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NHKから見たP2Pの課題や期待など、総務省の作業部会報告


 「Interop Tokyo 2007」で15日、総務省が2006年11月から開催している「P2Pネットワークの在り方に関する作業部会」の出席者によるコンファレンスが行なわれ、作業部会での成果や夏頃の開始を予定している実証実験の概要などが紹介された。


P2Pネットワークの実証実験を夏に開始

作業部会の座長を務める東京大学大学院の浅見徹氏(左)と、総務省データ通信化の大橋秀行氏(右)
 P2Pネットワークの在り方に関する作業部会は、総務省の「ネットワークの中立性に関する懇談会」の部会として開催され、これまでにP2Pネットワークの現状や今後の政策課題などについて議論をしてきた。

 総務省データ通信課の大橋秀行氏は、作業部会での検討を踏まえて2007年夏から開始を予定している「P2Pネットワーク実証実験」の概要を紹介。実証実験では、P2Pネットワークを利用したコンテンツ配信を実際に行なうことで、P2Pネットワークが負荷やコストの軽減につながるのかといった検証や、ビジネスモデルとしての課題の検証を行なう。

 実証実験は、P2Pネットワークを利用した映像配信プラットフォームの検証モデル、全国数カ所に設置する共同コンテンツ配信センターの利用モデル、地方自治体の情報発信にP2Pネットワークを利用するモデルの3種類を実施する。夏頃から実験を開始し、2008年度までを実証期間として見込んでいる。既にコンテンツ提供者との話し合いも進んでおり、実験ネットワークには映画やアニメといったコンテンツを流通させていくほか、教育目的のコンテンツなどの流通を行なっていくという。

 大橋氏は、「日本はブロードバンドの普及は世界のトップクラスだが、利用という面では必ずしも十分ではない」として、P2Pネットワークはその可能性の1つであり、実証実験は「Winnyでイメージが悪化したP2P技術の有効利用のショーケース」であると説明。コンテンツの配信ビジネスを考える上では、P2Pの利用はネットワークの負荷やコストの軽減が期待でき、実証実験を通じて多くのビジネスモデルが生まれることに期待したいとした。


夏から3種類のP2Pネットワーク実証実験を実施する P2Pネットワーク実証実験の概要

放送やモバイルの事業者からもP2Pへの期待

(左から)NHK編集局デジタルサービス部の兄部純一氏、インデックスの寺田眞治氏、東京大学大学院教授の江崎浩氏
 作業部会に参加しているNHK編集局デジタルサービス部の兄部純一氏は、放送局側から見たP2Pの意味と課題について意見を表明した。兄部氏は放送局にとってP2Pは、動画ニーズの増加に伴うサーバー負荷の軽減が期待できると説明。また、災害時の円滑な情報提供や、NHKとしては学校教育放送の補完的な役割にも期待しているとした。

 一方で、こうしたプラスの面を活かすためには、著作権処理の枠組み作りが前提になるとした。兄部氏は、「放送局や権利団体などが共同でYouTubeに違法アップロードの防止を要請したことに対して批判的な意見もあるが、出演者や著作者の権利を守ることは、放送番組に携わる人との信頼関係を維持し、放送コンテンツを制作し続けるための最低の要件」と説明。こうした問題を解決するためには関係者の地道な努力が必要で、そうした活動こそが成果に結びつくのではないかとした。

 インデックスの寺田眞治氏は、モバイルコンテンツ事業者としての立場からモバイルとP2Pの関係について説明。携帯電話のネットワークなどは中央集中型であり、一見するとP2Pとは遠いように思えるが、通信速度の高速化やそれに伴うコンテンツの大容量化、携帯電話以外の機器との連携などを考えると、「モバイルにおけるP2Pの導入は必然であり、正常進化である」とした。

 その上で、携帯電話の世界でも既にPush to talkのようなP2P型のサービスが開始されており、赤外線通信やFeliCa通信などアドホック的な通信の利用や、無線LANが搭載された端末なども出てきており、コンテンツの配信コストやネットワークの効率利用という観点から考えても、モバイルネットワークにおいてもP2P型のサービスが重要になってくるだろうとした。

 東京大学大学院教授の江崎浩氏は、P2Pの現状と今後の方向性について説明。江崎氏は「P2Pの流行には、コピー(複製)のコストと記録・保存のコストという、2つのコストが劇的に低下したという背景がある。情報流通はこの変化を利用しきれていない」として、P2Pの有効利用は今後の重要な課題であるとした。

 現状ではプロバイダーのネットワークなどにおいても、P2Pのトラフィックがかなりの部分を占めているものの、一方ではYouTubeなどの動画トラフィックも急増しており、問題はP2Pと言うよりもコンテンツ配信という点にシフトしているのではないかと説明。また、YouTubeも画質などを考えれば、実際にはコンテンツプロバイダーには脅威ではなく広告としての側面の方が大きいのではないかとした。


P2Pのガイドライン策定、実験によるコスト効果の測定などを進める

 大橋氏は作業部会について、「P2Pは可能性のある技術という点については異論がなく、これを受け入れていくには何が必要なのかという点を議論してきた」と説明。また、ユーザーのPC資源を使って構築するP2Pネットワークに対しては、提供にあたって業者が守るべき「P2Pガイドライン」のようなものも必要になるとして、策定に向けて作業を進めているとした。

 寺田氏は、「コンテンツ配信という点では、モバイルはうまくいっていると言われることが多い。それは閉じたネットワークであるということもあるが、一番大きいのは誰が利用しているかがわかるという認証の問題なのではないかと考えている」とコメント。これに対して江崎氏も、「通信キャリアも個人の認証はきちんとした上で、匿名性は確保してくれる。そうしたモデルが必要になるだろう」とした。

 実証実験については、「P2Pを利用した場合の配信コストは、中継系ネットワークでは低減するかもしれないが、エンドユーザーまでのネットワークは現状でもP2Pによって混雑しているのではないか」という質問に対して、大橋氏は「そうした点も含めて実証するのが目的」と説明。作業部会の報告や実証実験については6月末にも概要が公表される予定で、コンテンツプロバイダーからエンドユーザーまで多くの参加を呼びかけていきたいとした。


関連情報

URL
  Interop Tokyo 2007
  http://interop.jp/
  ネットワークの中立性に関する懇談会
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/network_churitsu/


( 三柳英樹 )
2007/06/15 21:33

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