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イベントレポート
【 2009/06/12 】
ひろゆき氏&夏野氏が講演「日本のネットは決してダメじゃない」
[18:57]
携帯ゲーム機のような見た目のNGN対応回線品質測定器
[14:28]
ISAO、IPデータキャストを利用したサービスイメージを展示
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【 2009/06/11 】
アナログ停波後の周波数帯域を利用したマルチメディアサービス
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UQ Com田中社長、高速&オープン志向「UQ WiMAX」のメリット語る
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主催者企画コーナーでは「ServersMan@iPhone」のデモも
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国内初のデジタルサイネージ展示会、裸眼で見られる3D映像など
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【 2009/06/10 】
CO2排出量が都内最多の地域、東大工学部のグリーンプロジェクト
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IPv4アドレス枯渇で「Google マップ」が“虫食い”に!?
[19:29]
UQ Com、7月の有料サービス開始に向けて「UQ WiMAX」をアピール
[19:20]
「Interop Tokyo 2009」展示会が開幕、今年はひろゆき氏の講演も
[14:53]

権利者のロビー攻撃を受けない著作権政策、津田大介氏らが議論


 現行の著作権法は、アナログの音楽や絵画などを念頭に置いて作られたものだ。デジタル技術の普及とともに登場した著作物の新たな利用形態が、著作権侵害と解釈されるなどのミスマッチがあると言われている。札幌で開催された「iCommons Summit 2008」で7月31日、「自由文化と著作権政策」と題したシンポジウムが開かれ、社会や技術の変化に合わせた著作権政策の在り方が議論された。


フェアユースのない著作権制度では、権利者側に有利な方向に収める圧力が働く

北海道大学教授の田村善之氏
 米国の著作権法には「フェアユース」という概念がある。無断で著作物を利用しても、公正な利用と判断されれば、著作権侵害にならないというものだ。公正かどうかの判断は、裁判所が行う。

 一方、フェアユースの概念がない日本の著作権法では、権利侵害に当たらない行為を個別に規定している。北海道大学教授でフェアユース採用の重要性を訴えている田村善之氏は、日本の著作権法が形成される過程について、「著作権の保護が高すぎるものになりがち」と問題点を指摘する。

 「個別の制限規定によるルールは、ロビー活動の攻撃目標が明確化するため、権利者側に有利な方向に収めようとする圧力が働く。その結果、できあがった制限規定は、社会全般の厚生から見ると、著作権の保護が高すぎるものになりがちだ。」

 これに対してフェアユースは、権利者側のロビー活動の対象となりにくいことが特徴だという。「フェアユースでおおざっぱな合意を取り付けておけば、権利者側はどうロビー活動して良いかわからない。フェアかどうかの判断は裁判所で明らかになるが、司法はロビー攻撃への耐性が相対的に強い」。


「何もしないとフリー」の登録制度をデフォルトに

 インターネットの普及により、他人の著作物を利用する機会が増え、権利者だけでなく個人の私的な著作物も利用されるようになった。田村氏によれば、権利行使する著作権者と、権利行使に無関心な著作権者に分化し、著作権処理のコストに見合う利益を得ている著作物の割合が低下しているという。さらに、権利を行使したい権利者の意向と著作権法のかい離も大きくなってきているとして、「デフォルトのルールを変えるべき」と訴えた。

 「権利処理に無関心の権利者が多く、その人たちの意向が利用自由の確保にあるのであれば、『原則何もしないとフリー』をデフォルトにして、権利を行使したい人がコストをかけて手続きする登録制度を原則にしてはどうか。ドラスティックに変えなくても、デジタル利用に関しては登録を要求したり、一定期間は著作権法を適用して、期間を延長したければ登録するなど、さまざまなバリエーションがある。」


すべてのプレイヤーの声に耳を傾けた著作権政策を

ITジャーナリストの津田大介氏

クリエイター、著作権者、クリエイターの要求では重なる部分が大きくなっているという
 これまでの日本の著作権政策は、時代の変化に合わせて権利者側がロビー活動を行い、これを文化庁が受け入れる形で法制度が変わってきたと説明したのは、ITジャーナリストの津田大介氏。「文化庁は『文化の保護』が仕事だが、これまでは、権利者と権利者の利益を代弁する権利者団体の要望だけを聞き入れていた」。

 コンテンツにかかわるプレイヤーが増えた現在では、「産業化されたコンテンツビジネス」だけを保護する著作権政策が正しいのか、と津田氏は疑問を呈する。

 「デジタル化の進展で、コンテンツの流通ではプロとアマの差はほとんど無くなった。コンテンツの質の差も数十年前と比べて随分埋まった。今後は、権利者の声だけ聞くのではなく、クリエイターの側面も持つユーザー、それを広げるデジタル機器を売るメーカー、それを伝送するインフラ業者など、著作権ビジネスにかかわるすべてのプレイヤーの声を聞き、総合的な著作権政策に転換すべきだ。」

 作品を広めて対価を得たいクリエイター、著作物を自分たちでコントロールしたい著作権者、できるだけ安く便利に多様なコンテンツを楽しみたい消費者。求めるものは三者三様だ。しかし津田氏は、クリエイター、著作権者、ユーザーの三者の要求が均衡するポイントが増えていると指摘する。

 「アーティストが個人レーベルを作るケースでは、アーティスト(クリエイター)と著作権者は一体。米国では消費者がファンドでお金を集め、アーティストのアルバム制作資金を調達するサービスもある。角川グループやAvexなどの著作権者も、ニコニコ動画などのユーザーコミュニティに進出している。三者の関係はあいまいになり、要求が均衡する部分が大きくなっている。今後の著作権政策では、この均衡するポイントで、保護とユーザーニーズが均衡している適正な市場を考えることが重要だと思っている。」


関連情報

URL
  iCommons Summit 2008
  http://www.creativecommons.jp/isummit08/


( 増田 覚 )
2008/08/01 17:26

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