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米Intel インテル・シニアフェロー兼コミュニケーションズ・テクノロジー・ラボ ディレクターのケビン・カーン氏
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「Interop Tokyo 2006」で9日、米Intelのインテル・シニアフェロー兼コミュニケーションズ・テクノロジー・ラボ ディレクターであるケビン・カーン氏による基調講演「変貌するインターネット」が行なわれた。インターネットを取り巻く現状を分析しながら、将来像としての「Internet 3.0」に向けて、インテルがどのような取り組みを行なっているか解説した。
● 情報収集をインターネットに依存する傾向が顕著に
カーン氏はまず「インターネットは研究、軍用目的で始まった。しかし、今や映像・音楽などのコンテンツで溢れている」と指摘。インターネットが娯楽手段としてはもちろん、ビジネスインフラとして欠かせない存在へ変貌を遂げたと強調する。
一方で問題も増えた。「インターネットへ接続される移動端末の台数は急激に増加した。ウイルスや悪意ある攻撃といった脅威も爆発的に広まっている」。また、画像や音声といったリッチなコンテンツがインターネット上で共有されるケースが増えている影響で、トラフィック管理やストレージ容量といった課題も多いという。
これらの状況からカーン氏は、「インターネットが“あると便利”から“必要不可欠”な存在になった」と解説した。さらに、情報の収集をインターネットを依存している傾向が顕著だと指摘した上で、「(将来のインターネット像である)“Internet 3.0”では、あらゆる場所からインターネットへアクセスできる環境が必要だ」と強調する。
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インターネットの発展とともに、課題も増えていった
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Internet 3.0時代にはセキュリティ、可用性、品質が重要に
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● WiMAX、ネットと実社会の結合がカギに
ここからカーン氏は、新たなインターネット時代に向けてIntelが取り組む各種の事例を紹介した。その1つ目に挙げたのがWiMAXだ。Wi-Fiよりも広範な、都市レベルの無線アクセスを実現する技術として期待されており、カーン氏は「Intelは数年来、WiMAXの開発に取り組んでいるが、2005年の段階で20以上のサービスが世界で展開するまでになった」と説明した。
日本国内でもWiMAXの本格導入をにらんだ動きは始まっており、KDDIやNTTドコモなど大手通信会社による実証実験が開始されている。「総務省もまた、2.5GHz帯を無線ブロードバンド・アクセス・システムに割り当てる方針を示していることから、サービスの実現に向けて着実な歩みが見られる」とカーン氏は言う。
そしてカーン氏が、Internet 3.0の要素としてもう1つ解説したのが、インターネットと実社会の結合だ。「カメラやセンサーなどがインターネットに接続され始めている」と話すカーン氏は、「自分のいる場所や環境に応じてコンテンツが変動するとなれば、それは大きな変化だ」とコメント。ユーザーの位置情報を判別する機能の登場を待望しているという。
カーン氏は、位置情報機能をさまざまな分野への応用が可能な中核技術であるとコメント。「渋滞情報を表示するWebサイトはすでにあるが、これを発展させ、『自分に影響のある渋滞か』を判別させることも可能だ」と期待を寄せる。
無線ネットワークを利用した位置情報の把握に向けて、Intelもすでに行動を起こしている。米国のシアトル市では、域内に配置した無線LAN基地局を使ってユーザーの位置情報を検索する実験が始まっているという。GPSでは測位不能な屋内、ビルの谷間などでも把握が可能としている。将来的には、移動方向なども測定できるとカーン氏は解説する。
また、セキュリティの確保も大きな課題だ。カーン氏は「ネットワーク上の脅威が増え続ければ、インターネットは衰退するとさえ言われている」と説明。ネットワーク上の脅威も変貌しつつあり、一般的なウイルスに加えてスパイウェアといった潜伏性の強い脅威に対しても警戒が必要であると話した。
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インターネットと実社会の結合関係が強まるという
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無線による位置情報機能の実験概要
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● Internet 3.0では「すべてが変わる」
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インターネットが新たな時代に入っていることを強調した
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Internet 3.0時代は、一般消費者にどのような影響を与えるのだろうか。カーン氏は「すべてが変わる」と強調する。「ビジネスはもちろん、娯楽、教育などあらゆる分野が大きく変化するだろう」。
変化が特に注目されるのは、医療分野だ。米国での統計調査によると、ネットワーク化が進んだ一部の医療機関は、一般的な施設よりリスク調整死亡率などの評価指標で好成績を修めていたという。カーン氏は「医療機関はネットワークテクノロジー導入が始まったばかりの世界だが、すでに成果を上げつつある」と期待を寄せる。
カーン氏は講演終盤、「生まれつつある新技術を、科学目的だけでなく、いかに私たちの生活に活かしていくかが重要」とコメント。そして聴講者に対し「皆さんはインターネットの創成期に居合わせた喜びはを十分楽しんだことだろう。だがそれは終わり、また新しい体験が待っている。準備はできていますか」と問いかけ、我々自身がInternet 3.0へ備える必要性を示し、講演を締めくくった。
関連情報
■URL
Interop Tokyo 2006
http://www.interop.jp/
インテル
http://www.intel.co.jp/
( 森田秀一 )
2006/06/09 20:10
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