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ホリエモン逮捕に至る背景、「ガ島通信」藤代氏らがトークセッション


 ホリエモンはなぜ逮捕されたのか――。ブロガーらによって運営されている「RTCカンファレンス」で1日、ブログ「ガ島通信」の藤代裕之氏やブログ「ニュース・ワーカー」の美浦克教氏らを交えて、「ライブドア事件とこれから」をテーマにトークセッションが行なわれた。


東京地検特捜部は「体制の守護神」として逮捕に踏み切る

「ニッポン放送株の取得がきっかけ」と美浦氏
 東京地検特捜部と証券取引等監視委員会によって行なわれたライブドアへの家宅捜索だが、共同通信社で司法記者を務めた経歴を持つ美浦氏は「2005年2月に、ライブドアが時間外の市場内取引によってニッポン放送株を取得したことがきっかけ。家宅捜索までに特捜部は内偵を進めていたはずだ」と指摘する。

 背景には、東京地検特捜部が「体制の守護神」であるという見方がある。資本主義経済において株式市場は重要な構成要因。ライブドアの行為は違法ではないものの、「(時間外の市場内取引について)違法ではないことをやってどこが悪いのか」とテレビなどで言い放った堀江氏に対して、東京地検特捜部は「善意を前提とした自由競争による資本主義経済体制への重大な挑戦」と見て、守護神たるべく捜査・逮捕に踏み切ったというのが美浦氏の分析だ。

 堀江氏が放言したとしても、逮捕までできるのだろうか。今回の逮捕容疑は証券取引法違反だった。美浦氏も藤代氏も、特捜部が決定的な証拠をつかんでいると見る。

 一連の家宅捜索から逮捕まで「特捜部の主導で行なわれた」と美浦氏。通常、地方裁判所への起訴は、警察組織からの「送検」、証券取引等監視委員会や国税局、市民からの「告発」を受けて地方検察庁が起訴する仕組みだ。特に警察組織からの送検による起訴は事件の99%を占め、「送検主義」とも言われているという。一方、東京地検特捜部の手法は「直告主義」と言われ、市民などからの告発を受けて特捜部の「特殊直告一班」「特殊直告二班」が捜査するのが特徴だ。

 その捜査手法は徹底した物証主義。総勢110名ほどの特捜部には特殊直告班以外に、財政経済班や特捜資料課、特捜事務課がある。「特捜資料課の事務員には簿記や会計などを教育し、会計事務所が開けるほどの人材がいる」。今回のライブドア事件に関しても、10カ月近い内偵期間にライブドアの決算資料や財務状況を分析させて、「(裁判で有罪を)とれる、と考えたから逮捕したはずだ」。

 家宅捜索後には、堀江氏らによるメールのやりとりがわかったかのような報道もあった。ライブドア側がメールのデータを上書きするなどして削除した場合、復旧にはある程度の時間が必要だ。また、完全にはデータを復旧できない場合もある。徳島新聞の元記者である藤代氏は「メールサーバーの復旧は進んでいない可能性もある。むしろ、内偵の際に社内メールを証拠としてつかんでいるのではないか。ライブドア社内からの密告者の存在も否定できない」とコメント。いずれにせよ、東京地検特捜部が動いた以上、証拠固めは相当進んでいるとの見解を示した。

 なお、今後のライブドアから逮捕者が出るかどうかについては、藤代氏が「特捜部の捜査は通常、トップをとったら終わり」と、堀江氏の逮捕で一段落し、新経営陣には及ばないことを示唆。自殺したと言われる野口英昭氏(当時エイチ・エス証券副社長)についても「自殺については、これ以上は捜査しないと見ている」という。


過熱するマスコミ報道、読者のチェックが暴走を防ぐ

藤代氏は「検察はメディアにとって大事なクライアントだが、読者も大事なクライアントだ」という
 当然のことながら検察からの公式発表は少ない。「家宅捜索と逮捕ぐらいしかない」と美浦氏。にも関わらず、マスコミ各社の報道争いは熾烈だ。

 守秘義務や捜査の密行性を重視する検察庁や警察組織への取材は難しい。検察庁では通常、次席検事が広報対応を行なう。毎日、記者を集めて会談し、それが公式発表になるという。「特に、家宅捜索や重要人物の逮捕に関する前打ち報道(検察庁が動く前に報道すること)を極度に嫌う。これを破ると出入り禁止をくらってしまう」。今回もNHKが家宅捜索前にフライング報道をしたが、「NHKは間違いなく出入り禁止になっているはずだ。恐らくまだ(出入り禁止が)解かれていないのでは」とも。もっとも、各社とも報道が過熱しており、「すべてのマスコミが出入り禁止になっているのではないか」と会場を笑わせた。

 一方、現場の記者たちは出入り禁止になった後も取材を続ける。次席検事には取材できないが、「日頃、懇意にしているP(Prosecutor:検事)に話を聞く。ただし、役所内では話せないので、決まった時間に電話をかける」(美浦氏)、「懇意になるために接待じみたこともやる」(藤代氏)など泥臭いこともしばしばだ。こうして「ウォーターゲート事件の“ディープスロート”のような情報提供者を探す」(美浦氏)わけだ。

 そんな努力によってライブドア事件の報道は支えられているが、マスメディアの堀江氏への評価が事件前と事件後で大きく異なることに違和感もある。有罪が確定したわけでもないのに――。

 「鈴木宗男議員の逮捕では、ムネオハウスなどがマスコミで大きく扱われたが、正確な容疑を知っている人はどれくらいいるだろうか」と藤代氏。鈴木議員の容疑は地元企業からの贈収賄だったのだが、検察がメディアに情報を提供する関係が続く限り、メディアが検察からの情報に踊らされる危険性を常にはらんでいる。藤代氏は「検察はメディアにとって大事なクライアントだが、読者も大事なクライアントだ」とコメント。いわゆる“メディア・スクラム”を防ぐためにも読者によるチェックが重要との考えを示した。


もし堀江氏だったら……

 会場からは「もし堀江氏だったらどうするか」との質問もあった。RTCカンファレンスを主催者の1人で、ブログ「ちょーちょーちょーいい感じ」にてライブドア事件をファイナンスや経済面から解説する保田隆明氏は「(私だったら)捕まったときにマスコミに対して『イヤヤー、イヤヤー、絶対俺はシロやー』と無罪をアピールしていただろう」という。また、もう1人の主催者であるブログ「近江商人 JINBLOG」の上原仁氏も「自分がやったことを問題ないと思うなら、特捜部が来る前に、やったことを公開する」とし、世の中に堂々と問うべきだと述べた。


「マスコミに無罪をアピールしただろう」と保田氏 上原氏も「特捜部が来る前に、やったことを公開する」という

 美浦氏はもう少し踏み込んで、「本当に無罪なら、特捜部の取り調べに対して完全黙秘する」と回答。「特捜部はウソでもなんでも喋ってくれる容疑者には強い。供述の矛盾を突き、自白に持ち込むテクニックがある」。ただし、今回は宮内氏なども逮捕されてほかにも供述している人がいることから、「犯罪を犯していた場合、完全黙秘のほうが罪が重い。むしろ、自分から自白して情状酌量を訴えていく。うまくいくと刑務所に行かずに済むかもしれない」と述べた。

 藤代氏も「私なら罪を認める」とし、場合によっては取り調べする捜査官に対して“泣く”こともあるという。「そうすれば次の日の新聞で『藤代容疑者が反省、被害者に申し訳ない』などと報じられる」と笑わせた。なお、藤代氏は堀江氏が犯行を否認していると報道されている件について「(否認しているのは)“反抗”という彼自身のブランドに囚われているからではないか」と予想した。


関連情報

URL
  イベント案内
  http://www.future-planning.net/x/modules/eguide/event.php?eid=15
  ガ島通信
  http://d.hatena.ne.jp/gatonews/
  ニュース・ワーカー
  http://newsworker.exblog.jp/
  ちょーちょーちょーいい感じ
  http://chou.seesaa.net/
  近江商人 JINBLOG
  http://www.ceonews.jp/
  関連記事:本誌記事で振り返る、ライブドア事業拡大の歴史[前編]
  http://internet.watch.impress.co.jp/static/index/2006/01/24/
  関連記事:本誌記事で振り返る、ライブドア事業拡大の歴史[後編]
  http://internet.watch.impress.co.jp/static/index/2006/01/25/


( 鷹木 創 )
2006/02/02 19:33

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