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通信の秘密に関連する問題、抜本的な法制度改革を


 「Interop Tokyo 2008」において13日、「ネットワーク時代の匿名性の光と影」と題したコンファレンスが開催された。情報通信分野のコンサルタントであり、経済産業省などのプロジェクトなどにも多数参画しているクロサカタツヤ氏、インターネットプロバイダー協会の行政法律部会長であるNTTコミュニケーションズの甲田博正氏、Winny作者弁護団の事務局長を務める弁護士の壇俊光氏によって、インターネットの匿名性と、それに伴う問題について議論が行なわれた。


本当にインターネットは匿名なのか

クロサカタツヤ氏
 一般に、インターネットは匿名性が高いと言われている。その匿名性のために、掲示板サイトや、出会い系サイトなどで、利用者が匿名であることから、さまざまな問題が起きていることも事実である。

 では、実際にインターネットはそれほど匿名性の高い通信手段なのだろうか。この疑問に対してクロサカ氏は、「現状では、物理層を含めた各レイヤーの認証手続きを詐称することは不可能ではない。これらの詐称を組み合わせることで、限りなく匿名に近づくことはできる」と語る。

 しかし一方では、「特に認証を詐称せず普通にインターネットを利用しているのであれば、発信者個人の特定はそれほど難しくない」として、一般に認知されているよりもインターネットの匿名性は高くはないとも述べている。


通信事業者の業務行為は法律で制限されている

通信の秘密に関連する法令
 通信の秘密は、日本国憲法にも定められた国民の権利である。その仲介となる通信事業者がこの権利を侵すことは認められていない。「他人の電話を盗聴する、電話をかけた相手がずっと話中だった場合に電話会社に利用状況を調べてもらう、通信料金請求のために利用状況を調べる、これらの行為はすべて通信の秘密を侵害している」と甲田氏が語るように、じつは通信の秘密は厳格に法律によって守られている。

 実際にインターネットを介した犯罪が明らかになった場合、発信者個人を特定するためには、通信事業者の協力が必要となる。ところが、インターネットの掲示板に書き込んだり、メールを送ったりといった行為はすべて通信であると法律では認識されていることから、通信事業者はその内容に関して関与することは認められていない。

 つまり、日本国憲法第21条「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」や、電気通信事業法4条における「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない」といった法律によって、“正当な理由”が認められない限り、通信事業者はたとえ悪意のある通信とわかっていても、通信に係る情報を開示したり、通信そのものを遮断することはできない。

 通信事業者が情報の開示や通信の遮断を行なうための正当性としては、正当な業務による行為、自己または他人を防衛するための行為、生命、身体、自由、財産に対する危機を避けるためなどの理由が刑法によって規定されている。例えば、DoS攻撃などによって、著しく自分達の業務に支障をきたすと判断された場合に通信を遮断するのは、危機の回避に該当する免責行為ということになる。


通信事業者はどこまで対応しなければならないのか

プロバイダー責任制限法

弁護士の壇俊光氏
 しかし、インターネットの普及に伴い、Webページや電子掲示板などの不特定の者によりアクセスされることが前提となっている通信(特定電気通信)に関しては、新たに特定電気通信法が制定された。この法律によって、特定個人に対する民事上の権利侵害(名誉毀損、プライバシー侵害、著作権侵害、商標権侵害など)があった場合においては、発信者情報の開示を請求したり、情報開示による通信事業者の損害賠償責任を制限することが規定された。これがいわいる“プロバイダー責任制限法”である。

 この法律によって通信事業者は、何ら課の権利侵害の申し立てによって、通信を遮断したり、通信に係る情報を開示することができるようになった。しかし、実際に情報開示を申し立てる側である壇氏は、「通信事業者はなかなか情報開示には応じない」という。

 また、情報開示をする側の通信事業者にとっては、証拠となるログを保全しておかなければならないなどの問題がある。檀氏は「実際に情報開示をしても、時間が足りないことが多い。すでに、ログが消されてしまっていることもある」という。情報開示を受ける側の立場にある甲田氏は、「情報開示に応じるためにはログを残しておく必要がある。しかし、膨大な通信ログを長期間保存しておくことは、特に中小の通信事業者にとっては多大な負担となる」と述べている。

 登壇した3氏は、適切な利用者のセキュリティは守られ、違法な利用者については速やかに情報が開示されるような仕組みを作るためには、これまでのような場あたり的な法整備ではなく、抜本的な法制度改革が必要になるのではないかと述べた。


関連情報

URL
  Interop Tokyo 2008
  http://www.interop.jp/


( 北原静香 )
2008/06/16 13:15

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