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「ニュースサイト」から「総合情報サイト」へ
~脱皮を図るアサヒ・コムの狙いとは


 朝日新聞社が運営する総合情報サイト「アサヒ・コムが、6月9日に大幅リニューアルに踏み切った。トップページのレイアウトを一新し、生活情報、ショッピングといった情報へのアクセスを容易にしたほか、カスタマイズ機能により、利用者の嗜好にあわせて環境設定も可能になった。

 アサヒ・コムが得意とするニュースも、新聞紙面には掲載されない情報を細かく掲載する仕組みを導入。ビジネスマンから、家庭ユーザーまで幅広い層をターゲットとしたサイトとした。

 朝日新聞東京本社デジタルメディア本部編成セクションマネジャー・asahi.com編集長小野高道氏、asahi.comサイトディレクターの北元均氏に、アサヒ・コムのリニューアルの狙いなどを聞いた(以下敬称略)。


新聞社のニュースサイトから、ニュースを核にした総合情報サイトへ

朝日新聞社 デジタルメディア本部 編成セクションマネジャー asahi.com編集長 小野高道氏
――6月9日のサイトリニューアルの狙いを聞かせてください。

小野:アサヒ・コムは、1995年のサイト開設以来、これまでにも年に1回のペースでリニューアルを行ってきました。ただ、今回のリニューアルは、トップページのレイアウトを従来の2列(2ペイン)から、3列(3ペイン)構造にしたことからもわかるように、視覚的な面でのリニューアル、使い勝手のリニューアルにも踏み込んだものとなっています。

 また、ターゲットをこれまでの「朝日新聞の読者を中心とするコア層」から、「常に正確な情報を必要としているビジネスマン」にまで広げ、まだアサヒ・コムにはなじみが薄い若年層のビジネスマンや、中高年の主婦といった層を取り込むステップとすることも視野に入れています。

 いわば、アサヒ・コムの根幹ともいえるものを変更する、サイト開設以来初の大リニューアルと言えるものです。

――なぜ、これだけの大幅なリニューアルに踏み出したのですか。

小野:理由は大きく分けて3つあります。まず外的要因としては、産経や毎日.jpのような新聞社サイトの動きに代表されるように、ニュースサイトが大きく転換点を迎えていることが挙げられます。ニュースサイトはどうあるべきかを考える時期に来たともいえます。

 2つ目には、アサヒ・コムに対する読者の意見を反映することが挙げられます。3つ目には、2007年4月のリニューアルを経て、社内で調査、研究、分析をした結果を反映するという狙いがありました。

 また、広告をはじめとするサイトからの収入拡大、新たな読者を獲得するという点でも、サイトの大幅リニューアルの必要性を感じていました。

――アサヒ・コムは、新聞社のニュースサイトという位置付けが明確でした。今後は、そのスタンスが変わるということでしょうか。

小野:いや、ニュースはアサヒ・コムの柱ともいえる部分であり、差別化できる部分ですから、その点では変わりません。ニュースを核にした総合情報サイトという位置付けにしたいと思っています。

 住まい、教育、健康といった生活情報や、ショッピングやトラベル、そしてプレミアム有料コンテンツによる深い情報といったように、「一粒、口の中に放り込んでもらえば、いろんな味を味わっていただけるサイト」を目指したい。


紙面ありきから速報性を活かしたWeb限定ニュースの充実へ

アサヒ・コムのトップページ。左下の赤丸で囲った部分に、人気記事のランキングがあるが、この日は京浜東北の運転見合わせの記事がトップ。Webでは、運行情報の速報ニーズが高いことがわかる
小野:ニュースという観点でも大きな変化があります。今春以降、アサヒ・コムのニュース配信は、新聞発行を行っている編集局がするようにしました。

 また、記者が書いた速報性のあるニュースも、取り上げる体制にしました。交通遅延や災害情報など、新聞紙面では新聞発行までのタイムラグによって、ニュース価値がなくなってしまうため紙面に載らない情報があります。だが、速報性のあるアサヒ・コムでは、こうしたリアルタイム性の強い記事にもニュース価値がありますから、そうしたものを積極的に掲載し始めた。

 一方で、デジタルメディア本部(アサヒ・コム編集部)は、お役立ち情報やネットならではの情報といった、自前のニュースを配信する仕組みを採用しました。クルマ情報や映画、音楽情報、行列のできるランチやお菓子、新製品、趣味の情報などがこれに当たります。

 これにより、新聞紙面には掲載されないが、アサヒ・コムでは配信されているというニュースが、月500本以上に増加しています。現場の記者にとっても、取材した記事が、次々と掲載されるわけですから、モチベーションを引き上げることにもつながっています。記者にとっては、記事を掲載できるツールがひとつ増えたということになりますね。


2列構造から3列構造で、多様な情報へのアクセス性を向上

朝日新聞社 デジタルメディア本部 編成セクション サイトディレクター 北元 均氏
――トップページのリニューアルのポイントはどこになりますか。

北元:2列表示ですと、表示する内容が限定されますから、どうしてもニュース中心の表示になりがちです。これを3列表示としたことで、より多くの情報を見やすく表示することを狙いました。

 画面上部に置いたメニューバーも、「ニュース」「スポーツ」「エンタメ」「ライフ」「ショッピング」「プレミアム」といった項目に絞り込むことで、すっきりさせました。ニュース仕立てのサイトだと、どうしても、「社会」「政治」「国際」「ビジネス」という新聞の面立てのような区分けとなり、新聞を読み慣れた人には使いやすいが、それ以外の人には取っつきにくい。

 今回のリニューアルでは、ネットのユーザーをいかに取り込むかという点にフォーカスしましたから、メニューバーの内容を、新聞に親しんでいない人にも興味を持っていただきやすいものとしました。

 もちろん、これまでのニュースの分類に親しんできた方に対しては、ニュースのタブにカーソルを当ててもらえると、「社会」「政治」といったメニューが出てきますし、ニュースのトップページも従来と同じ区分にしています。

 また、中央部には検索ボックスを配置しました。これは、ニュースの速報ヘッドラインのすぐ下の位置にあります。関連情報を検索する際の利便性や、検索によってサイト内の行きたいところに辿り着きやすくする点を考慮したレイアウトになっています。

 さらに、サイト内の他の情報に辿り着きやすいという観点では、検索ボックスの下にあるフィーチャーボックスも大きなポイントです。従来は、右列にあったものを中央に配置することで、さまざまな情報へと移れるようにしました。

――フィーチャーボックスの中央への配置は、アサヒ・コムが大幅にリニューアルしたことを強く感じさせるものになっていますね。

小野:フィーチャーボックスは、銀座の街で言えば「銀座4丁目」とも言える場所に配置していますからね(笑)。

 ここには、話題の出来事をサムネイル表示して、左右にスクロールしながら、誰もがわかりやすく、興味を持てるようにしました。サイト内の回遊率を高めるための中心的役割を果たすものとなります。ニュースを見に来た人に対しても、やわらかい情報を提供していくことを狙っています。


トップニュースの直下に検索ボックス、検索ボックスの下に、フィーチャーボックスを配置。フィーチャーボックスは、多彩な情報にワンクリックでアクセスできるよう工夫されている ニュースのタブにカーソルをあてると、「社会」「政治」といったメニューが出てくる。これまでのニュースの分類に親しんできたユーザーにも使いやすいよう配慮している

カスタマイズ機能にも注力

 一方で、今回のリニューアルでは、カスタマイズ機能にも力を注ぎました。3列構造の左側部分に、「交通情報」「天気」「為替」を地域ごとに設定したり、ニュースの表示順を自由に変えたりといったことができます。

 また、「マイタウン」では、自分が気になる地域の情報を優先的に表示するといったカスタマイズを可能にしました。マイタウン情報は、全国の総局が管理しているページで、新聞社ならではの地元に密着した情報を提供している点が特長です。

 そのほか、有料で閲覧できるプレミアムコンテンツもアクセスしやすいようにしました。これまでのサイトレイアウトでは、プレミアムコンテンツが目立たなかったという反省がありましたから、今回のリニューアルでは、向学心の強い方などに対して、もっと積極的にプレミアムコンテンツを訴求できるようにしました。

 月額525円で時事コラムや写真ギャラリー、こだわりのコンテンツが閲覧できますし、そのほかにも、宝塚の情報をはじめ、たくさんのコンテンツをご用意しました。一方で、ビートルズ世代に贈るこだわりのエンターテイメントサイトの「どらく」とも、アサヒ・コムならではの生活情報のひとつとして、連動を図っています。


アサヒ・コムのカスタマイズ設定ページ。トップページの「天気」「交通」「ビジネス」「マイタウン」の情報をカスタマイズできる ニュースはカテゴリごとに、ブロックで上下に移動でき、読者が自分の関心の高いカテゴリを上にもってくるなどのカスタマイズができる

月間平均3億ページビュー目標~読者層の裾野をより広く

「すでに、次に脱皮することを考えています」(アサヒ・コム編集長 小野氏)
――リニューアルで掲げる具体的な目標はどこにおきますか

小野:これまでのニュースサイトでは獲得できなかった読者層を獲得したい。アサヒ・コムの読者の過半が男性です。その点では、女性の読者を増やすことに取り組んでいきたいですね。20代、30代、40代の女性にも関心を持っていただけるような内容を心がけたい。

 また、年輩の方からは、文字を大きくしてほしいという要望がありましたので、これもワンタッチで文字サイズを変更できるようにしました。そして、コアとなる30~50代のビジネスパーソンに対してもさまざまな情報を提供できる総合情報サイトとします。

 数値の観点からいえば、月間3億ページビューが目標となります。毎年夏には、高校野球の影響もあって3億ページビューを突破しており、昨2007年7月の実績でも、3億5000万ページビューに到達しています。

 ただ、年間を通じて見ると凸凹があって月平均ではそこまではいかない。これを定常的に3億ページビューを超えるところにまで引き上げたいと思っています。

 また、ユニークユーザー数という意味でも、これまでは800~900万前後でしたが、これを早期に1000万を突破する規模にまで引き上げたい。

 アサヒ・コムは、商用サイトですから、当然、広告収入が柱になる。アサヒ・コムの増収を図るためには、ページビューやユニークユーザーの増加が課題となるわけです。

 朝日新聞社全体で見ると、まだまだアサヒ・コムの広告収入は規模が小さい。数%に留まっています。だが、新聞事業が厳しいのは周知の通りであり、一方で、インターネットビジネスは拡大の余地があります。ここに乗り遅れるわけにはいかない。意欲を具現化したという意味では、今回のリニューアルは、点数を付ければ90点ぐらい与えられるものになったと思っています。

 アサヒ・コムがどういう立ち位置にあるべきかということを、今回のリニューアルで、社員および社内が確認できましたし、読者に対しても訴えられたと思っています。

小野:いずれにしろ、今回のリニューアルで終わりというのではなく、むしろこれからがスタートと考え、今後も間断なく、変化させていきます。記者は腰を軽くしておくのが鉄則ですから(笑)。

 アサヒ・コムもフットワークを軽くして、変化させたい。すでに、次に脱皮するためにどうするかということを考えています。


関連情報

URL
  アサヒ・コム
  http://www.asahi.com/


( 取材・執筆:大河原克行 )
2008/08/05 11:58

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