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展示会場では多数の企業や大学が出展
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財団法人日本地図センターは10月26日・27日に、東京都立産業貿易センターで「デジタルマップフェア2006」を開催した。同イベントは1994年に「数値地図フェア」として開始されて、1999年から現在の名称へと変わり、今年で8回目となる。
展示会には、デジタル地図関連製品を扱う企業50社と大学6校が出展した。さらに、国土地理院による相談コーナーや商談コーナーが設置されたほか、地図関連サービスを提供している企業によるベンダーフォーラムも開かれた。
● 位置情報付き写真を撮影してマッピングできるシステム、リコーらが共同開発
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リコーなど3社共同で開発された位置情報付き写真システム
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デジタルマップフェア2006に出展したのは、地図データベースやGIS(地理情報サービス)のエンジン、地図システムの開発キット、測量用GPS機器などの業務用製品を提供する企業がほとんどだ。ゼンリンやインクリメントP、昭文社などコンシューマ向け地図ソフトでおなじみの企業も見られたが、いずれもGISアプリケーションの構築ツールやASPサービス、開発キットなど企業や官公庁向けの製品をアピールしていた。
ただ、リコーとソキア、ターニングポイントの3社の共同開発による位置情報付き写真を撮れるデジタルカメラシステムなど、コンシューマにも魅力ある製品もいくつか見られた。リコーのデジタルカメラ「Caplio 500SE」と、Bluetooth対応のGPS機器を連携させて使うもので、Exif画像のダイレクトマッピングを実現している。
また、「Google Earth」に航空写真を提供しているデジタル・アース・テクノロジーも出展し、航空写真の高精細オルソ画像(もともとは中心投影である航空写真画像を、地図と同じ歪みのない正射投影画像に変換したもの)を紹介していた。同社はベンダーフォーラムでも講演し、代表取締役の森一夫氏は「航空写真というと以前は記念に撮るものでしかなかったが、今はインターネットの普及などで環境が変わり、さまざまな使い方ができるようになった。今後は衛星写真や地上写真など他の画像と組み合わせたりと、新たな可能性を追求していきたい」と語った。
他には、地価情報のデータベースソフトや、フルカラー3Dプリンタなどの業務用機器の展示のほか、周囲映像を3DCG化するシステムなど、3D関連製品の紹介が目立った。2次元から3次元へと移り変わりつつある地図情報システムの現状を反映した展示会だったと言える。
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デジタル・アース・テクノロジー代表取締役の森一夫氏
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周囲映像を3DCG化するシステムを紹介していた岩根研究所のブース
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● 世界のデファクトスタンダードを目指す~ナビタイムジャパン
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ナビタイムジャパン代表取締役の大西啓介氏
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ベンダーフォーラムでは、前述したデジタル・アース・テクノロジーのほか、ナビタイムジャパンの代表取締役である大西啓介氏が、「位置情報ポータルサイト『NAVITIME』戦略と可能性」と題して講演を行なった。
大西氏まず、同社の経路探索技術の特徴や、地図データの量をコンパクトにする独自フォーマットを紹介しながら、電車・飛行機・クルマ・バス・徒歩すべての移動手段を経路探索できる同社のナビゲーションエンジンの利点をアピールした。これらの技術を生かして、Webサービスやカーナビ、GIS、時刻表検索エンジンなどの事業者にライセンス提供を行なったり、自らナビゲーションサービスを立ち上げたり、国内・海外キャリア向けのサービスや位置情報ポータル事業を展開したりと、これまで取り組んできた事業を振り返った。
その後、同社が提供しているサービスの中でも代表的な「EZナビウォーク」について詳しく紹介し、モバイルナビゲーション市場の現状について解説。今後の展望として、「ナビゲーションエンジンで世界のデファクトスタンダードを目指すとともに、スポット情報を充実させてユーザーの好みに合わせたサイトを提供したり、海外旅行の計画や準備なども可能にしていきたい」と抱負を語った。
● 政府のGISへの取り組みが新法案として結実間近~国土地理院
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国土地理院企画部・地理情報システム推進室長の久保紀重氏
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ベンダーフォーラムでもう1つ注目されたのが、国土地理院の特別講演だ。国土地理院企画部・地理情報システム推進室長の久保紀重氏が、「地理空間情報の活用推進に関わる国土地理院の取組み」と題して講演した。
久保氏は最初に、今までの政府のGISに対する取り組みについて解説。阪神大震災をきっかけに「地理情報システム関係省庁連絡会議」が設置されてから、整備計画の作成、技術開発などを経て、「GISアクションプログラム」の策定などによって普及活動が進められてきた経緯を説明した。「今後も地理情報をインターネットで提供したり、GISを使った行政サービスの提供を推進していく方針」と語った。
そのための新たな取り組みとして、現在継続審議中の「地理空間情報活用推進基本法案」を紹介した。同法案は、個別に推進されているGISシステムの連携や統合を図って効率のよい地図システムを提供するための法案で、GPSの利用による新たな利便性も考えられており、介護や防災などに役立てられるような環境の整備を目指しているという。「今まで行なってきたGISへの取り組みが、この新法案で実を結ぼうとしている」と久保氏は感慨を語った。今後の動きとして、国会で法案が成立すればその後3カ月以内に基本法が施行されて、基本計画が策定されるとしている。
最後に、国土地理院が推進している「電子国土」のWebシステムについても紹介された。同システムは、防災や観光情報などさまざまな用途に使われている地図システム。今後の展開としては、さらなる普及・促進を図って2008年度末までに構築サイト数2,000を目指すとともに、地図の迅速な更新や大縮尺地図データの活用、機能の充実、携帯電話から利用可能なシステムの構築などを目指すとしている。また、「現在はActiveXで提供されているが、間もなくActiveXを使わずに閲覧できる機能も追加する予定」と語った。
関連情報
■URL
デジタルマップフェア2006
http://www.jmc.or.jp/event/dmap06/index.html
Caplio 500SE
http://www.ricoh.co.jp/dc/caplio/500se/
デジタル・アース・テクノロジー
http://www.det.co.jp/
岩根研究所
http://www.iwane.com/
NAVITIME
http://www.navitime.co.jp/
電子国土ポータル
http://cyberjapan.jp/
( 碓氷 貫 )
2006/11/01 14:38
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