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「放送とインターネット」をとりまくデジタルメディアの流れ、古川享氏講演


 パシフィコ横浜で開催中の「Internet Week 2006」で5日、JPNICの主催によるカンファレンス「IP Meeting 2006」が行なわれた。午後のセッションでは、マイクロソフトを退社後、現在は慶應義塾大学の教授を務める古川享氏が「放送とインターネット」と題した講演を行なった。


YouTubeは大きなうねりだが、デジタルメディアというもっと大きな流れの一面

古川享氏
 古川氏は冒頭、「放送とインターネットの融合と言うと、テレビ放送がネット経由で届くことだと定義付ける人もいる。あるいは、オンデマンド放送やデータ放送、蓄積型放送、もっと先鋭的な人になるとYouTubeこそが本命だと言うかもしれない」と語り、古川氏が先日、中高生を対象に行なった講演でのエピソードを紹介。「中高生100人に、BS放送を見ている人はと尋ねたら3人しか手が上がらなかった。ワンセグ放送はと聞いたら2人だった。ではYouTubeはというと、全員の手が上がった」として、現在の中高生の間などでも、YouTubeは確かに大きなうねりとなっていると感想を述べた。

 ただし、「それをもって(YouTubeが)未来のインターネットの放送の姿と定義していいのだろうか」と疑問を呈し、YouTubeなどの現象は、もっと大きな流れのほんの一面でしかないではないのではないかと指摘。講演では放送とインターネットという括りではなく、「デジタルメディアそのものがどのような発展を遂げるのかという視点の中から、インターネットの果たす役割であるとか、新しいサービスにはどのようなものがあるのかという話を進めていきたい」として、デジタルメディアの現状や課題、古川氏が注目する新たなサービスや技術の紹介などが行なわれた。


デジタルメディアのためのデバイスやインフラ、技術は整っている

 古川氏はデジタルメディアの特質として、どのような画面や機器でも表示・再生が可能であって、アナログ時代と比べて管理・編集が容易であることや、共有が容易で著作権管理にも対応し、次世代のビジネスモデルを構築可能となっていることを挙げる。その上で、デジタルメディアを支える要素としては、ユーザーから見た場合には、セットトップボックス(STB)やテレビ、AV機器、カーナビ、携帯プレーヤーといった各種のデバイスがあり、それを支えるテクノロジーとしてのインフラが整ってきていることを挙げ、これらの機器やインフラ全体がデジタルメディアのサービスやアプリケーションを支える基盤となっているとした。

 一方、コンテンツの制作者やメディアの側から見た場合にも、コンテンツの所有者から制作、編集、著作権管理、広告、配信といった一連の流れがデジタル化の恩恵を受けており、「こうしたコンテンツの所有者から視聴者までの流れの中に、新しいビジネスが生まれてくる。その中では、新しい専門化、連携、アライアンスが必要になってくる。そうしたことから、デジタルメディアにおける新しい標準化、グローバル化のスタイルも生まれてくるだろう」と語った。

 技術面では、家庭内のAV機器をネットワークにより接続する「DLNA」や、インテルが提唱する「ViiV」、マイクロソフトがCATV向けに提供する「MSTV」技術などを挙げた。また、通信事業者の側でも放送へのアプローチが積極的になっているとして、BellSouthやVerisonといった米国の通信会社は「地域で2番目の放送事業者になる」と宣言していると説明。CATVや衛星放送の事業者に代わる存在として、通信会社は放送事業者としての地位も狙っているとした。

 こうしたデジタルメディアを家庭のテレビに映し出すSTBの動向としては、Edyによる決済が可能なSo-netが開発したVODシステムや、米Apple Computerが発売を予定している「iTV」、PS3を利用したHD映像のコンテンツ配信などを挙げ、技術的にも十分に進んでいると説明。また、六本木ヒルズでは大型ビジョンからエレベーター内の小さなモニターまで、300台以上の端末に対してIPによる映像配信が行なわれていると紹介。「この場合には、閉じられたネットワーク内なので、著作権保護の問題などが少ないこともあるが、逆に言えばそういう問題さえクリアになれば、IPによる映像配信は技術的にはかなりのところまで来ている」とした。


IPマルチキャストの著作権上の扱いなど、課題の解決が必要

 一方でデジタルメディアは、地上デジタル放送への移行による2011年のアナログ停波やそれに伴う費用の問題、マスコミ集中排除原則の緩和、IPマルチキャストの著作権上の扱い、コピーワンスの問題など様々な課題を抱えていると指摘。また、IPマルチキャストによる再送信については、「単に再送信するだけでなく、せっかくデジタルの放送なのだから、60分の番組を圧縮して6分間で10回送信するといったことや、ポータブルプレーヤーで再生できるフォーマットのコンテンツを同時に送信するといったこともできる。あるいは、コマーシャルが飛ばされるのが問題であるならば、その時間は早送りなどができないようにするなど、いくらでもいろんなことが考えられるが、そういうことを一切禁止しているのが今の方式」と疑問を投げかけた。

 古川氏はこうした諸問題について、「これから先のビジネスの新しいスタイルを確立していくためには、こうした問題を解決していかなければならない。ネットワークを使った新しい技術は次々に生まれており、これらをなんとかして技術としてもビジネスとしても花を咲かせていきたい」と語り、講演を締めくくった。


関連情報

URL
  Internet Week 2006
  http://internetweek.jp/


( 三柳英樹 )
2006/12/05 21:22

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