村井純教授
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インテルは31日、ワイヤレス・ブロードバンド技術に関するセミナー「インテル ワイヤレス・ブロードバンド技術セミナー 2005」を開催した。セミナーでは、WiMAXやワイヤレスUSBといった次世代の無線通信技術に関する解説などが行なわれたほか、慶應義塾大学の村井純教授が「Unwired:空間のためのネットワーキング」と題する講演を行なった。
村井教授は、インターネットが社会基盤としての役割を担うようになってきた現在、無線技術の普及はさらにインターネットを次の段階に進めようとしているとした。「インターネットはそもそもは大型計算機をつなごうとする所から始まったが、このコンピュータをつなぐはずだったネットワークに、なんでもつながるようになってきた。特に無線の登場以降、あらゆるものが、あらゆる場所からインターネットに接続するようになった」と述べ、インターネットは有線や無線など多様化する接続方式を許容できる点が強みであると語った。
一方で、インターネットに求められる要求は成長とともに変化してきているとして、「高速化」「低遅延」「移動可能性」といったキーワードを挙げた。特に遅延の問題は最近になって重要性を増してきたとして、村井教授の研究室に抗議の電話がかかってきたというエピソードを紹介。「先日、電話を受けたら、ネットワークゲームのユーザーから『あんたのおかげで負けたんだ』と言われた。どういうことかと言うと、ゲームをやっている時に遅延が発生してゲームに負けたと。調べてみるとWIDEが持っているIXを経由していて、これが犯人らしいということで問い合わせ先を調べて電話をかけてきたらしい。これは正直言って嬉しかった。ついにインターネットで遅延のことに文句を言う人が普通のユーザーでも出てきた」と語り、IP電話など低遅延が要求されるアプリケーションがますます増えてきていると指摘した。
こうしたインターネットに求められる技術的な欲求が増える一方で、新たな技術やデバイスも登場している。しかし、「素材となる技術はいくつもあるが、要求と技術を結び付けることが必要」として、新たな技術を社会に受け入れられる、説得力のあるものにしていかなければならないと語った。
無線技術についても、要素となる技術は数多くあるとして、HSDPAなどの携帯電話の高速通信技術や、高速なアクセスサービスを提供するWiMAX、身の回りの機器を接続するUWBやZigbeeなどを挙げた。これらの技術は、ベースプロトコルの標準化はほぼ終了し、周辺技術やオペレーション技術の標準化が進んでいる段階だという。また、こうした無線上でTCP/IPを利用するための技術についても、モバイルIPなどの技術はすでに整っているとして、自動車を利用したIPモビリティ技術の実証実験などを紹介。ワイヤレスブロードバンド環境の実現に向けて、技術面での準備は整いつつあるとした。
特に日本はこうした新しい技術への一般ユーザーの関心が高く、日本は世界に先駆けてワイヤレスブロードバンド環境を実現できる可能性があるとして、村井教授は「Unwired Worldとは、無線の世界というよりは、紐がついている(有線)かどうかを意識しなくても良くなるということ。ワイヤレスブロードバンドで、デジタルコミュニケーションの新しい世界が生まれる」と述べ、講演を締めくくった。
関連情報
■URL
インテル ワイヤレス・ブロードバンド技術セミナー 2005
http://www.intel.co.jp/jp/developer/event/wbb2005/index.htm
( 三柳英樹 )
2005/10/31 21:08
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