WIRELESS JAPAN 2006で「次世代移動通信世界会議」と題した基調講演が20日に開催された。その中で、米Atheros Communicationsで戦略マーケティング担当ディレクタを務めるマーク・ハン氏からIEEE 802.11nの標準化動向に関する講演が行なわれた。
● Atherosハン氏「IEEE 802.11nはデジタルホームを実現するための技術」
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Atherosのマーク・ハン氏
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マーク・ハン氏は冒頭、「IEEE 802.11nはデジタルホームを実現するための技術」と述べ、「インターネット接続やプリンタ共有程度であれば、それほど帯域は必要なく、現行の無線LAN規格でも対応できた。しかし、写真や音楽、映像の視聴をするとなると無線LANに求められる帯域が高まってくる」とその理由を説明。「VoIPにおいては帯域は問題ないが、通話時のリアルタイム性が求められるだろう」と付け加えた。
また、「デジタル家電やモバイル機器、パソコンなど機器によって、セキュリティやQoS、消費電力性など求められる要件が異なっている」と語る同氏は、IEEE 802.11nの特徴を「スループット」「通信範囲」「省電力性」の3つに分けて説明した。
このうち、スループットに関しては「これまでのIEEE 802.11aやIEEE 802.11gでは最大で54Mbps、実測値で20~24Mbps程度しか速度が出なかった」と前置きした上で、「IEEE 802.11nでは物理レイヤに改良を加えたことで、300Mbpsモードの場合で、150Mbpsを上回る速度も実現可能になる」と語った。
省電力性に関しては、IEEE 802.11nを利用する機器のうち、「特にモバイル機器で電力消費の問題が重要視されている」とコメント。そのため、「パケットが発生していない場合に消費電力を低減させるなどの技術が盛り込まれている」とした。
IEEE 802.11nの標準化動向についてハン氏は、「現在は5月に否決されたドラフト 1.0に寄せられたコメントを調整しているところだ」と語る。そして、「2006年1月には安定したドラフト案がスポンサーバレットに提出される見込みで、2007年の終わりには最終案が出されるだろう」とした上で、「1月に承認されたドラフトにもとづいて、Wi-Fi Allianceで相互接続性の認証が行なわれる」との見通しを示した。ただし、これらのスケジュールや予定であり、「最終的な規格策定まで、さらに時間が要する場合もある」と付け加えた。
一方、2003年9月にタスクグループが結成されてから、IEEE 802.11nのドラフト案が提出されるまで時間を要した理由としてハン氏は、「無線LANが成功したことが1つの要因だ」と指摘する。同氏によれば、「さまざまな機器やアプリケーションが無線LANに対応したことで、IEEE 802.11nに対する要求が多様かしたのが原因」であり、「標準化のプロセスにたどり着くまで意見が多岐に渡ったためだ」と語った。
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無線LANを利用したデジタルホームのイメージ図
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ネットワークで配信するコンテンツへの無線LAN規格の対応状況
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● 11nの成功は相互接続性や既存無線LAN規格との混在環境での動作保証が重要に
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IEEE 802.11nの標準化に向けた今後のスケジュール見通し
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ハン氏は、IEEE 802.11nが標準化され、市場で成功するための条件に関して「他社製品との相互接続性に加えて、現行の無線LAN規格であるIEEE 802.11a/b/gとの互換性や混在環境での動作を保証する必要がある」と述べる。「そうすることでユーザーは市場にあるIEEE 802.11nに対応する好きな製品を選択できるようになり、ベンダー側でも積極的にコストを下げて、市場の要求に応えられるよう努力していくだろう」とした。
相互接続性についてハン氏は、「ドラフト 1.0に対応した製品は、他社製品との相互接続がほとんどなく、全体的に見ても期待を満たす評価はなかった」というEETIMESのレビューを紹介。「このレビュー以降、無線LANチップベンダー各社はIEEE 802.11nのドラフト 1.0製品で確認できた不備な点を再検討しはじめた」と語った。その例として同氏は、同社の無線LANソリューション「XSPAN」とBroadcomの「Intensi-fi」における相互接続性や100Mbps以上の伝送速度確認などの取り組みを紹介した。
現行の無線LAN規格との相互接続性に関しては、「当社ではSuper Gをはじめとした無線LAN高速化技術で蓄積できたノウハウを持っている」と語る。「IEEE 802.11nではこれら蓄積した技術を前進させる」とし、より高速な無線LAN通信が可能な40MHz帯を動作させる際には、「まず20MHz帯で動作をさせ、既存の無線LANネットワークがなかった場合にのみ、40MHz帯で動作させるなどの対処を行なっている」と語った。
ハン氏はまた、「IEEE 802.11nはシングル/デュアルモードの選択や、40MHz帯の動作サポートの有無など、既存無線LAN規格と比較してオプションが多数ある」とコメント。「こうしたオプションの選択によって、他社との差別化が可能になる」と語り、「パソコンやデジタル家電、携帯端末といった利用する機器によって、通信速度や通信距離、消費電力など選択するオプションが異なってくるだろう」と付け加えた。
その上で同社がリリースするXSPANシリーズに関しては、「IEEE 802.11nが持つすべての特徴を網羅している」と発言。「将来的には他社との相互接続性や、複数あるオプション要件も内包させる考えで、これによってパソコン、デジタル家電、携帯端末の3市場に対応できる」と今後の製品展開を示した。また、XSPANでは3本のアンテナで送受信を行なう「Signal-Sustain Technology(SST)」を採用しており、「2×2で構成した製品と比較して、距離によってはスループットが5割程度高くなっている」とした。
最後にハン氏は、「デジタルコンテンツの浸透によって、IEEE 802.11nに求められる要件は非常に多くなり、当初の議論は困難を極めた」と標準化作業を振り返り、「Wi-Fi Allianceが積極的に動いたことなどにより、この1年で大きな進捗があった」と語った。そして、「IEEE 802.11nの製品が市場に登場する際には標準規格に準拠していくことで、ユーザーが期待する次世代無線LANを提供することが可能になる」と強調した。
関連情報
■URL
WIRELESS JAPAN 2006
http://www.secretariat.ne.jp/wj2006/
Atheros Communications
http://www.atheros.com/
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( 村松健至 )
2006/07/20 20:12
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