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リコー、個人向けオンラインストレージ「quanp」事業を加速


オンラインストレージサービス「quanp」とは

quanp
http://www.quanp.com/

登録をするだけで、無料で1GBまで利用できるリコーのオンラインストレージサービス。有料コースもあり、有料会員はより大容量のストレージやファイル共有機能などが利用できる
 リコーのquanpは、オンライン上でファイルの保存・共有ができるストレージサービスである。

 専用クライアントソフト「quanp.on」を利用することで、3次元でのコンテンツ管理画面の表示による直感的な操作や、ドラッグ&ドロップするだけの簡単な操作で、ファイルをアップロードできることが特徴となっている。

 デジカメで撮影した画像や、ビデオ映像のほか、PowerPointやExcel、Word、Pdfといったデータを、特定のユーザーと共有して利用することも可能だ。

 また、11月にはWebブラウザからも利用できる「quanp.net」を公開。Internet Explorer 6.0 SP2以降、Firefox 2.0以降、Safari 3.0以降であれば、専用ソフトがなくても利用できるようになった。

 quanp.onはWindowsからのみ利用可能だったのに対し、Macもサポートしたquanp.netの公開によって、Macユーザーも同サービスを利用できるようになった。これをきっかけに利用者数は右肩上がりになっているという。

 利用料金は、保存容量が1GBの「Trial」が無料。10GBの「Standard」が月額300円、100GBの「Quantum」が月額 980円となっている。

 また、quanpのIDを持っていないユーザーに対しても、quanpに保存したファイルを送信できる機能を提供。最大50MBまで、無料で転送できる。


「quanp.net」にはじめてログインした時の画面。無料ユーザーでも1GBまでアップロード可能だ 同時に10個までのファイルをアップロードできる

quanpは「リコーの遺伝子を形にした」サービス

リコー MFP事業本部CPS事業室室長・生方秀直氏
 現時点でのquanpの利用者数、有料会員数などについては、公表していないが、「利用者数は着実に増加している。リコーがこうしたサービスを行っていることを知っていただくという観点では、成果が上がりはじめている」(リコーMFP事業本部CPS事業室・生方秀直室長)としている。

 では、リコーは、なぜquanp事業を開始したのだろうか。

 quanpについて生方室長は、「リコーの遺伝子を、現在の世界において、形にしたもの」と表現する。

 リコーは、複写機をはじめとする企業向けビジネスを行っている、モノづくりの「メーカー」であることは周知の通りだ。その観点から捉えれば、コンシューマ向けオンラインストレージサービスであるquanpは、まさに対極にある事業だと捉えることができる。それにも関わらず、生方室長は、リコーの遺伝子との関連性を強調する。

 なぜだろうか。

 リコーは、1936年に理研感光紙として設立。70年以上の歴史を持つ企業である。

 創業時の社名で示すように感光紙の製造、販売で事業をスタートし、複写機ビジネスで成長してきた同社が、設立以来目指してきたのは、「紙になにかの情報・知識を載せて、顧客の情報・知識の視覚化、保管、共有、伝達や知識創造に貢献する」ということである。

 「この遺伝子を、現在の世界に置き換えた場合、リアルな紙だけでは網羅しきれない部分が出てくる。それがBitの紙ともいえる領域。Webで利用されるバーチャルな紙に対して、リコーがサービスを提供するという意味で、quanpは、リコーの遺伝子を継承した事業だといえる」と、生方室長は位置づける。

 quanpの名称も、「Quantum Paper」(量子の紙)から命名した造語だ。

 「Bitの紙では、静的なビットマップのイメージだけでなく、動的なイメージも扱える必要がある。また、オンラインストレージとして、単にデータを蓄積するのではなく、データを活用することも重要な要素」とする。

 quanpでは、「file your life」をキーワードに、「Life Memory」、「Augmented Brain」をサービスのコンセプトとする。

 これらの言葉には、現在の人生のなかで不可欠となるデジタルデータを、ファイルとして、あるいはメモリーとして蓄積し、それを自分だけで所有するのではなく、家族、友人など共有し、人生をより豊かにするという意味が込められている。また、Augmented Brain(補助的な脳)という言葉にも、自分の頭のなかに格納しておくことができないものを、quanpがサポートするという意味を持たせている。

 個人が、人生をより楽しむためのオンラインストレージサービスというのが、quanpが目指すところだと言えるだろう。


専用アプリケーション「quanp.on」の起動ログイン画面。半年前にリリースされたサービスだが、すでにバージョンは2.00に上がっている アップロードしたファイルを区分けするための設定などは、Webブラウザより専用ソフト「quamp.on」を使った方がやりやすい

個人向けにスピード感あるサービス展開を

リコー MFP事業本部CPS事業室マーケティングユニットスペシャリスト・菱沼大輔氏
 もうひとつ、quanpを、個人向けサービスと位置づけていることも、リコーのなかでは異質である。

 しかも、生方室長の所属組織からもわかるように、複写機事業を推進するMFP事業本部のなかに、quanp事業は含まれている。単純に考えれば、リコーが得意とする企業向け、とくに多くユーザーを抱える中小企業向けのオンラインストレージサービスとして提供することの方が適しているともいえる。

 だが、「土日の利用が多いことから、現在の利用者の中心は個人。一部には企業での利用もあるが、全体の約9割は個人利用と見ている。今後も、企業向けにquanpを提供していくことは考えていない」(生方室長)という。

 実は、quanpは、現リコー社長の近藤史朗氏が、MFP事業本部時代に肝入れでスタートしたのが始まりである。

 リコーは、2010年度を最終年度とする第16次中期経営計画において、新たな成長領域を創出することを基本戦略のひとつに掲げている。また、第15次中期経営計画の期間においても、新規事業創出に向けた模索が行われており、社内に設置されたクロスファンクションチーム(CFT)によって、新事業領域としてコンシューマ向けビジネスの可能性を模索。そのひとつとしてオンラインストレージサービスの検討が開始されてきた経緯がある。

 つまり、これまでのリコーにはない新規事業を創出するための具体策のひとつとして、同サービスが位置付けられ、これを具現化する形で、MFP事業本部のなかにCPS(コンシューマ・プロダクツ&サービシズ)プロジェクトチームを発足。quanpの事業化に向けた検討が開始されたのだ。その後、CPS事業室へと昇格。今年5月からの事業開始につながった。

 現在、MFP事業本部は、海老名などに分散しているが、約30人で構成されるCPS事業室だけは、東京・銀座の本社に居を構え、複写機ビジネスとは異質であり、柔軟な発想とスピード力が求められる環境に対応できるようにしている。

 「5月のサービス開始以来、毎月新たなサービスを追加している。これは、これまでのリコーにはない、quanpならではのスピード感。最新サービスとして、11月27日からは、有料コースの利用者を対象に、携帯電話から手軽にquanpを利用できるquanp.mobile ベータ版の提供を開始した。ベータ版の形でも公開し、まず利用者に使っていただき、評価していただくというスピード感をこれからも継続したい」と、リコーMFP事業本部CPS事業室マーケティングユニットスペシャリスト・菱沼大輔氏は語る。


「quanp」のユーザー登録画面。無料の「Trial」コース利用の場合は、希望のIDとメールアドレス、パスワード、ニックネームを入力して利用規約の同意ボタンを押すだけと、登録は非常に簡単だ 11月にWebブラウザからの利用に対応したのに続き、携帯電話からの利用にも対応。携帯向けサービスは、有料ユーザー向けにベータ版として提供中だ

今後の展開~事業化、海外展開、プラットフォーム化

 quanpは、将来に向けたいくつかの事業プランを持っている。

 ひとつは、第16次中期経営計画の最終年度となる2010年度での黒字化だ。

 すでに今年度から予算はついているが、むしろ今年度の課題は、認知度を高めることと、利用者に対して、リコーが持つブランド力を背景に、信頼性を確立することだろう。

 「有料で大切なデータをお預かりするという事業だけに、信頼感をいかに高めていくかが重要。セキュリティ保護、プライバシー保護という観点でも、quanpならば安心してご利用いただけるという認知を高めたい」(生方室長)。

 黒字化に向けては、有料会員だけでの収益モデルで賄う考えだ。信頼感を維持するには、広告モデルによるビジネス形態は適していないという判断によるものだ。

 2つめは海外でのサービス展開である。これは、黒字化にも直結することになるが、リコーが得意とする北米市場などへの展開が来年度以降見込まれることになる。これをベースに、2010年度における利用者数は700万人を目指す。700万人のうち、海外比率がどの程度になるのか、また、有料会員数はどの程度になるのかが、収益を左右することになるだろう。

 そして、3番目は、quanpのプラットフォーム化である。

 現時点では、個人向けサービスに留まっているが、これをプラットフォームとして提供し、他のソリューションサービスのベースとして展開するというビジネスだ。

 プラットフォーム化することで、リコーグループ内でも、デジタルカメラ事業や複写機ビジネスなどとのサービス連動といった検討も可能になる。プラットフォーム化は、将来に向けた事業拡大の試金石になるというわけだ。

 一方で、この領域は、競争が激しい分野。無料で、あるいは容量無制限でオンラインストレージサービスを提供する企業もある。

 「各社のそれぞれのサービスには特徴がある。だが、どれも決め手に欠けるのも事実。quanpでは、個性的なユーザーインターフェースの実現により、使い勝手を高め、これがユーザーからも高い評価を得ている。また、メーカーであるリコーは、ハードとの連動性という視点から、サービスを取り込めるポジションにもある。ウェブの世界におけるビジネスは、どんな成長をするかわからない。どこでブレイクするかもわからない。それが醍醐味でもあり、面白味でもある。リコーならではの特性を前面に打ち出しながら、他社と差別化していく」と、生方室長は語る。

 リコーのquanp事業が、今後、どんな成長を見せるのか注目される。


12月17日から2009年1月29日まで、quanpユーザーを対象に、プロカメラマンを無料で派遣してくれるキャンペーンを実施中 「quanpヒント集」のページでは、使い方のヒントを提供。quanpにアップロードしたWordのファイルは、Wordを持っていなくても閲覧可能。ネットカフェのPCでもOfficeドキュメントが閲覧できる

関連情報

URL
  quanp
  http://www.quanp.com/

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( 取材・執筆:大河原克行 )
2008/12/26 11:34

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