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国際電気通信連合(ITU)事務総局長の内海善雄氏
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千葉県の幕張メッセで開催中のCEATEC JAPAN 2006で3日、国際電気通信連合(ITU)事務総局長の内海善雄氏によるキーノートスピーチが行なわれた。ITUは電気通信・放送分野を担当する国連の専門機関で、内海氏は1999年からITUの事務総長を務めている。講演では、ITUの本部があるジュネーブに滞在する内海氏から見た、日本の情報通信産業に対する期待が語られた。
内海氏は、19世紀に国際間の電報のやり取りに関する取り決めを行なう場として「万国電信連合」が発足したことに始まるITUの歴史を紹介し、ITUではこれまで電話や電波に関する国際ルールの策定を進め、現在ではインターネットに関する標準化作業が中心となっていると説明。「みなさんはインターネットというとICANNやISOCでやっていると思っているかも知れないが、実はITUでもかなりの部分の作業を行なっている」と語った。
また、内海氏はITUの本部があるジュネーブから見た日本の印象として、「20年ぐらい前には、日本が勝つことに対して強い反対の声、『日本バッシング』があった。それからしばらくして日本の経済力が弱ってくると『日本パッシング』、相手にしなくてもいいという風潮になった。そして現在では『日本ナッシング』。国際社会において日本は存在感が無い状況」と語り、国際社会の中で日本の存在が希薄になっていると訴える。
内海氏は情報通信分野でも日本企業の存在感は薄いとして、ITUが開催する国際イベント「ITU TELECOM」にも日本企業の出展がほとんど無いと指摘する。日本企業には技術があり、信頼され、期待されているにも関わらず海外に進出できない原因は、「日本の国内市場規模がそれなりにあるために、世界に展開しようというマインドが基本的にない」ことと、「世界の潮流を見ず、日本独自の規格を推し進めた」ことにあると分析。携帯電話でも日本の技術がトップだったが、日本だけの規格を作った結果として世界市場からは孤立したと語った。
内海氏は通信分野の国際規格について、「かつては独自の規格でも良かった。それは、国ごとに市場が異なっていたから。しかし、現在では世界全体が1つの市場となっており、独自の規格では通用しない」と訴える。日本企業からは「日本の規格を世界標準にするにはどうすればいいか」という質問を受けることも多いが、「そうした考え自体が誤り。共同開発、世界の人と一緒に開発していかなければ通用しない」として、日本企業やそのトップに対して意識変革を呼びかけた。一方で、「日本の良い所は長期戦略と組織力。目先のことしか見られない国が多い中で、日本は長期的に物事を考えることができる。こうしたいい面は失ってはならない」として、通信事業分野でも日本企業は十分に活躍できるはずとの期待を示した。
関連情報
■URL
CEATEC JAPAN 2006
http://www.ceatec.com/
ITU
http://www.itu.int/
( 三柳英樹 )
2006/10/04 11:19
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