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、「Yahoo!地図」の「ワイワイマップ」トップページ
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「Google マップ」の「マイマップ」機能によって、個人情報などが流出するトラブルが11月に入って大きな問題となった。「マイマップ」と同様に、オンライン地図上にユーザーが情報を登録し、オリジナルの地図を作成・公開できるサービスとしては、「Yahoo!地図」の「ワイワイマップ」がメジャーなところだ。しかしヤフーによれば、「マイマップ」で問題になっているようなトラブルは現在のところ起きていないという。
「マイマップ」と「ワイワイマップ」を比べて、まず大きく異なるのは、そのサービス名称から受ける印象だ。ヤフーによると、「ワイワイマップ」は「同じ嗜好を持った人たちが共有できる投稿地図サービス」を目指して開始したという。地図の公開・共有が前提の情報交換の場として、「文字通りワイワイ、ガヤガヤとみんなで楽しむ地図を目指し、利用イメージを連想しやすいネーミングとして命名した」。
ただし、作成したマップが必ず公開されるわけではなく、ユーザーが公開範囲を設定できる。ユーザー「全体」への公開のほか、「自分のみ」(非公開)にしたり、招待したユーザーだけがアクセスできる「マップ友だちのみ」(限定公開)とすることが可能だ。
ヤフーによれば、現在ワイワイマップで作成されているマップのうち、公開マップは51%と半分ほど。限定公開マップが2%、非公開マップが47%であり、非公開・限定公開も多いことがわかる。一方、投稿されたスポット情報の件数で見ると、公開マップへの投稿が83%、限定公開マップへの投稿が3%、非公開マップへの投稿が15%となっており、公開マップの方がアクティブに利用されているという。
● 公開用途を想定した「ワイワイマップ」だが“デフォルト非公開”
次に両サービスで異なる点が、作成したマップの公開範囲のデフォルト設定だ。
「マイマップ」では、ユーザーが新規にマップを作成すると、「プライバシー設定」のデフォルトが「一般公開」(当初の「公開」表記から11月4日に変更)となっており、そのマップのURLを知らないユーザーでも、検索結果などを経由してアクセス可能だ。この点に関してグーグルでは、「マイマップは、カスタマイズした情報をインターネット上で共有することが目的のサービスですので、初期設定は『一般公開』になっています」(Google Japan Blogの2008年11月4日付記事)と説明している。
一方、「限定公開」(同じく「非公開」から表記変更)では、検索結果には表示されないとしており、そのマップのURLを通知した知人などがアクセスすることを想定している。ただし、アカウントなどによる認証がかかるわけではない。「マイマップ」のヘルプページでは、「限定公開のものを含みすべてのマップにはURLが付いていることに注意してください。原則として、誰にも見られたくない地図はここで作成しないことをお勧めします」と説明している。
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「マイマップ」の新規マップ作成画面。タイトルと説明文のほか、「プライバシー設定」の項目がある。デフォルトはこのように「一般公開」になっている
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「ワイワイマップ」の新規マップ作成画面。この時点では、「公開範囲」の項目がデフォルトで「自分のみ」となっており、それ以外はグレーアウトしていて選択できない
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これに対して「ワイワイマップ」では、作成したマップが公開・共有されることを目指している割には、公開範囲のデフォルト設定は「自分のみ」、すなわち非公開となっている。しかも、マップを新規に作成する際の初期設定段階では、「マップ友だちのみ」や「全体」はグレーアウトしていて選択できない。スポット情報を1件以上登録した後、再び編集画面を開いた時点で、これらの設定が選択できるようになる。
「ワイワイマップ」で作成したマップを公開するには、こうしたステップを経て、ユーザー自身が能動的に公開設定に切り替える必要があるわけだ。ヤフーでは、「公開・非公開に対する強い意識付けとなって働く」と説明する。前述のように非公開マップが半数近くある結果についても、こうした「ハードル」があるためだとヤフーでは見ている。
なお、非公開マップおよび限定公開マップにはアクセスコントロールが施される点も「マイマップ」と異なる点だ。マップ作成者自身あるいは招待したマップ友だちのYahoo! JAPAN IDとパスワードによる認証が必要となるため、URLを知っているだけでは閲覧できない。もちろん、検索結果にも反映されないようにしているという。
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「マイマップ」で新規マップの初期設定が完了した画面
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「ワイワイマップ」で新規に作成したマップを公開マップに変更するには、実際に1件以上のスポット情報を登録する必要がある
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スポット情報登録後、マップ編集画面を開くと、「公開設定」の項目で「マップ友だちのみ」や「全体」も選択できるようになる
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「全体」公開設定に変更すると、即座に「新着マップ」コーナーにリストアップされた。逆に、マップを削除すると、即座にリストから消えた
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● デフォルト設定の違いは、運営企業のサービスポリシーの違い?
このように似たような機能を備え、両者ともに公開用途を想定していながらも対照的な「マイマップ」と「ワイワイマップ」だが、これには両社のサービスポリシーの違いを反映しているのかもしれない。
ヤフーの担当者は、「『ストリートビュー』などで見受けられた、サービスを公開し、その後の反応を見て(プライバシーなどの)問題に順次対応するというサービス提供手法については、Yahoo!地図のサービスポリシーとはそもそも大きく異なるように思われる。Yahoo!地図としては、少しの機能変更を行うにしても、利用者にどのようなメリット/デメリットが生じるか、事前の問題認識を重要視したサービス設計や提供を今後とも心がけていきたい」とコメントした。
なお、「ワイワイマップ」のガイドラインでは、プライバシー侵害のおそれがあるデータを公開・投稿することを禁止している。また、情報漏洩を直接的に防ぐ対策ではないというが、「24時間パトロールを行なっているため、ユーザーの悪意のある投稿があった場合も、時間的にも最小限の露出となるよう配慮している」とした。
● 「マイマップ」流出問題、直接の原因はユーザーの不注意だが……
現在問題となっている「マイマップ」による情報流出トラブルの直接的な原因は、サービスの仕様をきちんと理解しないままユーザーが使っていたことにあると言える。
とはいえ、ユーザーが意図せずに情報を公開してしまったと思われるトラブルが少なからず発生しているとすれば、公開用途を想定したサービスにおいても、“デフォルト公開”となっているか、“デフォルト非公開”となっているかも大きな要因と言えそうだ。さらに、公開用途を想定したサービスであるとすれば、そのことがユーザーにきちんと伝わるようなサービス名称や説明、設計になっているかも大きく影響している可能性がありそうだ。
ユーザーにおいては、利用にあたり、公開設定などの仕様をきちんと把握しておくのはもちろん、地図サービスのみならず、カレンダー共有や画像共有サービスなどでも、一歩間違えば同様のトラブルが発生する可能性があることを認識しておく必要もあるだろう。特に企業や組織においては、無償で利用できる便利なサービスだからといって、業務で個人情報などを登録して活用することに問題ないのかどうか、情報管理ポリシーの確認も求められる。
関連情報
■URL
Google マップ
http://maps.google.co.jp/
Yahoo!地図「ワイワイマップ」
http://waiwai.map.yahoo.co.jp/
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( 永沢 茂 )
2008/11/21 16:25
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