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アイスランド政府の戦略~4つのキーワード


 人口約30万人の90%がインターネットに接続する国・アイスランド。ITU(世界電気通信連合)が2003年に発表した調査によれば、アイスランドのIT利用率はスウェーデン、デンマークに次ぐ第3位(同調査で日本は15位)で、インターネット利用者の92%がADSLを活用しているという。東京から8,900km離れた、北欧の国アイスランドのIT事情をご紹介しよう。


首都・レイキャヴィク市内の「ハトルグリムスキルキャ教会」 英国の北北西に浮かぶアイスランド。ちょうど北米大陸とユーラシア大陸のプレートの境目にあるという

関連記事
日本のIT利用先進度は15位~ITU調査(2003/11/20)

人口は日本の地方都市並、特徴は「技術的な関心が高いこと」

レイキャヴィクから車で小1時間ほどのところにある「アルシング」の跡地。壁に向かって演説したという
 9世紀後半にヴァイキングによって発見されたアイスランドだが、10世紀前半には議会「アルシング」が開かれるなど民主的な土壌があったという。しかし、11世紀以降は英国やデンマークといったヨーロッパ列強の支配下に置かれる歴史が続く。第二次世界大戦が終結する前年の1944年、ようやくナチスドイツから独立。その後は、1980年に世界初の女性大統領(ヴィグディス・フィンボガドーティル氏、1996年まで務める)が誕生するなど、安定した政治が続いている。

 海に囲まれた島国で火山が多い、国民1人当たりの年間所得が3万ドル程度(29,700ドル、2003年)、など日本との共通項も少なくない。一方、大きく異なる点は人口だ。1億2,000万人以上の日本に対して、アイスランドは2004年現在29万3,291人と30万人に満たない。しかし、アイスランドの政府関係者はこの小さい社会でも、インターネットの普及は早かったと主張する。

 内閣府情報社会部の調査によると、82%のインターネットユーザーは電子政府のWebサイトを通じて納税したことがあり、65%のユーザーがオンラインバンキングを利用している。また、アイスランド貿易協議会によれば、最近では伝統的な漁業やアルミニウムの精製に加え、「MMORPG『EVE Online』や医療関係のソフトウェアなどIT関係の輸出が伸びており、1993年の26万8,000アイスランドクローネ(ISK)から2003年には373万2,000ISKに達した」(貿易協議会コンサルタントサービス部のヘルガ・ヴァルフェルズ氏)という。

 情報社会部のグズビョーク・シグルツァードーティル部長は、「アイスランドの社会は小さいが、透明性が高い。国民の技術的な関心も高く、教育水準の高さや安定した経済環境が下地になった」と急速なIT化を分析した。


アイスランド貿易協議会のヴァルフェルズ氏 ソフトウェアの輸出は年々増加している

URL
  EVE Online
  http://www.eve-online.com/

アイスランド版「e-Japan戦略」の内容は

内閣府情報社会部のシグルツァードーティル氏
 アイスランド政府では、2004年から2007年までの指針となるIT関連の政策「Resources to Serve Everyone」をまとめている。いわば「e-Japan戦略」のアイスランド版だが、その中でキーワードになっているのは「Opportunity(機会)」「Responsiblity(責任)」「Security(安全)」「Quality of Life(生活の質)」の4つ。

 Opportunityとは、個々人や企業がITを活用することで知識や交流を深め、いつでもどこでもビジネスをできるようにするという考え。電子政府をより一層推進するために電子申請の技術的な問題に関する委員会や、データの保護に関する委員会、公共情報にメタデータを登録することに関する委員会などの設置を内閣府の責任として規定。既存の法律や規制、申請手続きなどインターネットを活用したビジネスに対する障害を取り除き、雇用機会を増やすことなどを盛り込んだ。

 ITを活用する際の責任や安全にも配慮するよう言及する。Responsiblityとしては、「政府は、インターネットへ誰でもアクセスできるようにするべきだ」という。学校や図書館にインターネット端末を設置するほか、大きな図書館は無線LANにも対応するべきだとし、視覚障害者や色覚障害者へも配慮するよう述べた。その一方で、「教育観光文化省は、ゲームが子供に与える影響を調査する必要がある」とし、親が子供のインターネット利用状況を把握しなければならないとした。

 Securityに関しては、「市民と企業が低価格で安全で信頼性の高いブロードバンドネットワークが利用できること」とした上で、情報セキュリティとプライバシー保護の原則を指導するべきだとする。そのために、アイスランドの通信省と財務省が協力して、2006年までに安全な通信サービスを実現するようスケジュールを決定。また、財務省には電子署名の普及、司法省にはITに対応する政策の策定、通信省にはインターネット上のセキュリティ問題に緊急対応するチーム、いわゆるCERT(Computer Emergency Response Team)の設立を課した。

 最後にシグルツァードーティル氏は、「教育や文化事業、健康福祉事業などにITの潜在能力を活用して生活の質を高め、より豊かな社会を実現する」とコメント。今後は、「情報社会基金」などを設立し、「Resources to Serve Everyone」に沿う社会の実現に努めると決意を述べた。


関連情報

URL
  Resources to Serve Everyone(英文)
  http://eng.forsaetisraduneyti.is/information-society/nr/1327/
  アイスランドの公式サイト(英文)
  http://www.iceland.is/


( 鷹木 創 )
2005/03/22 11:27

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