OGC 2009では、2008年5月に月間1億PVを記録した女性向け掲示板「発言小町」について、読売新聞東京本社 メディア戦略局編集部 次長の神崎公一氏が概要や運営などを説明した。
● 投稿数は1日で最大約3000件。編集部ではすべての投稿をチェック
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読売新聞東京本社 メディア戦略局編集部 次長の神崎公一氏
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発言小町は、読売新聞のニュースサイト「YOMIURI ONLINE(YOL)」の女性向け掲示板コンテンツ。2008年5月には携帯向けサイト「ケータイ大手小町」内のコンテンツ「発言小町」も含め、月間1億PVを達成したという。投稿は匿名で受け付け、サイトに掲載する前に編集部員がすべての投稿に一度目を通す。場合によっては趣旨を変更しない程度の編集を行い、サイトポリシーに沿った形で公開する。
投稿数は1日で2500件から3000件。登壇した神崎氏は「まじめな投稿が多いですね」とコメントし、「職場でも、友達にも、夫にも聞けない女性の悩みについて、親身な回答を得られる」と説明した。発言小町には「チョコのお薦めエリアを教えてください」といった地域情報から、「義理の実家のことで悩んでます」という嫁姑関係まで投稿ジャンルは多岐に渡り、1つのレスに数百件のコメントがつく場合もある。ユーザーは95%ほどが女性。メインユーザーは主に30代から40代、50代で、ユーザー全体は10代から70代までと幅広い。
発言小町では、中傷や公序良俗に反する投稿を防ぐ目的で、女性の専任編集部員1名と派遣社員数名が、トピックやレスの全投稿に目を通す。慣れている人では1日に800件から1000件ほどをチェックするという。
神崎氏によれば、以前編集部には20代の男性担当者もいたとのことだが、発言小町の内容をチェックしていくうち、ある日突然仕事中に部屋を飛び出していったという。理由は「発言小町を読んでいたら結婚の自信がなくなった」とのことで、「夫婦問題や職場のストレスなどの投稿に自分を投影したのでは。ベテランの人は『絵のようにして読む』」というエピソードを披露した。
● 自浄作用の一方、炎上の危険も。判断基準は「あってないようなもの」
以前は投稿処理に時間がかかり、実際に投稿が反映するまでは2~3日を要した。2007年のシステムリニューアルにより、投稿を100ずつの束にわけ、チームに割り振るという方法を採用することで、現在では投稿から反映まで、最短で2時間程度に短縮可能となった。
サイト内でユーザー同士が過激な投稿をたしなめる「自浄作用」も多い一方、差別用語や不適切な表現など、投稿ルールに反する投稿は「ボツ」になる場合もある。神崎氏によると、現時点での「ボツ率」は2割程度。「スタッフ内でも意見が割れる。基準はあってないようなもの」(神崎氏)。また、「ハードルを下げるとユーザーは来る。編集部はPVを伸ばしたいが、新聞社として押えざるをえない部分もある」と掲載基準の難しさを語った。
また、「女性担当者が経験上荒れると感じたものは、実際に荒れる傾向がある」とコメント。編集部内で議論となった「収入の少ない夫に仕事後アルバイトをさせた」という投稿は、掲載後1日で数千PVを記録し、サーバー負荷も考慮し掲載を取り下げたという。他にも反感を買いやすいキーワードとして「海外在住」や「都内の一等地」などを挙げた。
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発言小町。2007年3月に、トピックのジャンル分けなどのリニューアルを実施
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YOMIURI ONLINE(YOL)
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● 発言小町だけでYOL全体PVの3割弱。社内は「1億PVに比例した広告収入を」
発言小町を開始した当初は、「インターネットが頑張ったら新聞が売れない」と社内で言われる立場にあったものの、2年ほど前から徐々に数字を伸ばし、2007年3月にはトピックごとに「レス数」や「アクセス数」「お気に入り登録数」を表示し、「全体」「子ども」「健康」などのジャンル分けをしたリニューアルを実施。発言小町の約1億PVは、YOL全体の月間3億2000万PVの約3分の1を占めるまでに成長した。
今では「1億PVに比例した広告収入を稼げと言われる」(神崎氏)と、社内でもネット媒体の認知度が高まったことで、広告収入への期待が高いことを明かした。経費面でも、ニュース部分では取材費などで多額の費用が必要になるが、発言小町はほぼ人件費のみだという。
しかし、現在の広告収入の実情は厳しい。神崎氏は「CGM系の投稿サイトなどでは、目的の投稿やブックマークだけを読んで帰るユーザーが多く、意外と広告が入らない」と語った。広告主によるトピック形成も企画し、ニッカウヰスキーのトピック「あなたがお酒を飲みたいときはいつですか」にてレスを募集したが、伸びは少なかったという。
現在では、テキスト広告をトピック一覧の上部や半ばに挿入するほか、上部や右側にバナーを配置。また、クロスメディア展開として「新聞にも発言小町の話題について専門家の話を載せる」など、本誌紙面とも連動するという。
今後の広告展開として、「発言小町に掲載している広告の改善余地はある」と断った上で、「ユーザーが盛り上がったテーマで『小町グッズ』開発や、アフィリエイトなどの手数料収入、オフ会やトークショーなどの開催、もし次回の書籍化があれば、テーマを絞った1冊を作りたい」と広告展開への意欲を語った。
関連情報
■URL
発言小町
http://komachi.yomiuri.co.jp/
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( 村田奏子 )
2009/02/06 14:48
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