東京・秋葉原の再開発事業「秋葉原クロスフィールド」のグランドオープンを記念して、同地で進められている産学連携プロジェクトなどを紹介するイベント「アキバテクノショーケース2006」が開催された。秋葉原クロスフィールドに入居するぷらっとホームでは、同社が販売を手掛ける「PacketiX VPN(旧称SoftEther VPN)」の開発元であるソフトイーサの登大遊代表取締役社長と、多摩美術大学の石田晴久教授を招いたセミナーを行なった。
● 日本も基盤となるソフトウェアの開発・輸出を促進すべき
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多摩美術大学の石田晴久教授
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石田教授は、登氏が開発したSoftEtherについて「このソフトがすごいのは、大学生が最初たった1人で考えて開発したこと。米国にはそういう例はあるが、日本では今までになかったこと」と高く評価した。また、「こうした基盤となるソフトウェアの開発には、プロトコルを完全に理解する必要がある。また、暗号を含むセキュリティも必要であり、高速性・信頼性が求められるため高品質なプログラミングが必要」だとして、こうしたソフトウェアを大学生が作り上げ、さらに起業したことに大きな意味があるとした。
また、SoftEtherが情報処理推進機構の「未踏ソフトウェア創造事業」に認定され、開発が進められたことについて、「未踏ソフトウェア創造事業は素晴らしい成果を挙げている。特に、事業に対する予算についてあまり制約を設けず、審査や評価をプロジェクトマネージャーに一任する形としたのが良い結果を生んでいる」として、今後さらに多くのベンチャー企業が登場することに期待をかけた。
石田氏は「これからは日本もソフトウェアの輸出に注力する必要がある」として、そのためには作ったソフトウェアの優秀さを理解してもらい、意見を聞きながらさらに開発を進めるなど外国人技術者との連携も重要であるとした。石田氏は「ゲームやアニメ、マンガといったソフトウェアは数多く輸出しており、家電製品や携帯電話の中のOSやソフトウェアも輸出している」として、今後はSoftEtherのような汎用アプリケーションの輸出にも期待したいと述べた。
● 日本のプログラマーに対する評価は低すぎる
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ソフトイーサの登大遊代表取締役社長
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続いて登壇した登氏は、「世界で使われるインターネットソフトウェアの開発を目指して」と題して、ソフトイーサの今後のビジョンを披露。ソフトイーサの現在の目標としては「数年以内に上場・株式公開を行なう」ことだとして、そのために主力製品となるPacketiX VPN 2.0をデファクトスタンダードにできるかがカギとなると語った。
登氏は基盤となるソフトウェアを普及させるための大前提として、「小規模から大規模環境まで利用が可能であること」「インフラストラクチャとして利用するために必要な安定性・信頼性を持っていること」「いろいろなハードウェア・OSの上で動作し、混在環境にも対応できること」「パフォーマンスが十分出ること」「十分なセキュリティ機能を搭載していること」の5点を挙げ、これに従って製品の開発を進めているとした。
秋葉原クロスフィールドでも進められている産学連携という観点からは、ソフトイーサは登氏が在籍する筑波大学の協力を得て事業化を進めてきたことを説明。ソフトイーサは2005年7月から筑波大学の産学リエゾン共同研究センターに入居して事業を進めているほか、2005年9月からは学術情報メディアセンターと共同研究を開始。また、PacketiX VPN 2.0の実験用公開サーバーを筑波大学内に設置し、ギガビット級の回線に接続して実験を行なえたことで、大規模環境でも利用可能であることが実証できたとした。
今後については、つくば駅前に新たにソフトイーサとしての本社オフィスを構える計画があることを明らかにした。また、営業・販売を行なう目的で2005年に設立した子会社「ソフトイーサVPN」を、4月1日にソフトイーサと合併する予定だとした。営業・販売部門の責任者はビレッジセンターの中村満社長が務める。
登氏は、「日本にMicrosoftやCisco、Oracleのような、基盤となるソフトウェアを開発する企業が少ないのは、日本のプログラマーに対する評価が低すぎることが原因となっているのではないか」と指摘。日本にも米国と同じぐらいの割合で才能のあるプログラマーがいるはずで、ソフトイーサをそうした人材が活躍できる会社にしていきたいと語った。
そのためには、まずは「PacketiX VPN 2.0」から始めて、世界に通用する基盤となるソフトウェアを開発して普及させることを目標とし、VPNに限らずネットワークやセキュリティに関連するソフトウェアの開発も進めるとした。また、会社としては「プログラマーを最も大切にする」として、優秀なプログラマーを集めたり育てたりすることで、他のソフトウェア企業では開発できないものを作り出すことに注力していくとした。
こうした目標を実現させるためのステップとして、自社内で販売・マーケティング体制を構築し、PacketiX VPN 2.0がビジネス面で成功することが必要だとした。さらに株式の公開により資金を調達し、自社で研究拠点を構える体制に移行していきたいとした。登氏は「日本中に点在する、つまらない仕事に苦しんでいる、本来は優秀なプログラマーを発掘。ソフトイーサに来れば、自由・快適な開発環境が入手できるようにしたい」と語り、講演を締めくくった。
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筑波大学に設置した公開VPNサーバーのトラフィック量
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ソフトイーサ株式会社の目標
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関連情報
■URL
ぷらっとホーム
http://www.plathome.co.jp/
ソフトイーサ
http://www.softether.com/jp/
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( 三柳英樹 )
2006/03/10 11:33
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