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産経デジタルの戦略は「ネットユーザーと仲良く」

ネット時代の新聞社の役割や可能性とは

 企業広報に関する団体である社団法人日本パブリックリレーションズ協会が20日、「第1回新春PRフォーラム」を開催した。パネルディスカッションでは、「MSN産経ニュース」などを運営する産経デジタルの近藤哲司取締役が登壇し、ネット社会における新聞社の役割や機能の変化を語った。


MSN産経ニュースの「法廷ライブ」、ビジネスモデルはないが……

産経デジタル取締役の近藤哲司氏
 産経デジタルは、産経新聞グループのデジタルメディア事業を手がける会社として、2005年11月に企画会社として設立。翌2006年2月、産経新聞社のデジタルメディア局を統合して事業会社となった。現在、マイクロソフトとの提携による「MSN産経ニュース」をはじめ、「イザ!」「ZAKZAK」「sanspo.com」「フジサンケイビジネスアイ on the web」という5つのニュースサイトを運営しているほか、ポータルサイトなどへの記事提供や、電子新聞事業などを展開している。

 近藤氏によると、現在、新聞社のビジネスモデルの危機が議論される中で、産経デジタルに与えられた役割が「朝日、読売、日経ができないことをいちばん最初にやれ」ということだった。新聞社ではそれまで「3割ルール」というものがあり、インターネットでコンテンツを無料公開すると紙の新聞の購読者が減るとの恐れから、それを制限していたという。しかし、産経新聞グループでは、産経デジタルの設立と同時に「その旧弊をすべてとっぱらった」。

 その結果、「MSN産経ニュース」のコンテンツの比率を見ると、新聞に載っているコンテンツは6割にとどまり、逆に新聞には載っていないコンテンツが4割に上るという。近藤氏は、その例として「法廷ライブ」というコンテンツを紹介した。

 「法廷ライブ」は、公判の一問一答をほぼリアルタイムで伝える記事だ。1つの公判に記者5人を投入し、15分交代で傍聴させ、自分の番が終了すると外に飛び出してきては即座にインターネットに反映する。1日に20本のライブ記事を掲載して、合計900万ページビューを集めたこともあるという。

 「法廷ライブには、正直なところ、ビジネスモデルはない。ビジネスモデルはないが、非常に注目されている。新聞以外の新しいメディアを作る、あるいは新聞のコンテンツをいろいろなところで見せていく場合にどんなことができるのかという実験を行っているからだ。」(近藤氏)

 こうした取り組みなどの結果、5サイトの月間ページビューは約9億2000万に成長。ユニークユーザー数を合計すると延べ4200万人、重複利用者を除くと3400万人になるという。一方、産経新聞社グループの紙媒体の購読者は5媒体合わせて400万人で、すでにインターネットが紙の8~10倍規模に拡大している。「今までは新聞の購読者だけを大事にしてきたが、これからは新聞の購読者ではない、3400万~4000万人のインターネットユーザーの方々、あるいは1億人いるというユーザーの方々と仲良くしていく。その中でのマネタイズと、新聞社の役割を拡大していくことが我々の最大のミッション」とした。

 「これまで新聞社は、新聞紙を発行するために生きてきた会社で、報道ツールとして新聞紙を使ってきたが、実は新聞社が世の中に提示してきた役割や機能は、決して新聞を作るためだけではないというのが我々の基本的な考え方。新聞社が本来持っている機能や役割、あるいは今は顕在化していない可能性を、新聞を発行する以外のことで拡大し、さらに新しい利用の仕方をしていただけないか。産経新聞社グループとしてずっと議論してきており、そういう戦略のもとに今、歩もうとしている。」(近藤氏)


NHK「のど自慢」は、CGMのようなものの原型

(写真手前から順に)パネルディスカッションの進行を務めた電通総研所長の和田仁氏、パネリストのNTTレゾナント小澤英昭氏、NHKの兄部純一氏、産経デジタルの近藤哲司氏
 パネルディスカッションには、NHKの兄部純一氏(編成局デジタルサービス部部長)、NTTレゾナントの小澤英昭氏(シームレス事業部担当部長)も登壇。テレビ局、ポータルサイトという立場からCGMなどへのスタンスを語った。

 兄部氏は、「『Mass media』から『Mass+net』mediaへ」というキーワードを示し、大衆化していくネットを何とか取り込もうとしているNHKの現状を説明した。テレビを全く見ない若者が多くなっており、民放ならまだしも、NHKはなかなか若者にリーチできないとし、お茶の間のテレビでなくても見てもらえるよう、テレビのほか、PC、携帯電話(ワンセグ)による「NHK on 3スクリーン」を展開しているという。

 また、「ネットを使うことで、視聴者が参加するメディアにどう変貌するか?」という課題に対しては、「もともとNHKには参加型の『のど自慢』『あなたのメロディ』といったCGMのようなものが原型としてはあった」と説明。その流れを大きく展開しようとする番組として、現在、Webサイトに寄せられた投稿をもとに制作している「テレ遊び パフォー!」を紹介した。

 NTTレゾナントの小澤氏は、10年間運営していた「goo」について、ポータルサイトとしていろいろなニーズに応えたいという考えから、さまざまなサービスやコンテンツを用意してきたが、「広いが、薄い」という自戒の念があるとした。

 そこで次の10年に向けた課題として、「なぜ、NTTという技術系の会社がネット系サービスを提供していくのか」ということを、もう一度原点に立ち返って考えているという。具体的には、「システムを構築する力、新しいツールやサービスを開発する力、コンテンツを生む力、編集する力をサポートしていくことで、CGMやロングテールを活用していくことが考えられる」という。

 例えばCGMの活用としては、gooが「お題」を出し、ユーザーからの意見を集約する、掲載管理型のニュース掲示板「gooニュース畑」がある。小澤氏は、ブログが荒れる要因として「気に障る余計な表現を使ってしまうこと」「放置すること」を挙げ、これらに対処すれば、ブログが必ずしもコントロールできないメディアではないとした。その点、「gooニュース畑」では、寄せられた意見の大意が変わらないように編集するとともに、荒れないように管理することで、まとめ記事化してニュースとして掲載できるようになったという。「CGMでもいい意見は集まる。まだ自動化はできていないが、CGMに新しい価値を生み出せるのではないか」。

 また、ロングテールに関しては、こちらもまだ自動化は実現していないが、他の媒体では日本語化されていない情報をgooで翻訳して提供している事例を紹介。「フィナンシャルタイムズ」の記事を月に8本翻訳して掲載することで、3万~4万ページビューを集めているという。


関連情報

URL
  日本パブリックリレーションズ協会
  http://www.prsj.or.jp/

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( 永沢 茂 )
2009/01/21 16:50

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