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日本の全道路を157万km走った軌跡で道路地図を作成~キャンバスマップル


 10月16日・17日に開催された「g-Contents WORLD 2006」の講演で、キャンバスマップル執行役員事業企画室長の亀井毅氏が講演し、同社が構築を進めている1/500縮尺の高精度3次元道路ネットワークについて紹介した。キャンバスマップルは、次世代ナビゲーション用電子地図ソフトの開発・提供のために、昭文社とモバイルマッピングが50%ずつ出資して9月に設立された新会社だ。


高精度GPSやカメラを搭載した軽自動車で全国津々浦々を走行

キャンバスマップル執行役員事業企画室長の亀井毅氏
 道路ネットワークとは、全国の道路の骨格を表わしたデータと言うことができる。カーナビなどで必要不可欠なものだが、これが従来は「道路は地図から作る」という発想で制作されていたという。具体的には、自治体から発表されている1/2,500縮尺の都市計画図などをもとに、街区以外の空白部分を道路とみなし、そこに中心線を引いて道路ネットワークとすることで高い精度を出すのが従来の一般的な方法だった。

 これに対してキャンバスマップルでは、逆の「地図は道路から作る」という発想で道路ネットワークを制作する。すなわち、高精度のXYZ座標を計測できるGPSを軽自動車に搭載し、全国津々浦々をくまなく走ることによって、道路の3次元座標の点群データを現場から取得していく手法だ。これにより、路面の起伏も忠実な道路ネットワークが整備・構築できるとしている。

 亀井氏によると、現在の最高精度のGPSで座標データを取得すると、XY軸(水平)方向では10cm、Z軸(垂直)方向では20cmの精度と言われており、実際にデータを取得してみた結果からもほぼそのようなデータが得られたという。これにより、「地図の縮尺に換算すると、1/500以上の高い精度が実現できるのではないか」と述べる。

 調査では、実際に走行しながら1mごとに緯度・経度・高さのデータを取得。さらに調査車両にはカメラも搭載しており、日中の走行時には5mごとに周辺画像も撮影し、座標の点群データと5mおきにリンクさせている。これらの画像からは、基本道路については交差点名、信号機の有無、方面看板、停止線、レーン情報、右左折禁止や制限速度などの制御情報、細街路では一方通行や進入禁止、制限速度などの規制情報、道路の幅員、スクールゾーン、段差やガードレールの有無といった路肩情報など、さまざまな情報を取得できるのだという。


キャンバスマップルが「道路から地図を作る」仕組み。走行した軌跡が道路ネットワークになる 走行調査時に撮影した画像からは、交通規制などをはじめとした各種情報が得られる

地図の更新も効率的、新しい道路が開通した日にデータ取得も可能

調査用の軽自動車には、GPSのほか、CCDカメラや全方位カメラ、PCなどの機器を搭載している

行き止まりの道路(ヒゲ状になっている部分)まで網羅することで、家の玄関を出るところからの「ドア・ツー・ドアのナビゲーション」が実現するという
 キャンバスマップルでは現在、40台ほどの車両を用いて調査を行なっており、すでに東京都内の10区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区、文京区、中野区、豊島区、練馬区、目黒区)は調査が終わっているという。全国の幹線道路などの基本道路は80万km(往復換算)、細街路は77万kmと言われており、2年数カ月ですべての道路の点群データの取得が終わる計算になる。

 この方法では、走行するだけでほぼ自動的に座標データが取得できるため、新しい道路が開通した際などの差分データの整備も効率的に行なえる。モバイルマッピングでは各都道府県の測量事務所などと契約して走行調査を委託しており、道路が開通したその日に計測車両を配備して走行調査を行なうことが可能だという。そうやって取得したデータをモバイルマッピングに集約してチェックし、ネットワーク化の作業を行なった後、キャンバスマップルでデータベース化する。今後は、この工程を圧縮することで「きわめてタイムリーに道路ネットワークを構築できる」と述べる。

 走行した軌跡によって道路ネットワークを構築しているこのやり方では、既存のルート地図には道路が存在するものの、実際には軌跡データが取得できな部分も出てくる。これは、例えば私有地で入れない、柵があって歩行者しか通れないなど「実際に現地を走ってみないとわからないとことが多い」からだ。しかし、こういった理由も、車両で撮影した画像をチェックすることですぐに判明する。

 一方で、軌跡データには「より細かいヒゲのようなネットワーク」が存在するが、キャンバスマップルの走行調査は「基本的に走れる部分は走って行き、それ以上進めない行き止まりまで走って、そこまでの点群データを取得する仕様」であるためだ。行き止まりデータをたくさん取得することで、究極のドア・ツー・ドアのナビゲーションも実現できるという。


高精度3次元道路ネットワークによって、交通弱者向けのルート検索も

高齢者・交通弱者向けのルート検索の例

ヘッドアップディスプレイで表示する「ビューナビ」のイメージ
 亀井氏は、高精度3次元ネットワークを整備・構築することは、いわば「全道路に見えないレールを敷設することになる」と表現。この見えないレールを3次元ツールで表示してみると、「現実世界の道路は想像以上に複雑な形状をしている」と指摘する。

 3次元道路ネットワークのZ軸(高さ)のデータを利用すれば、従来の平面の地図データでは提供できないような、例えば、高齢者・交通弱者向けのルート検索が考えられるという。通常のルート検索では距離が短いルートが選ばれるが、車いすの利用者向けに勾配を考慮し、多少回り道になっても急坂を迂回するルートの提示などが可能になるわけだ。

 また、3次元の起伏データがあれば、急坂とカーブが続く峠道などで、あらかじめ推奨速度を提示したり、エンジンブレーキを推奨するなど、細かいコーション情報の提供も可能になると説明した。

 さらに、実際に走行しているクルマからの景色を撮影した映像にナビゲーションを重ね合わせ、ヘッドアップディスプレイで表示する「ビューナビ」の実現にも、3次元道路ネットワークの欠かせないという。2次元道路ネットワークでは路面の起伏に対応できず、坂道などではナビゲーション表示が路面に追従できず、上下にずれてしまうなどうまく重ねて表示することができないのだという。先述の「見えないレール」によって、全国どこの交差点でも、ターン・バイ・ターンの正確な誘導が可能にあるとした。


関連情報

URL
  キャンバスマップル設立のニュースリリース(PDF)
  http://www.mobilemapping.jp/pdf/Work.pdf
  昭文社
  http://www.mapple.co.jp/
  モバイルマッピング
  http://www.mobilemapping.jp/


( 永沢 茂 )
2006/11/14 20:20

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