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元KDDI社長や元NTT副社長らが通信自由化20年の「想定内」「想定外」を語る


 総務省は13日、1985年の通信制度改革から20周年を記念した「通信自由化20周年記念シンポジウム」を、朝日新聞社との共催で開催した。シンポジウムでは、通信自由化によってこの20年でもたらされたメリットや、今後の通信産業の課題などについて議論が行なわれた。


通信自由化20年、前半10年はほぼ想定内だが後半10年は想定外の連続

(左から)元KDDI社長の奥山氏、元NTT副社長の桑原氏、東京大学名誉教授の斎藤氏、元日本テレコム会長の坂田氏
 パネルディスカッションの第1部は「通信自由化20年の『想定内』と『想定外』」と題し、1985年の通信自由化に携わった当時の通信キャリアや行政の担当者らによる討論が行なわれた。

 元KDDI社長の奥山雄材氏は、前半の10年(1985~1995年)は自由化による新規事業者の参入などで、料金の低廉化や端末の多様化などが起こったが、これは「想定内」の出来事だったとした。一方、後半の10年(1995年~2005年)は、携帯電話とインターネットの爆発的な普及があり、これは「想定外」だったと振り返った。

 元NTT副社長の桑原守二氏も、自由化による長距離電話料金の推移についての当時のシミュレーション内容を示し、料金の低価格化はほぼ予想通りだったとした。

 東京大学名誉教授の斎藤忠夫氏は、「自由化の目的は、エレクトロニクスの急速な進歩を通信にも取り入れることにあった」と語り、コンピュータが10倍、100倍と高速化していく中で、通信は長い間取り残されてきたが、1995年までは過度な価格競争が起こらなかったことで、その後の光ファイバへの投資などへの余力が残されたという側面もあると指摘した。

 元日本テレコム会長の坂田浩一氏は、「市内通話は赤字で、それを市外通話の黒字で埋めるといった20年前の通信会社の構造」が大きく変化したことを挙げ、一方でNTTのあり方については、1995年までには決着すると思っていたが、それが長引いたことを想定外の出来事だったと振り返った。

 コーディネーターを務めた京都大学名誉教授の伊東光晴氏は、通信事業は進歩が速く、この20年もある意味では想定外の出来事の連続だったとしつつ、概ねこの20年の通信自由化については「合格点を与えられる」としながらも、「日本の通信事業は確かに世界にも躍り出たが、欧米の通信事業者の地位が低下したことに伴う側面も大きい」と指摘。通信自由化当初の「コストを下げ、地域電話に利益を作り出し、技術革新を促し社会貢献をしていく」という目標はまだ達成されていないとして、通信行政や事業者にはまだまだやらなければならないことがあるとした。


次の20年は明るい見通しも、人材育成が課題に

(左から)イー・ウーマンの佐々木社長、IIJの鈴木社長、慶應義塾大学の村井教授、NTT西日本の森下社長、総務省の寺崎氏
 パネルディスカッションの第2部では、「ユビキタス時代に通信産業が歩むべき道とは」と題し、今後の20年で予想される通信産業の変化や、取り組むべき課題などについて議論が行なわれた。

 総務省総合通信基盤局の寺崎明氏は、ユーザーから見た場合には最も安くインフラが利用できる環境がすでに整っており、今後の20年も明るいとしながらも、システムや機器を作る側の日本のメーカーにやや元気がないのが気になるとした。

 NTT西日本の森下俊三社長は、「携帯電話でも体験したが、通信分野では技術は10年1サイクルで変わってしまう」として、ADSLは登場して5年経つが、あと5年で光ファイバに置き換わり、さらにその10年後にはさらに新しい技術が登場しているのではないかという予測を示した。

 慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授は、「20年ほど前は通信自由化を前にこっそりとネットワークを作っていた思い出があるが、今や大勢の人がネットワークに接続し、使いこなしている。日本人はテクノロジーを使うのが上手で、『使いこなし力』がある」として、今後の20年も順調に推移するのではないかとした。

 一方でIIJの鈴木幸一社長は、「通信産業はいまだに電話の構造のまま。また、日本は情報システムやソフトウェアの遅れがこの10年でさらに広がっており、インターネットでも『日本発』の技術が生まれていない」として、明るい将来予測に対して疑問を投げかけた。

 イー・ウーマンの佐々木かをり社長は、通信産業の将来予測については「晴れ」としながらも、「会場を見ると、久々に女性の少ない所に来てしまったと感じた。もっとこういう場にも女性が参加するようにならないと」と語り、働き手からすると女性の労働についてIT化が果たした役割は非常に大きく、今後もさらにIT化の恩恵を受けられるだろうと語った。

 コーディネーターを務めた朝日新聞社の服部桂氏は、通信の自由化はますます進むが、統制の取れなくなるカオス的状況になってしまうのではないかという疑問を提示した。これに対して村井教授は、「自動車が人間の移動能力をブーストするように、インターネットは人間の知的な活動をブーストするもの」と語り、問題が発生しても、それを解決しようとする人の手助けにもなり、決してカオス的な状況にはならないのではないかとした。また、今後はネットワーク産業に対する人材育成のために、基礎的な分野からのしっかりとした教育が必要であると語った。


関連情報

URL
  総務省
  http://www.soumu.go.jp/


( 三柳英樹 )
2005/12/13 21:02

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