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矢印部分が衛星の方向。このすぐ前に人が立つと。衛星を見失ってしまうため、電波の受信状態のよい方向を探すための小刻みな回転が止まる
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マイクロバスによるデモでは、コストの関係から、衛星回線の帯域は3Mbpsにとどめていた
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「NTT R&Dフォーラム2007」では、新幹線への搭載を目指して開発が進められている衛星追尾アンテナが展示されるとともに、これを屋根に搭載したマイクロバスでの走行デモが行なわれた。
展示されたのは、「モバイルマルチキャスト衛星通信システム」の「超薄型衛星通信用追尾アンテナ装置」。新幹線の車内などでブロードバンド接続サービスを提供するためのもので、Ku帯(12GHz)の500MHz幅の電波を受信でき、30Mbpsの回線速度を実現するという。大きさは幅が129cm、奥行きが135cmだが、高さを9cmに抑えたのが特徴だ。
これまで開発された船舶用や自動車用の衛星追尾アンテナでは、仰角方向を追尾するためにアンテナそのものの角度を物理的に動かしていた。その結果、船舶用で高さ182cm、自動車用でも高さ30cmあり、新幹線に搭載するには走行時に発生する空気の抵抗がネックになっていたという。
今回の超薄型アンテナでは、水平の方位方向は機械的に回転させて追尾する一方で、仰角方向はアンテナ素子によって電子的に追尾(30度~65度)する方式を採用した。アンテナ部分は、約3,000個のアンテナ素子で構成されており、これが円盤状に敷き詰められている。追尾する際は、この円盤が常に小刻みに振動するように回転し、電波の受信状態のよい方向を探す。
NTT R&Dフォーラム2007では、このアンテナを搭載したマイクロバスで、会場となったNTT武蔵野研究開発センタ周辺を走行。車内に設置したPCで動画を受信・再生するデモが行なわれた。
説明員によると、すでにNTTではJRとも研究を進めており、新幹線電気軌道総合試験車「ドクターイエロー」を使って、衛星の電波が受信できる区間のデータも取得しているという。東海道新幹線ではトンネルはそれほど多くないものの、駅の屋根や鉄橋において、電波が遮られる区間が意外にあるという。ただし、これらの区間は調査により判明しているため、例えばトンネルにおいては、山頂などで受信した電波をトンネル内に設置したギャップフィラーで新幹線に向けて再送信する方法で対応できるとしている。
なお、展示の説明パネルでは、インターネットから新幹線車両へ向けた下り回線にこの衛星回線を利用し、車両からインターネットへの上り回線の方は、車両に搭載したダイバーシティアンテナによる地上無線方式で行なうサービスイメージが紹介されている。また、車両内には無線LANのアクセスポイントと、車両内のサーバーも描かれていた。
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「超薄型衛星通信用追尾アンテナ装置」の概要
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「モバイルマルチキャスト衛星通信システム」によるサービスイメージ
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関連情報
■URL
NTT R&Dフォーラム2007
http://www.nttrdforum.jp/info/
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( 永沢 茂 )
2007/02/09 16:23
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