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アキバ開催2年目の「Internet Week」、今年はお酒も出ます!?

プログラム委員長の江崎浩教授に聞く

 「Internet Week 2008」が11月25日から11月28日までの4日間、東京・秋葉原の秋葉原コンベンションホールで行われる。同イベントのプログラム委員長である、東京大学大学院・情報理工学系研究科教授の江崎浩氏にその意図や見所などを聞いた。


IPv4アドレスの在庫枯渇問題、幅広い関係者が集い議論を

東京大学大学院・情報理工学系研究科教授の江崎浩氏
――Internet Week 2008が近づいてきました。今年はどのようなイベントとなるのでしょうか。

江崎氏:去年のInternet Weekは「変化」をテーマとしました。理由は、インターネット自体が広がったことにより、関係する人々の幅も広がったからです。これからのインターネットをどうしていくか、その方向性を定めていくには、より多くの人々の意見を反映することを目的として、幅広い関係者を集めたコミュニティを形成していく必要があります。

 例えば、IPv4アドレスの在庫枯渇問題にしても、それはもはやISPだけの問題ではなく、Webプログラマーやホスティング事業者、オペレーター、システムインテグレーター、ネットワークインテグレーター、コンサルタント、ユーザー向けにサービスそのものを提案している事業者など、非常に幅広い人々に影響します。IPアドレスの不足に関して、よく「NATでしのげるのではないか」とおっしゃる方もいますが、1ユーザーが使用するセッション数(ポート数)は決して少なくないので実際には難しいでしょう。1つのIPアドレスで使用できるポート数は、理論的な最大値で6万5536個(このすべてを使えるわけではありません)。これを多人数で分け合うことが前提になっているからです。

 NTTコミュニケーションズの宮川晋氏の発表からの引用ですみませんが、ネットワークとして張れるセッション数を15に制限した状態で「Google マップ」を見ると、この絵(図1)のようになってしまいます。さらに制限を強くして5にすると通信すらできなくなります(図2)。表を見ると実感できると思いますが、リッチコンテンツを使おうとすると、こうしたセッション数の制限はシビアな問題となります。

 1ユーザーあたり平均500のポートを利用しているという調査報告もありますし、使用するアプリケーションによってはさらに多くのポートを使う可能性もあるという状況下で、この問題の解をISPやケーブル事業者だけで決めることはできませんよね。NATは本当はどれくらい使えるのかとか、IPv6を採用するとどうなるのかとか、もう多方面から考えなくてはいけないはずなのです。

 こうした問題を解決していくためには、今までのように議論をばらばらに行っていたのではだめで、できるだけ幅広い関係者を集めて議論を進めなくてはいけません。そのための場としてInternet Weekが機能しようとしているわけで、今年はその点を強く意識しています。


図1 セッション数を15に制限した状態で「Google マップ」にアクセスしてみる(NTTコミュニケーションズ・宮川晋氏の発表から)

図2 セッション数を5に制限した状態で「Google マップ」にアクセスしてみる(NTTコミュニケーションズ・宮川晋氏の発表から)

表1 代表的なサービスが使用する同時セッション数の例(NTTコミュニケーションズ・宮川晋氏の発表から)

“青少年ネット規制法”も大きなテーマ

――IPv4アドレスの在庫枯渇問題に関連してか、IPv6関連のセッションが目立ちます。

江崎氏:これはもう、緊急の課題ですから仕方がありません。この問題に関してはずいぶんと議論が行われましたが、結局のところ、インターネットを発展させていくためには必要な手段であることに間違いはないからです。そのため、今回はIPv6ネットワークの導入を進めることを目的として、その構築を実際に行ってみるハンズオンセッションも用意しました。

 ただし、トピックとしてはそればかりではありません。ネットワークの中立性や“青少年ネット規制法”への対策など、多くの課題についても触れていきます。

 例えば、青少年ネット規制法に関しては2つの視点を持ちます。1つは、規制への実装を考えないといけないわけですが、その点に関して「xSPはどうしているか」というケーススタディを。もう1つは、問題の本質はどこにあるのか、我々はどう考えていくべきなのだろうかという、コミュニティとしての見解を出していくことです。

 仮に、周囲からすべての危険を取り払ってしまったとしましょう。その中で育った人々は、当然のように危険を察知する判断能力を失います。そこで、危険がある中で育った人々と同居することになるとすると、多分、判断能力を失った側は負けてしまいますよね。日本という国の将来を見据えたときに、本当にそれでいいのかという疑問はとても大きいものです。問題があったときに過度な規制で対処するのではなく、基本は教育にあるということを言っていく必要はあると感じています。


ネットの世界の「縦串」を通す場に

――Internet Week 2008のキャッチフレーズは「検索で明日はみつからない」ですね。すごく格好いい言葉だと思うのですが、では、Internet Week 2008に来ると何が見つかるのでしょうか。

江崎氏:検索で見つかる情報というのは、ある情報が消化されて何らかのドキュメントになったものだと考えるのが自然だと思います。ですから、検索で何かが見つかるためには必ずディレイ(時間的な遅れ)を考慮しなければいけません。

 しかし、何か緊急の課題があった場合、そのディレイがそのまま自分たちの遅れになってしまうことになります。一刻も早く調査し、判断しなければいけない事案があったときには致命傷になりかねませんから、その前の段階、ドキュメントにならない議論を聞くことはとても重要なのです。

 また、議論に参加するという意義もあります。議論を聞くだけでなく、意見を積極的に発言していくことで未来を変えることができるかもしれません。様々な人がいれば、利害関係も複雑です。狭い範囲のグループでは決して見ることができない議論が行われるということは意味のあることです。

 繰り返しになりますが、「今動いている状態のもの」を知るためには検索に頼るのではなく、その議論そのものを知る必要があります。また、一歩進んで参加すれば、得るものはより大きくなるでしょう。Internet Week 2008は、それを意識してデザインしています。インターネットがどの方向に向かっていくのか、その方向性を見つけることができると考えています。

――最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

 Internet Weekは、議論を含めた情報収集の場であると同時に、人と人との連携を進めるための場でもあります。異なる立場や背景を持つ人達との交流は、視野を広げるために欠かせません。

 例えば私は、去年の「Internet Week 2007」で津田大介氏に初めてお会いし、その結果としていくつかの共同声明を出すに至りました。その過程で得た知識や人脈はとても貴重なものです。

 今回のInternet Week 2008では、そうした様々な交流を促進していただくための初の試みとして、ミーティングスペースやアクセスコーナーを含む「交流スペース」を常設します。また、この交流スペースを使い、夕方の17時30分から19時30分までの約2時間を「Happy Hour」と称して、アルコールを含むドリンクやスナックを用意し、懇親を深めるための場になるような工夫もしました。Internet Week参加者は誰もが無料でこの交流スペースを利用できるので、セッションが終わったらすぐに帰るのではなく、ここで名刺交換をしたり、議論の続きや情報交換の場として活用していただければと考えています。

 「横串を通す」という言葉は縦割り社会でよく使われる言葉ですが、インターネットの世界では、多層に渡るレイヤーの人々をつなげ、全体として一本の筋を通していく「縦串」が必要です。ぜひとも多くの方々にInternet Weekにご参加いただき、明日のインターネットの方向性を見つけていただければと思っています。

――ありがとうございました。


関連情報

URL
  Internet Week 2008
  http://internetweek.jp/

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( 聞き手:遠山 孝 )
2008/10/22 15:10

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