第6回ファイバーオプティクス EXPOの専門技術セミナーでは、ジュピターテレコム(J:COM)の地平(じひら)茂一通信事業戦略部部長が、「J:COMのブロードバンド戦略と光ネットワーク化への取り組み」と題した講演を行なった。
● HFCネットワークで放送・電話・インターネットの3サービスを提供
|
J:COMの地平(じひら)茂一通信事業戦略部部長
|
地平氏は「なぜ同軸ケーブル事業者であるJ:COMがファイバーオプティクスEXPOで講演するのか不思議に思う方も多いだろう」とした上で、「通信と放送の融合は“光”でなければできないのか」「ケーブルテレビのインフラは光ファイバのネットワークである」という2つのテーマに基づいて講演を進めた。
J:COMでは、CATVのインフラにHFC(Hybrid Fiber Coax、光同軸ハイブリッド方式)を採用している。これはJ:COM局からノードまでを光ネットワークで構築し、ノードからユーザー宅を同軸ケーブルで接続するFTTN(Fiber To The Node)方式だ。地平氏は「J:COMではハイビジョンを含む多チャンネル放送やVODに加え、0AB~J番号の電話サービス、下り30Mbpsのインターネット接続サービスなどをすでに提供している」とし、CATVでも通信と放送の融合は実現できると指摘。光ファイバを宅内に引き込むFTTHに比べ、既存の同軸を利用できるHFCは工事コストの面でもメリットがあるとした。
また、関西地区で実験を行なっている「インタラクTV」も紹介。J:COM TV向けに地域のコンテンツやニュース、ゲームなどを配信するというサービスで、地平氏は「年末年始のゴミ収集情報や時刻表など、地域性のあるコンテンツが意外にヒットしている」とコメント。「テレビの中で通信が活用される1つの事例ではないだろうか」と述べた。
J:COMの各種サービスも拡充を進めている。インターネット接続サービスでは、すでにc.LINKにより、同軸で最大100Mbpsの通信が可能な「J:COM NET 光」を集合住宅向けに提供しているほか、米国で標準化仕様の検討が開始したDOCSIS 3.0の導入も検討。CATVの6MHz幅を複数束ねることで高速化を実現する規格で、HFCで100Mbps以上の通信速度を実現できるという。
放送サービス向けには、2006年春にもHDDレコーダ機能搭載のSTBを投入。250GBのHDDを搭載したダブルチューナーのレコーダで、地上デジタル/BSデジタル/CATVデジタルの録画や裏番組録画、EPG録画といった機能が利用可能。C-CAS/B-CASにも対応し、HDDの増設も可能だという。価格などは現在のところ未定だが、2005年10月の事業戦略説明会では、「800円程度の追加料金になるのでは」との説明がなされている。
電話サービス「J:COM Phone」では、IP網をベースとした電話サービスを2005年4月に北海道の札幌局で開始。OAB~J番号の利用が可能で緊急通報にも対応しており、札幌局以降も南大阪局や調布・世田谷局でも展開。2006年以降も順次各局に展開予定だという。さらに2006年春にはウィルコムとの提携による携帯電話サービス「J:COM MOBILE」も開始、4つのサービスをバンドルした「グランドスラム・プレイ・サービス」として積極的に展開していく方針だ。
|
|
地平氏が掲げた2つのテーマ
|
CATVネットワークで放送・電話・インターネットの3サービスを提供
|
|
|
「テレビの中で通信が活用される1つの事例」と地平氏が語るインタラクTV
|
2006年春に投入予定のHDDレコーダ機能搭載STB
|
● CATVではすでに通信と放送の融合を実現
|
デジタル放送の配信プラットフォームを光ファイバ経由に移行
|
J:COMのインフラも将来に向けて改善を進めていく。従来までJ:COMでは、衛星放送のプラットフォームを利用してデジタル放送を配信するHITS(Head end In The Sky)方式を採用していたが、配信するためのトランスポンダ利用料が高額、配信が天候に左右されるというデメリットから、JDSが構築した光ネットワークを利用するHOG(Head-end on the ground)を新たに採用。独自のプラットフォームを採用したことで衛星放送とは異なる独自のデジタル番組も提供できるようになったという。
さらに今後は、既存のHFCネットワークの可能性をさらに追求していくとともに、FTTHも段階的に展開していく。HFCネットワークでは2011年の地上アナログ停波で空いた帯域を確保、ネットワーク容量の拡大を図り、前述のc.LINKやDOCSIS 3.0によってインターネット接続サービスの通信速度向上も進めていく。
FTTHに関しては、「技術的にはCATVでも十分だが、マンションなどでは“光対応”という名目が要求されるという面もある」との理由から、1セルあたり100~200世帯程度の小セルによる光ファイバノードを展開。小セル化によってノードから加入者宅への距離が短くなり、引き込み接続が容易になる、システム信頼性向上や運用コスト低減といったメリットが期待できるという。さらに将来的には宅内まで光ファイバを導入するFTTHも視野に入れているとした。
地平氏は、「J:COMでは光ファイバと同軸のハイブリッド方式を最大限活用することですでに高度な通信と放送の融合を実現できている」とコメント。「FTTHでは電話や放送サービスが付加価値的な扱いだが、J:COMではそれぞれを魅力あるサービスとして提供できる」と自信を見せた。
|
|
c.LINKやDOCSIS 3.0などの高速化技術を積極的に検討
|
FTTHへのアプローチも段階的に進める
|
|
|
将来的にはFTTH化も視野に
|
将来的にはFTTH化も視野に
|
関連情報
■URL
第6回ファイバーオプティクス EXPO
http://www.foe.jp/
■関連記事
・ J:COM決算、「J:COM NET 光」正式サービス開始。HDD搭載STBも投入予定(2005/10/28)
( 甲斐祐樹 )
2006/01/19 21:44
- ページの先頭へ-
|