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Eee PC 901-X
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持ち運びやすさやリーズナブルな価格で、多くのユーザーを獲得している「ネットブック」。CPUやディスク容量などの基本的なスペックは一般的なノートPCよりも低いが、Web閲覧やメールの利用では十分な性能といえるだろう。
気軽に利用できるネットブックだが、ネットワークに接続するからにはセキュリティ対策が欠かせない。とはいえ、低スペックなネットブックにセキュリティソフトをインストールすることで「サクサク動かなくなるのでは」という心配もあるだろう。
そこでASUSTeK Computerが7月に発売してネットブック人気の火付け役となった「Eee PC 901-X」に以下のセキュリティソフト6製品の体験版をインストールし、起動速度、メモリ使用量、スキャン速度、Web閲覧に与える影響などを検証した。
・ノートン インターネットセキュリティ 2009(以下ノートンと略記、他も同様)
・ウイルスバスター2009(ウイルスバスター)
・Kaspersky Internet Security 2009(Kaspersky)
・マカフィー・インターネットセキュリティ2009(マカフィー)
・ESET Smart Security(ESET)
・ウイルスセキュリティZERO(ウイルスセキュリティ)
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ノートン インターネットセキュリティ 2009
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ウイルスバスター2009
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Kaspersky Internet Security 2009
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マカフィー・インターネットセキュリティ2009
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ESET Smart Security
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ウイルスセキュリティZERO
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● 最新パッチの適用でCドライブの空き容量は1GB以下に
Eee PC 901-XのCドライブは、初期出荷状態で約1.3GBの空き容量しかない。さらに、11月までのセキュリティ更新プログラムに加え、プレインストールされているJavaとAdobe Readerのアップデートを行った結果、空き容量は1GBを割ってしまった。
このように、ストレージ容量に制限があることを考えると、セキュリティソフトのインストールに必要なディスク容量は少ない方が望ましく、その上でインストール先のフォルダを変更できればさらに良い。そこで、インストールフォルダが変更可能かどうかを確認するとともに、インストールに必要なディスク容量を測定した。
ディスク容量の測定方法としては、インストール後にウイルス定義ファイルなどのアップデートを行った時点でのディスク使用容量から、インストール前のディスク使用容量を差し引くことで推定した。なお、セキュリティソフトのインストーラーは、あらかじめSDHCカードに保存した上で実行したほか、テスト条件を統一するためにすべて標準インストールを選択している。
【標準インストールと初回アップデートに必要なディスク容量】
製品名 |
容量 |
ウイルスセキュリティ |
99.9MB |
Kaspersky |
204.2MB |
ノートン |
220.2MB |
ESET |
226.2MB |
マカフィー |
234.6MB |
ウイルスバスター |
552.6MB |
インストール先については、すべて標準がCドライブのProgram Files以下だったが、インストール先を変更できないのはマカフィーとウイルスセキュリティだけで、他のセキュリティソフトはカスタム設定が可能だった。特にESETはインストーラーを起動した直後にインストールフォルダを選択できるようになっているのでわかりやすい。
今回はすべてセキュリティソフトが推奨するセットアップを選択しているため軽量化の余地は残されているものの、ウイルスバスターのインストールサイズの大きさは気になった。その他のソフトについては残り容量が1GB弱であることを考えれば許容範囲といえるが、マカフィーとウイルスセキュリティ以外はDドライブにインストールするという選択肢もある。
ただし、Eee PC 901-XではCドライブにアクセス速度が速いSLCタイプのフラッシュメモリ、Dドライブにアクセス速度が遅いMLCタイプのフラッシュメモリを搭載しているため、Dドライブにインストールした場合は、スキャン速度などの性能に影響が出る可能性があることを考慮したい。
ちなみに、最近発売されているネットブックはドライブ容量が大幅に増えているため、インストールに必要なディスク容量を気にすることはないかもしれない。例えば、ASUSTeKではSSDを1ドライブ構成の16GBに強化した「Eee PC 901-16G」を11月に発売したほか、10月には160GBのHDDを搭載する「Eee PC 1000H-X」を発売している。
なお、Eee PC 901-Xは初期状態で、Windows Updateの自動更新が設定されていないが、インストール直後にこの状態を警告したのはマカフィーだけだった。
● 実質的に「休止」が使えないネットブックは起動時間がポイント
次は、起動時間を見てみたい。起動時間の計測には、Symantecがプレス説明会で配布したツールを使用した。このツールは、CPU使用率が5%未満の時間が5秒続くと起動完了と判定しているようだ。計測は4回行い、極端に数値の違うものを除外して平均している。
【各ソフトをインストールした状態でのWindowsの起動時間】
製品名 |
起動時間 |
ウイルスセキュリティ |
46秒47 |
Kaspersky |
57秒54 |
ESET |
1分3秒90 |
ノートン |
1分9秒40 |
ウイルスバスター |
1分12秒56 |
マカフィー |
1分12秒97 |
バッテリ駆動でノートPCを長時間利用するには、ちょっとした中断の場合はスリープを、電源供給が行えない移動時には休止を使用して、不必要なバッテリ消費を抑えるのがポイントの1つに挙げられる。
ところがEee PC 901Xはストレージ容量が小さく、休止に必要な領域を確保しにくい。実際に、今回のテスト環境ではWindows Updateを行った時点で空き容量が1GBを切り、休止領域が作成できなかった。
このため、少し長い移動を行う場合は出先で起動する必要があり、起動時間が長いとユーザビリティに支障をきたすことになる。とはいえ、今回のテストではウイルスセキュリティが46秒と良好な結果を出しているが、他の製品に関しても相当待たされたという感覚はなかった。
● メモリ使用量はソフトごとに差が出る
メモリ使用量の計測については、後述のフルスキャンテストの1回目が終了した後にSysinternalsの「Process Exprorer」を起動し、対象プロセスのWorking Set(あるプロセスによりソフトが使用しているメモリの総量)の合計値を記載している。数値は多少上下する上に共有しているメモリも含むため、厳密な比較値にはならないが目安にはなるだろう。
【メモリ使用量】
製品名 |
メモリ使用量 |
ノートン |
11.0MB |
ウイルスセキュリティ |
39.2MB |
ESET |
40.1MB |
Kaspersky |
50.9MB |
ウイルスバスター |
89.5MB |
マカフィー |
135.5MB |
メモリ使用量という点では、2008年に大幅に改良されたノートンがトップだが、ウイルスセキュリティ、ESET、Kasperskyも健闘している。
● 完全スキャンは各社とも意外と時間がかかる
セキュリティソフトのスキャン速度の目安としては、完全スキャンの時間を合計3回測定した。ただし、連続して3回スキャンを行ってもあまり意味がないため、1回目の計測後、Web巡回速度を計測するためのソフトをダウンロードしてインストールしたほか、2回目の計測後は後述するWebサイトを巡回した。
【完全スキャン時間】
製品名 |
スキャン1回目 |
スキャン2回目 |
スキャン3回目 |
ESET |
13分58秒 |
12分18秒 |
12分28秒 |
ウイルスセキュリティ |
14分44秒 |
12分43秒 |
13分3秒 |
Kaspersky |
19分13秒 |
1分6秒 |
1分1秒 |
ノートン |
22分9秒 |
2分48秒 |
2分23秒 |
ウイルスバスター |
25分16秒 |
24分56秒 |
24分37秒 |
マカフィー |
30分4秒 |
34分21秒 |
29分47秒 |
Eee PC 901-XのストレージはCドライブとDドライブの合計で12GB。使用しているファイルサイズは4GB未満だったため、比較的短時間でスキャンが完了すると思ったが、1回目のスキャンでは最速だったESETでも14分近くかっている。これは、CPUパワーとSSDの速度が通常のPCよりも低スペックなのが影響しているものと思われる。
これに対して、1回目のテストで19分だったKaspersky、22分だったノートンは、2回目以降のテストでは大幅に短縮されている。これは、初期スキャンやプログラムのホワイトリスト判定によって不要なファイルのスキャンを省略する機能を備えているためだ。
● Web巡回のオーバーヘッドは差が大きい
現在のマルウェアは、Webサイト経由で侵入するものが多い。このため、多くのセキュリティソフトはWebブラウザの状態を監視して、マルウェア感染に結び付くコードが含まれていないかHTMLファイルをチェックしているが、これが速度低下の要因にもなっている。ネットブックの主な用途の1つがWeb閲覧であることを考えると、こうしたセキュリティソフトの負荷(オーバーヘッド)が大きい製品はユーザビリティを低下させると言える。
そこで、Symantecがプレス説明会で配布したスクリプトを使用して、Webサイトの巡回に要する時間を計測するとともに、ネット上からソフトウェア(Adobe Flash Player 10.0.12.36)もダウンロードし、その時間を計測した。
巡回したサイトとしては、Google、Yahoo!、MSN、INTERNET WatchおよびPC Watchのトップページ。計測はスクリプトで5回行い、平均値を記載している。
【巡回に要した時間】
製品名 |
巡回時間 |
ESET |
1分23秒 |
ウイルスバスター |
1分44秒 |
ノートン |
1分48秒 |
ウイルスセキュリティ |
1分56秒 |
Kaspersky |
1分59秒 |
マカフィー |
2分9秒 |
ちなみにセキュリティソフトを入れない場合の数値は1分17秒。このことから、差が6秒だったESET以外のセキュリティソフトのオーバーヘッドは、かなり大きいことがわかる。
今回テストした中で最もサクサク感が高かったのはESETで、セキュリティソフトを入れなかった場合と比べても8%程度のオーバーヘッドにとどまっている。これに対して、最も重かったのはマカフィーで67%のオーバーヘッドを計測した。なお、ソフトによって巡回速度に差が出た理由としては、Webブラウザ監視に関する機能の有無や、アルゴリズムが異なるためだと思われる。
● 軽快さではESETがネットブック向き?
最後に、ネットブックで快適に使えるセキュリティソフトについて考察したい。繰り返しになるが、ネットブックの利用方法を考えた場合、まずはWebアクセスで感染するマルウェアを防ぐ機能を重視するべきだろう。その上で起動時間が短く、Webアクセスのオーバーヘッドやインストールサイズが小さいソフトが望ましい。こうした観点で見ると、今回の結果を見る限りでは、ディスク容量と常駐メモリ量が平均的レベルで、そして何よりもWeb閲覧時のオーバーヘッドが小さかったのがESETだった。
なお、セキュリティソフトを評価する基準としては、マルウェアなどの脅威の検知力が重要なのは言うまでもないが、今回は検証項目から割愛している。これは、マルウェアを網羅して収集、検知力を検証できる環境がなく、偏った内容でテストすると誤った印象を与える恐れがあるためだ。今回の評価は、あくまでも、低スペックなネットブックでも快適に動作するという観点からのレビューであることをお断りしておきたい。
関連情報
■URL
Eee PC 901-Xの製品概要
http://eeepc.asus.com/jp/product2.htm
( 小林哲雄 )
2008/12/18 12:06
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