「Interop Tokyo 2006」で7日、「IP放送はどうなる?」と題したカンファレンスが行なわれた。この中で、USENの二木均氏から同社が展開する動画配信サービス「GyaO」の現状と今後の展開について語られた。
● GyaOの登録者数は984.7万人。全ユーザーが2週に1度のペースでアクセス
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(写真右から)USENの二木氏と、カンファレンスの司会を務めたシスコシステムズの大和氏
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二木氏は、GyaOの視聴登録者数について「実数で言えば984.7万人(6月7日時点)に上っている」と現状を説明する。「会員のほぼ全てが2週間に1度はGyaOにアクセスしており、1ユーザーあたりの平均視聴時間は40分を超えている」という。また、「毎日アクセスしていただいているユーザーも60万人程度おり、視聴傾向としてはアニメや映画、ドラマが多い」と語った。
続けて、「テレビとマーケットが重複するのではないかと当初は言われていたが、実際には男性、特にM1/M2層とあまりテレビを視聴していない層が多く視聴している」と語り、異なるマーケットであることを指摘。男女比率としては「男性が多く、全体の60%を占めている。ただし、韓国ドラマブームの際には女性ユーザーの登録も多かった」とした。また、性別情報によってGyaOトップ画面に表示するコンテンツ情報も異なっているといい、「トップ上部をよく見ていただければわかるが、“For MEN”“For WOMEN”と表示が異なっている」と述べた。
登録会員数の伸びが鈍化傾向にあるという指摘に関しては、「異なるパソコンで利用する際には新規に登録する必要があったが、先日からメールアドレスの入力によって再登録できる仕組みを導入したため」と説明。二木氏は「これによりユーザー数の重複はなくなり、現在は毎日1.5万件程度のペースに落ち着いている」という。なお、「ゴールデンウィーク期間中には16万人の新規登録があった」ことも付け加えられた。
無料でGyaOを開始した背景について二木氏は、「勝算なくサービスを始めたわけではない」点を協調する。「有料配信サービスとして運営している『ShowTime』で、無料配信や低価格(100円程度)の有料配信などの実験をした際に、無料と有料でアクセス数が50倍程度違った」とコメント。一方、有料コンテンツに関しては「価格差による購入の違いは確認できなかった」と述べた。
その上でサービス開始にあたっては、インターネットの双方向性を利用したセグメント別の広告により無料化を実現。「広告の挿入に際しては、ユーザー情報やスポンサーの要望に応じて、ユーザーに合わせてダイナミックに広告を配信している」と語った。広告収入に関しては「セグメント別広告にはクライアントからも理解をいただいており、放送の100分の1程度といわれる通常のインターネット広告単価と比べれば3倍程度になっている」という。二木氏は「将来的にはインターネット広告の10倍、放送の10分の1程度まで単価を引き上げることができれば」と、引き続き広告市場にターゲットを見据えた展開をしていく考えを示した。
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GyaOの現状分析
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視聴登録者数の推移
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● 二木氏「マーケットの早期定着が課題」
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GyaOにおける今後の懸念事項
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続けて、サービス運営にあたっての将来を含めた懸念についても説明があった。ネットワークインフラ面に関しては、「時間帯によってコマ落ちやセッション切れが生じた場合は我々にとってもリスクで、広告収入などの面でも問題が生じてくると考えている」という。また、「将来的にブロードバンドユーザーが2,000万、3,000万人と拡大し、そこから大量のアクセスがあった場合にデータベースが破綻しないかというリスクもある」とも付け加えた。
また、GyaO向けに確保しているネットワーク容量は60Gbpsで、「今後もトラフィック状況を見て増強を進めていく」考えだという。同社外のネットワーク環境としては上述のように「経由したネットワークが脆弱だった場合にはコマ落ちする問題が生じるが、USENが他社のネットワークに口出しする立場にはない」とコメントする。
一方、ネットワークリスクの解決案としてNTT東西のフレッツ網に直結してGyaOを提供しているなどの事例を紹介。二木氏は「喧嘩してばかりと言われているが、現場レベルでは協力体制が進んでいる」とコメントした。また、複数キャリアからGyaOサービスの配信を行なっていく方法や、他キャリアとプライベート接続行なう協力体制を構築するなどの案も示された。
二木氏はまた、社団法人日本レコード協会がユーザーが趣味に使用する支出の割合について行なったアンケート結果を例に「携帯電話の通話やメールが圧倒的ではあるが、映画や音楽への使用意向も2~3割程度ある」点を挙げる。「Amazonアソシエイトなどと連携したバナー広告を掲出していくことで、広告だけではなく新しい媒体として認識してもらえるようになるのではないか」とした。
今後の展開に関しては、番組の途中再生やリスト機能が利用できる会員制サービス「MyGyaO」、携帯電話向けの動画配信サービス「モバイルGyaO」の周知や機能強化を進めていくという。加えて、「テレビに接続してGyaOを視聴できるSTBも開発中で、2006年夏以降に提供していきたい」と語った。
サービス運営にあたってのライバルについては「あえて言えば『Yahoo!動画』」とのことだが、「我々としては新しいマーケットを構築している最中であり、もしやりたいという事業者がいればOEMや配信エンジンの貸し出しも行なう」という考えを示した。その上で、二木氏は「マーケットをいち早く定着させることが我々の課題である」と述べた。
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ネットワーク上でユニキャスト配信するリスク
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他社とのネットワーク上の協力体制
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関連情報
■URL
GyaO
http://www.gyao.jp/
Interop Tokyo 2006
http://www.interop.jp/
■関連記事
・ USEN、PCレスでGyaOを視聴できるSTBの試作機を展示(2006/06/07)
( 村松健至 )
2006/06/07 21:47
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