10月16日・17日に開催された「g-Contents WORLD 2006」で、ヤフー地域サービス事業部長の志立正嗣氏が講演し、Yahoo! JAPANが目指す地域情報サービスの方向性を語った。
● 地域生活のサポートは、Yahoo! JAPANの利用時間拡大に必須
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ヤフー地域サービス事業部長の志立正嗣氏
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ヤフーは、ユーザーのYahoo! JAPANへの接触時間拡大を目標に掲げており、自宅や職場のPCに加えて、外出先でも携帯電話などから利用できるようにするなど、端末のマルチデバイス対応を進めている。これにより「朝起きてから、移動中も、仕事中もYahoo! JAPANを利用していただく」ことが理想だ。
ところが「会社で仕事をしている以外は、(ユーザーは)ほぼ地域で生活している。地域生活に根ざしているユーザーをサポートしなければ、インターネットのバーチャルの中だけで接触時間を増やそうとすると限界がある」と説明する。
志立氏が率いる「地域サービス事業部」は、こういった必要性から4月に設立された部門で、「Yahoo!地図情報」「Yahoo!道路交通情報」「Yahoo!路線情報」「Yahoo!電話帳」「Yahoo!グルメ」「Yahoo!不動産」「Yahoo!リクナビ」など、地域に関連するサービスを担当している。「バーチャルとリアルを融合して、地域生活に役立つサービスを提供していくこと」が目標だ。
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マルチデバイス対応による、ヤフーの利用時間拡大施策
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地域サービス事業部が担当している各種サービス
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● 地域情報に関わる各種サービスの連携と情報の網羅性がポイント
志立氏によると、ヤフーにとっての地域情報サービスは、大きく分けて2つの側面から成り立っているという。1つは、地図情報や道路交通情報、路線情報など「人が移動する際のツール類」、もう1つが、グルメや不動産、リクナビなど「バーティカルと言ったらいいのかもしれないが、ユーザーが目的の情報を調べると、その情報自身が地域と結び付いている性質のサービス」である。
しかし、今はこれらのサービスが独立して提供されているため、「グルメの情報はグルメのページで探してください、そのお店に自分の会社からどう行けばいいのかは路線情報で検索してください、駅を降りてからそのお店までは地図情報で検索してください」という状態になっている。
そこで、より地域生活に役立つサービスを提供するためには、グルメなどのバーティカルなサービスと地図情報などのツール類を融合させ、関連するサービスをまとめて提供するという連携が重要になる。
さらに、地域の施設や拠点情報の網羅性を向上させることも、地域情報サービスのポイントだという。
Yahoo! JAPANでは、複数のコンテンツプロバイダーからさまざまな地域情報の提供を受け、それらを組み合わせてサービスを提供しているが、「全部集めてみても、まだまだYahoo! JAPAN上にきちんとした拠点情報は載っていない。多分、網羅率で言うと半分ぐらいしかない。それ以外は、情報がインターネット化されていないということになる」。
例えば、電話帳のデータベースには店舗の情報が約1,000万件あるほか、グルメではプロバイダー4社の情報を掲載している。しかし、それらで重複している情報は半分程度だったことから、「世の中に、網羅的に地点情報を集めているところは存在しないのではないか」として、施設情報の統合されたプラットフォームをヤフーで構築しすることにした。
具体的には、グルメや不動産などの情報はすべて緯度・経度情報を持っているため、地図上にプロットできる。こうした拠点情報を1つのプラットフォームに入れると、いろいろな活動によって集まった情報が統合できる。そうなれば、「別々のサービスにアクセスしなくても、すべてのサービスの拠点情報が同じようにシームレスに使える」と志立氏は説明する。
このような地図と他の情報との連携の方向性を示しているのが、ベータ版として提供中の「Yahoo!地図情報 - スクロール地図」だ。
ここで提供される飲食店の情報は、グルメに掲載されている情報もあれば、電話帳に載っている情報もあり、それらをマージしてマッピングしている。地図上の飲食店のアイコンをマウスオーバーすると、住所や電話番号、口コミによるレーティングなどがポップアップウィンドウで表示。さらに、そこからはグルメの詳細情報ページにリンクしており、地図からグルメの情報をシームレスに参照できる。さらに、最寄り駅の出口からその店舗までのルート検索もワンクリックで実行でき、地図上にルートが示される仕組みだ。
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さまざまなソースから拠点情報を集め、統合されたプラットフォームを構築
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ベータ版として提供中の「Yahoo!地図情報 - スクロール地図」での連携例
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● ユーザーの位置情報を活用して、より関連性の高い情報を提供
ユーザーの位置情報を活用することでも、「地域の関連性」を向上させていきたいという。位置情報としては、携帯電話のGPSだけでなく、ユーザーがYahoo! JAPAN IDに登録している住所から居住エリアを識別する方法や、アクセス元のIPアドレスからアクセスしている現在地を識別する方法もある。さらに、ユーザーが閲覧しているページや検索しているキーワードから、興味を持っている地域を識別できる。
このように、ユーザーの現在地や目的地を割り出すにも、さまざまなパラメータが設定可能であり、「これらの情報を組み合わせて、より関連性の高い情報を出していくことを考えている。特にGPS付き携帯電話を使えば『今、ここで』必要としている情報を提供できる」と述べる。
志立氏はこのほか、ヤフー子会社のアルプス社が「ALPSLAB」で実験的に提供している「ALPSLAB clip!」を紹介。これは、指定した場所の地図をユーザーのブログに貼り付けられる機能だが、「近々、Yahoo!グルメの中でも正式にリリースし、飲食店情報をユーザーのブログに貼れて、レーティング情報なども見られるようになる」と述べた(なお、この機能は11月1日より、Yahoo!グルメのブログパーツとして提供が開始された)。
講演の最後に志立氏は「地域情報というものを広く、オープンに提供していきたい。ユーザーのために、いろいろな情報をつなげて提供していきたい」と語った。
関連情報
■URL
Yahoo!地図情報
http://map.yahoo.co.jp/
Yahoo!地図情報 - スクロール地図(ベータ版)
http://map.yahoo.co.jp/beta/
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( 永沢 茂 )
2006/11/14 18:18
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