社団法人日本広告主協会のWeb広告研究会は15日、「メガメディア時代の企業コミュニケーション」をテーマにした「第13回WABフォーラム」を開催した。基調講演では、ヤフー代表取締役社長の井上雅博氏がYahoo! JAPANの過去10年と今後10年についての展望を語った。
● 量の拡大で成長してきた過去10年間
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ヤフーの井上雅博代表取締役社長
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井上社長は、キーワード検索とカテゴリ検索の2つのサービスでスタートした1996年当時のYahoo! JAPANを振り返り、現在では情報提供やコミュニティ、ECなど80以上のサービスを提供するようになったと説明した。
ヤフーが実施したインターネット利用者属性調査によれば、96年9月が男性87%、女性13%で偏りがあったものの、2005年10月では男性49%、女性51%でほぼ均一化。「人口比率に近づいてきたことで、インターネットが一般化した」(井上社長)という。
また同社広告売上高の業界別シェア推移についても、2000年第1四半期は情報通信が中心で「ネット広告に興味を示すのはPCメーカーやソフトメーカーが大半」だったが、2005年では金融・保険、外食、自動車など他業種が興味を示すようになった。
Yahoo! JAPANの過去10年間について井上社長は、「量の拡大で成長してきた」と振り返る。これは、ブロードバンドの普及でネット利用者が急速に増えたことが要因という。実際にブロードバンド利用者はナローバンド利用者に比べ、ネットの利用頻度が約2.2倍、利用時間は2.5倍、閲覧するページビュー数では4.1倍に達している。
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1996年と2005年におけるインターネット利用者属性
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2000年と2005年における同社広告売上高の業界別シェア推移
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● 今後の市場は「ロングテール」が鍵
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インターネットの今後の潮流としては、「企業ではなく個人が情報発信者となる」
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「ロングテール」を合理性を持って展開できるのはインターネットの強み
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しかし今後の10年を考えると、ネット利用者数が現在の倍になることは考えにくい。そこで井上社長は「量から質への変換」を今後10年のテーマに挙げた。
質を高めるためには、利用者の生活シーンに合わせたコンテンツを提供することで1人当たりの利用頻度や利用時間を増やしたり、文字中心のコンテンツから音声や動画を主体としたリッチなコンテンツを提供する。また、新聞やテレビなど既存メディアと同等の信頼感をインターネットが得ることも不可欠だとした。
インターネットの今後の潮流としては、企業ではなく個人が情報発信者となることで、各自が情報をフィルタリングするようになり、「マスメディア」から「マイメディア」に変わると予測。「メディアなどの組織に比べて、個人による情報発信は網羅性や客観性が欠けるが、1,000万人のユーザーが情報発信すれば全国を網羅した情報を作れるほか、信頼性も高められるのではないか」との考えを示した。
さらに、2割の商品が8割の売り上げを稼ぐという「2:8の法則」ではなく、確実に需要があるニッチ商品に着目する「ロングテール」の概念が重要になると予測。音楽業界を例に挙げ、「レコード会社が店頭やTVで宣伝するのはヒット商品が中心だが、それ以外の楽曲をプロモーションできないのが現状。しかしインターネットは、経済合理性を持ってニッチ商品を販売できる場所になりうる」と訴えた。
また、ネット広告については「10年前に役に立たないと言われていた頃から始まり、ブランディングやキャンペーンなど広告の利用方法を試行錯誤してきた。今後10年間は、ターゲティングやデータ取得が可能なインターネットの特性を活用したネット広告が伸びる」と述べた。
関連情報
■URL
第13回WABフォーラム
http://forum.wab.ne.jp/
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