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“オプトイン”導入の迷惑メール法改正、事業者への影響は?

行政担当者と事業者がカンファレンスで意見交換

「第6回 迷惑メール対策カンファレンス」会場全景
 財団法人インターネット協会(IAjapan)は5日、迷惑メール対策に関するイベント「第6回 迷惑メール対策カンファレンス」を開催した。

 迷惑メールに関する法律では、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)」と「特定商取引に関する法律(特定商取引法)」が改正され、12月1日に施行される予定となっている。両法の改正では、ユーザーの事前同意なしに広告・宣伝メール(特定電子メール)を送信することを禁ずる、“オプトイン規制”の導入が目玉となっている。

 IAjapanでは、これまで毎年5月の連休明けに迷惑メール対策カンファレンスを開催してきたが、改正法の施行を12月に控え、事業者への影響が大きいことから秋にもカンファレンスを開催。総務省と経済産業省の担当者による改正法の解説や、質疑応答などが行われた。


広告メール送信には事前同意を必要とする「オプトイン方式」導入

総務省総合通信基盤局の大村真一氏
 特定電子メール法の改正については、総務省総合通信基盤局の大村真一氏が説明を行った。特定電子メール法は、広告・宣伝メールを送る際のルールなどに関する法律として2002年に施行され、ユーザーの同意を得ていない広告・宣伝メールについては件名に「未承諾広告※」を付けることや、拒否者に対しては送信してはいけないことなどが定められている。

 大村氏は、特定電子メール法は2005年にも罰則強化などの改正が行われたが、迷惑メールを送信する業者の悪質化・巧妙化、現行の規制方式の形骸化、海外発の迷惑メールの急増といった問題が出てきているため、こうした状況を背景として今回法改正が行われたと説明。今回の法改正の主な内容として、1)オプトイン方式による規制の導入、2)法の実効性の強化、3)国際連携の強化――の3点を挙げた。

 オプトイン方式とは、事業者が広告・宣伝メールを送信する場合には、ユーザーにあらかじめ同意を得ることを求めるもの。現行法では、ユーザーが「今後はメールを送信しないでほしい」という意思表示ができる仕組み(オプトアウト方式)を設けることが事業者に対して求められてきた。しかし、ユーザーが拒絶通知を行うことが、かえってメールアドレスの収集に用いられてしまうといった問題点が指摘されてきたことから、改正法ではオプトイン方式を導入。また、これに伴って、ユーザーの同意を得たという記録を保存することも義務付けられる。


特定電子メール法改正の背景 広告メールの送信には事前同意が必要となる「オプトイン方式」による規制を導入

 法の実効性の強化としては、ISPが迷惑メール対策として「SPF/SenderID」などの送信者ドメイン認証技術が活用できるよう、送信者情報を偽ったメールの受け取りをISPが拒否できることを規定。また、悪質な業者を特定するために、迷惑メールの送信者に関する契約者情報の提供を総務大臣がISPに対して求めることを可能にするとともに、迷惑メールの送信者だけでなく送信委託者についても立入検査や措置命令などが行えるよう対象を拡大。さらに、法人に対する罰金額についても、現行の100万円以下から3000万円以下に引き上げる。

 国際連携の強化については、海外から国内に送信された迷惑メールが法規制の対象であることを明確化するとともに、外国の執行当局に対しても情報を提供できる規定を創設。海外から送信された迷惑メールについて、送信元となった国の捜査に協力する体制を整える。

 また、法律では対象となるメールの範囲などについては省令で定めるとしており、現在提示されている省令案では、Webメールサービスなどを利用した場合も法規制の対象となることや、フリーメールサービスなどに付随する広告については例外となること、ユーザーの同意を得たという記録はメールの送信を行わないこととなった日から1カ月間(措置命令を受けた場合は1年間に延長)保存することなどを定めている。

 総務省では、法改正にあたって、ユーザーの同意の求め方などを具体的に示したガイドラインを11月上旬に公表する予定で、既にガイドラインの案を公開している。大村氏は、事業者に対してはガイドラインを参考にして適切な対処をお願いしてきたいとした上で、「迷惑メール対策は法規制だけで十分対処できるものではない」として、事業者の自主的な取り組みや技術的対策、ユーザーへの周知啓発・相談体制の充実など、総合的な迷惑メール対策を推進していきたいと語った。


送信者を偽ったメールをISPが受信拒否することや、罰金額の引き上げなど法の実効性を強化 海外の捜査機関との協力など国際連携を強化

広告メールの送信を依頼する販売事業者にもオプトイン規制

経済産業省商務情報政策局の伊藤浩行氏
 続いて経済産業省商務情報政策局の伊藤浩行氏が、特定商取引法の電子メール広告規制に関する法改正について説明。特定商取引法では、通信販売や訪問販売などに対するルールを定めており、インターネットを利用した販売やその広告行為も法規制の対象となる。特定電子メール法が主に広告・宣伝メールを送信する業者に関する法律であるのに対して、特定商取引法はサービスや商品の販売のために広告・宣伝メールの送信を依頼する側の業者に対する法律となる。

 特定商取引法も12月1日に改正法の施行を予定しており、特定電子メール法と同様に業者に対してオプトイン方式でユーザーからの同意を得ることと、ユーザーの同意を得たという記録の保存を義務付けている。また、販売業者に加えてメール広告の受託事業者も規制対象とし、立入検査などの調査や業務改善指示・業務停止命令などを行うことができるようにし、業者を特定するために、業者のメールアドレスを付与したISPに対して報告を求めることができるようにしている。

 特定電子メール法との違いとしては、ユーザーから広告メール送信の同意を得たという記録を保存する必要はあるが、法の目的は「消費者の意に反して広告メールが送られてくることを防止すること」であるため、ページを表示しただけで勝手にユーザーが同意したとみなすなどの不適切な方法でない限りは、どのようにユーザーの同意を求めていたかという記録とその時期を記録するだけで良いとされている。ただし、期間については、相手に対してメール広告を送信した日から3年間保存しなければならないとされており、特定電子メール法よりも長期間の保存が求められる。


特定商取引法の改正内容 適切な業者であれば、ユーザーの同意をどのようにして得たかということだけを記録しておけばよい

 また、特定商取引法についても、業者に対して「適切な同意の取り方」を示すガイドラインを公表している。ショッピングサイトなどの注文時に広告メールの配信も求める場合には、注文を確定する送信ボタンの近くにその旨を表示することや、送信希望のチェック欄はデフォルトでオンの状態になっていても良いが、その場合には画面中で消費者が認識しやすいよう明記することを求めている。

 逆に、容易に消費者が認識できない例としては、利用規約が延々と並んでいる中に「メールの送信を承諾します」といった文面が入っていて見落としやすいものや、登録するとどのようなサイトからの広告が表示されるかがあいまいなものなどが挙げられている。また、ユーザーが配信停止を求める際に必要な事項についても、消費者が容易に認識できるよう記載することを求めている。

 伊藤氏は、「ガイドラインは、業者に対して、消費者にとってわかりやすい表示を心がけてほしいという例を示したもの」だとして、健全なビジネスを手がけている業者に対しては大きな影響がないようになっていると説明。また、消費者に対しては、請求や承諾をしていないメール広告が届いた場合には、財団法人日本産業協会のメールアドレス(spam-in@nissankyo.jp)までメールを転送してほしいと呼びかけた。


メール配信の同意を求める場合のガイドライン。「デフォルトオン」でも構わないが、ユーザーが認識しやすいように表示することが求められる 不適切な同意の求め方の例。ユーザーが見落としやすい表記は望ましくないとされる

「一般的な事業者が活動できなくなることは本意ではない」

 引き続いて行われたパネルディスカッションでは、主に参加した事業者からの改正法に関する質疑応答に時間が割かれた。

 パネリストとして登壇したソフトバンクテレコムの松本勝之氏は、ISPとしては法改正により迷惑メールが減ることと、迷惑メールを効率的にブロックできるようになることに期待しているとしながらも、施行されただけでは状況はあまり変わらず、業者にとっては抜け道も考えられるのではと危惧を表明。送信者情報を偽ったメールは受信を拒否できるようにするためには、送信者ドメイン認証技術に多くのドメイン名が対応することが必要だとして、対応を呼びかけた。

 また、改正法の実効性を高めるには、悪質な業者を逮捕することも抑止効果として重要ではないかとして、改正後に何社ぐらい逮捕するつもりかと訪ねた。

 これに対して経済産業省の伊藤氏は、「経済産業省も総務省も業者を逮捕することはできないが、業務改善や業務停止命令、さらに悪質な業者に対しては刑事告発も行っていく」と説明。また、迷惑メールの送信だけでは厳しい処分にはならないかもしれないが、迷惑メールを継続的に送信している業者はワンクリック詐欺のようなサイトを持っていたり、出会い系サイトにおける誇大広告などの問題があり、そうした行為を迷惑メールを端緒として対応していきたいと説明。「経済産業省としては、一般的な事業者が活動できなくなることは本意ではない」として、悪質な業者に対して規制を強化していきたいと語った。


ソフトバンクテレコムの松本勝之氏(左)とニフティの木村孝氏(右)
 一方、参加した事業者からは、自身の事業にどのような影響があるのかについての質問が多く挙がった。例えば、メール配信のASPサービスを提供している業者からは、迷惑メールの送信に用いられた場合にASP業者も処分の対象となるのかという質問があった。これに対して総務省の大村氏は「原則として単なるASPは対象外」と説明。また、ISPが会員に対して新サービスのお知らせを送る場合なども、「継続的な取り引きのある相手に対する広告メールはオプトインによる同意を求める必要はないが、オプトアウトなどの表示義務は守ってほしい」とした。

 また、既に収集したメールアドレスなどに対しては、改めて同意を得る必要はないが、今後送るメールについてはオプトアウトなどの仕組みを整えることが求められると説明。企業を相手にした新製品やサービスの告知などについては、継続した取り引き関係にあれば事前の同意を求める必要はなく、特定商取引法については消費者に対する広告メールのみが対象となり、BtoBの広告・宣伝は対象外となるといった説明がなされた。

 フリーメールの末尾に自動的に付加される広告などは法規制の対象外となっているが、これを悪用してフリーメールを装って広告を配信した場合にはどうなるのかという質問には、伊藤氏が「省令に但し書きで、脱法行為としてフリーメールを使っている事業者は対象になるとしている」と説明。そうした行為はきちんと見分けられるのかという質問には、「悪意の証明は確かに難しく、立入検査などで証拠を見つける必要がある。消費者センターに苦情がたくさん来ているとか、そうしたことが判断材料にもなるので、疑いの高いところに立入検査などを実施していくことになると思う」と答えた。

 コーディネーターを務めたニフティの木村孝氏は、「形式的にどういう場合が違法になるかということよりも、ユーザーが悪質な迷惑メールだと判断するかどうかが重要ではないか」とコメント。特定電子メール法については日本データ通信協会、特定商取引法については日本産業協会が相談の受付や情報提供を行っており、不明な点はこうした協会や総務省・経済産業省に問い合わせるなどして、適切な対応を行ってほしいとした。


関連情報

URL
  第6回 迷惑メール対策カンファレンス
  http://www.iajapan.org/anti_spam/event/2008/conf1105/
  特定電子メール法の平成20年改正について
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/d_syohi/h20kaisei.html
  特定商取引法のガイドライン
  http://www.meti.go.jp/press/20081001002/20081001002.html
  日本データ通信協会
  http://www.dekyo.or.jp/
  日本産業協会
  http://www.nissankyo.or.jp/

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( 三柳英樹 )
2008/11/06 19:01

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