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「サウンドストリート」は80年代の記録、早く合法配信したかった

エアチェックテープ配信サイト「NHK青春ラジカセ」担当者に聞く

「NHK青春ラジカセ」トップページ。「FM STATION」誌の表紙などで知られるイラストレーター・鈴木英人がこのサイトのためにイラストを描き下ろした (C)NHK
 NHK-FMが1969年3月1日に放送を開始してから40年を迎えたのを記念したキャンペーン「FM40」が現在、同局において展開されている。その特番の1つが「サウンドストリート・アーカイブス」(3月2日から27日まで、平日の深夜24時から25時)。「サウンドストリート」は、1978年11月から1987年3月まで放送されていたDJ番組で、佐野元春、坂本龍一、甲斐よしひろ、山下達郎、渋谷陽一らが曜日替わりでDJを務めた。

 NHKでは「FM40」に先立ち2008年11月、「サウンドストリート」の放送開始30周年を記念して、同番組の音源をインターネットでストリーム配信するサイト「NHK青春ラジカセ」を公開した。当時のテープはNHKにも保管されていないということで、一般のリスナーから“エアチェック”(ラジオ放送を録音すること)したテープを提供してもらい、それをデジタル化して配信しており、現在までに18本の“カセットテープ”が公開されている。「サウンドストリート・アーカイブス」は、Webサイトを通じて集められた音源を、再びFMの電波に載せて“再放送”しているものだ。

 「NHK青春ラジカセ」を企画したNHK編成局デジタルサービス部チーフ・ディレクターの倉又俊夫氏とライツ・アーカイブスセンター副部長の松本友之氏に話を聞いた。2人は、NHKの保有するコンテンツ資産の“価値最大化”を目的として新たなサービスや事業を検討する「MAXプロジェクト」のメンバーだ。


「サウンドストリート」には今でも訴求力がある

NHK編成局デジタルサービス部チーフ・ディレクターの倉又俊夫氏(左)とライツ・アーカイブスセンター副部長の松本友之氏(右)
――「NHK青春ラジカセ」を企画した経緯を教えてください。

倉又氏:「MAXプロジェクト」の中の5名のメンバーで1年前から、音声コンテンツを活用できないかということで、保管されているテープの主なものを聴いていきました。著名な作家の朗読やラジオドラマ、野球中継も聞きました。しかし、私は正直言って、これらをWebで公開して果たしてどういう方が聴いてくれるのか想像できませんでした。

 一方で、個人サイトはじめ「サウンドストリート」に関する記述は多く、某動画共有サイトにも番組の音声がアップロードされていたりと、インターネット上では「サウンドストリート」の人気があることがわかりました。

 しかし、「サウンドストリート」は音源が保管されておらず、かろうじて残っていた佐野元春さんの回のテープを聴いたんです。ちょうどアルバム「SOMEDAY」がリリースされたころのものです。映像とは違う音の魔力みたいなもので、佐野元春さんの独特の言い回しを聴いた瞬間、一気に1980年代に引き戻されました。やるならば「サウンドストリート」からだよね、という結論になりました。

松本氏:「MAXプロジェクト」では、これまでにもいろいろなプロジェクトをやってきましたが、どうしても映像が中心でした。現在、「NHKオンデマンド」としてテレビ番組の有料配信をやっていますが、ラジオ番組や音声コンテンツで何かできないかというのが当初の発想でした。

 埼玉県川口市にあるNHKアーカイブスには、音声コンテンツが約4万コンテンツ残されています。文化人の講演会や、アポロ着陸時の中継、巨人対阪急の日本シリーズなど、音声コンテンツが半ば眠ったままになっています。もちろん、放送などにも活用されてはいますが、もっと光を当てて活用できないかと考えていました。

 そして、インターネットで新しいサービスを検討するにあたって実験的・試験的に提供するのなら、いちばん訴求力があり、みんなに喜んでいただけるものではないかということで、「サウンドストリート」になりました。


もう1つ候補として挙がったのは「クロスオーバーイレブン」

――ほかにも候補番組はあったのでしょうか。

倉又氏:候補としては「クロスオーバーイレブン」もありました。2001年まで続いた番組で、自分がリスナーだったこともあり、これもいつかはやりたいとは思っています。

松本氏:「クロスオーバーイレブン」も、「サウンドストリート」と同じ1978年11月23日にスタートしました。それまで、ラジオのチャンネル周波数は10kHzおきに設定されていましたが、それでは足りなくなるということで、9kHzごとに変更になったのがこの日でした。通常、番組改定は4月に行われますが、この年は周波数の変更のタイミングで11月23日という特殊な日に行われ、「サウンドストリート」と「クロスオーバーイレブン」が新番組として立ち上がったわけです。

倉又氏:「サウンドストリート」が放送されていたころは、CDが出る直前の時代だと思います。今の“流し聴き”みたいなことではなく、ステレオやラジカセの前に正座するような気持ちで、“世界に開かれた窓”としてみんながFMを聴いていた。その時代感を伝えられるということで、「サウンドストリート」を第1弾にしました。

松本氏:第1弾として「サウンドストリート」を通じて1970年代から1980年代を振り返っていますが、この先も展開できるのであれば、「サウンドストリート」に限らず、みなさんにとって懐かしい青春時代を共有できればという思いを込め、「NHK青春ラジカセ」というタイトルを付けています。


1980年代はエアチェック文化の時代、多くの人が録っているはず

――一般の視聴者が録ったものを逆にNHKが提供してもらうのは、初めての試みなのでしょうか。

松本氏:これまで事例がなかったわけではありません。テレビ番組でも、NHKで保管制度が設けられたのは1982年ごろです。昔は放映すればそれでおしまいで、テープも貴重だったため、放送が終われば再利用して重ね録りの繰り返し。大河ドラマであっても、1975年放送の「元禄太平記」までのものは、ほとんど残されていませんでした。

 例えば、1970年代に夕方6時台に放送されていた「タイム・トラベラー」「謎の転校生」などの少年ドラマシリーズも保管されていませんが、当時は高価だったホームビデオで録画して保存されている視聴者にお借りし、デジタル化しました。放送で活用したり、各地のNHKにある公開ライブラリーで見られるようにしています。

 そのように細々とですが映像でやっていたものを、ラジオという音声でやったのが「NHK青春ラジカセ」です。1970年代終わりから1980年代といえばエアチェック文化があった時代で、多くの人が録っていたはずです。「当時は保管制度がなく、ほとんどのテープが失われています。このサイトのためにご協力ください」と正直ベースで呼び掛けることにしました。


300本のエアチェックテープが集まり、順次デジタル化中

「NHK青春ラジカセ」には3月17現在、18本のエアチェックテープがアーカイブされている (C)NHK
松本氏:「NHK青春ラジカセ」を立ち上げるにあたっては、当時の関係者のほか、個人サイトなどで「サウンドストリート」のテープを持っていると書いている方にメールを出して協力をお願いしました。2008年6月ごろ、番組に出演したゲストや選曲について非常に詳細なプレイリストを掲載しているサイトの運営者の方に連絡したところ、快諾いただいてすぐにテープを送っていただきました。「NHK青春ラジカセ」を開設する11月までに、5~6人の方に連絡して、中には120本送っていただいた方もいました。

倉又氏:ある種、我々にも「あ、これはまだ、みなさんの記憶に残っているものなので、当時のリスナーの方々に頼っても大丈夫かな」という勝手な見込みもありました。「サウンドストリート」について熱いことがブログで書かれていたり、番組でかかった曲をプレイリストとして掲載しているサイトがあるのを見て、「これだけ詳細なプレイリストを作るには、テープがないと書けないはずだ」と。

松本氏:サイト公開後は、お寄せいただいた情報だけで500本以上、実際に提供いただいたのが約300本あり、順次デジタル化しています。

倉又氏:悩ましかったのは、カセットレーベルが書かれておらず、内容が詳しくはわからないもの。お借りした貴重なテープなので、こちらも闇雲に聞くこともできません。カセットレーベルがきちんと書いてあるものから先にとりかかりました。


提供されたテープは録音状態も良好、多くが90分テープを使用

――一般のリスナーがカセットテープに録ったものということで、音質に問題はないのでしょうか。デジタル化するにあたって何か特別な処理などは?

松本氏:NHKアーカイブスに保存するにあたっては、現在のところDATを使用していますので、お借りしたテープをまずDATにダビングします。ノイズがあるものは、「Pro Tools」(音声編集用のワークステーション)に読み込んでノイズリダクションも行います。

 「NHK青春ラジカセ」では、用意できたテープの中からまず番組の内容優先でチョイスし、次に出演者の許諾のとれたものから順に公開しています。音質優先でチョイスしているわけではないため、実際に聴いていただくとわかりますが、ノイズが入っているものもあります。

 それにしてもみなさん、きちんと録られていて、保管状態もいいものでした。中にはエアチェック状態が悪くノイズのあるものも若干ありましたが、ほとんどが、現在「NHK青春ラジカセ」で公開しているような音質です。

――カセットテープは、A面からB面に替える際に録音が途切れてしまいますが。

松本氏:その点、提供いただいた方のほとんどが90分テープを使っていました。「サウンドストリート」の後期は番組が50分間に延長されましたが、しばらくは40分間と45分間だったため、90分テープを使うと途切れずに録音できたのです。

倉又氏:当時は「90分テープは薄いからいやだよね」とみんな言っていたんですけどね。

松本氏:曲だけ録りたいという人は短いテープでもよかったのでしょうが、やはり番組を丸々録りたいという人は途中でテープを裏返すのがいやなのでしょう。提供いただいた中で1人だけ途中で裏返している方がいましたが、曲の途中で裏返しており、トーク部分は途切れていませんでした。

 テープを提供いただいた方は、トークも含めてそのDJが好きだから、現在もテープを残しておられるのでしょう。その方にとっては、例えば坂本龍一さんが紹介してくれた音楽だけでなく、坂本龍一さんのトークの中身も残しておきたいと思って録っているのです。

倉又氏:こういう番組が、好きなアーティストの好きな音楽や影響を受けた音楽を系譜学的にたどっていく1つのきっかけになったんだと思います。当時のリスナーは、それを貪欲に聴いていきたいと思っていたんです。


実物のカセットテープをモチーフとしたインターフェイスを採用

「NHK青春ラジカセ」のインターフェイスはFlashを全面的に採用。エアチェックテープを再生すると、カセットテープが回り出す仕掛け。早送り・巻き戻しボタンもある (C)NHK

カセットの表面をクリックすると、放送日や曲目などが書かれたを表示する。カセットレーベル風の罫線も再現している (C)NHK
倉又氏:当時、私は中学生でしたが、レコードは中学生のお小遣いで買うものとしては高価でした。自分の買ったレコードしか聴けないとなると、音楽の世界は広がりません。こういうFM番組を通して、あるいは兄貴分のDJからこういう曲が流行っているとか、こういう曲も聴いたほうがいいよと言われて吸収していきました。そういう意味で、DJ番組が“世界に開かれた窓”でした。

 しかも、「FM fan」「週刊FM」「FMレコパル」「FM STATION」といったFM雑誌の当時の発行部数から判断する限り、これはごく一部の人の話ではありません。みんながそうやって聴いて、カセットテープに録って、ウォークマンで聴いたり、友達と交換したり、あるいは学校の放送部の生徒は校内放送でかけてみたりしていたのです。

 そういう意味で、「NHK青春ラジカセ」のサイトのインターフェイスも、ラジオのような送り出すイメージのインターフェイスも考えられたのですが、送り手というよりは聞き手をイメージするカセットテープにしました。形のない電波に乗ってやってきた形のない音というものが、みんなの思い出になっているのは、最終的にカセットというものに収められ、どういうラベルにするのか、どういうインレタ(インスタントレタリング)を使うのか考えたことも影響しているのです。

松本氏:サイトのネーミングもラジカセですが、操作感にもこだわりました。カセットテープを選ぶときはカセットケースの背ラベル部分をクリックし、さらにカセットの表面をクリックするとラベルに書いてある曲目が見られます。

――公開されている回ごとに、カセットテープのデザインが異なっています。実際にあった商品をモチーフにしたのでしょうか。

倉又氏:イラストで描くと嘘っぽくなるので、写真で撮影したものをベースにしています。

松本氏:商品そのものではなく、若干修正していますが、メーカーの違いなど「確かにこんな商品があったよな」と思わせるようにしています。


「サウンドストリート」は佐野元春デビュー2年目からの成長記録

「NHK青春ラジカセ」では、DJや当時の番組ディレクターらのインタビュー記事も掲載している (C)NHK
――配信するには、出演していたDJの方の許諾も必要になりますよね。佐野元春さんと坂本龍一さんの回からスタートしたのは、2人がインターネット配信に理解がある方だったからでしょうか。

倉又氏:確かに、結果的にそうなりました。しかし、「サウンドストリート」に関してインターネット上で言及されている量や寄せられたエアチェックテープの数から言って、この2人の協力を得られないと、この企画は進められないと思いました。まず最初に佐野元春さんに打診しましたが、実際にお会いして説明したところ、「こういう形で紹介していただけるのは、自分とてもうれしく、光栄です」と言ってもらえました。

松本氏:佐野元春さんは1980年3月にシングル「アンジェリーナ」でデビューしました。そのデモテープを当時の「サウンドストリート」のディレクターが聴いてDJに起用しようと思い、デビュー2年目の1981年に「サウンドストリート」のDJに起用されました。途中、1983年から1年ほどニューヨークで活動されましたが、その間も「サウンドストリート」は続けられており、アーティストとしての成長記録にもなっているんです。

倉又氏:個人的には、私は火曜日派だったので、坂本龍一さんにはぜひご協力いただければと思っていました。また、動画共有サイトを見ても、番組の音声が無許諾でアップロードされている数も多く、再生回数も多かったのを見て、我々がオフィシャルにやることで、早くみなさんが後ろめたい思いをせずに堂々と聞けるようにしたいと思っていました。


「戦メリ」前・後の坂本龍一、変化はYMO散開の時以上?

松本氏:DJだけでなく、ゲストの出演者の方でも、当時の文化を伝えたり、もう一度ラジオのよさを伝えるためならということで、インターネット配信に快諾していただける方もいます。

倉又氏:坂本龍一さんの回をずっと聴いてみると、「戦メリ」(映画「戦場のメリークリスマス」)に出演する前後の変化が、YMOの散開よりも大きい印象が伺えます。その意味で、「戦メリ」のクランクイン前の1982年4月、「戦メリ」の監督である大島渚さんをゲストに呼んだ回が非常に面白いといういことで「NHK青春ラジカセ」で公開しました。当時、大島渚さんが50歳、坂本龍一さんが30歳。まだ映画の撮影に入る前、2人のアーティストが出会ってまさに作品が生まれようとしている時のトークを聴くことができます。

 その1年後の1983年4月、坂本龍一さんの友達ということで作家の村上龍さんがゲストとして出演した回は、村上龍さんが原作・監督の映画「だいじょうぶマイフレンド」の公開直前の時期。一方、坂本龍一さんも主演・音楽を担当した「戦メリ」が公開されようとしている時期。きっと、普段もこういう友達トークをしているんだろうなという不思議な感じがする、当時の横のつながりが垣間見られる回になっています。特に坂本龍一さんの回は、登場するゲストによって当時の文化状況が伝えられたらいいと思って配信する回をチョイスしています。

松本氏:当時の話題の人をゲストに呼び、もちろんDJ自身も最先端で成長している方が起用されています。その人たちが話しているということで、1980年代という時代そのものの記録になっています。


著作権の関係で楽曲部分はカットされているが……

テープが残されていなかった番組の“再放送”が「サウンドストリート・アーカイブス」として実現したことについて、「ひとえにネットでの呼びかけに協力していただいたみなさんのおかげ」と語る松本氏。次は「坂本龍一さんの回の真髄の1つ『デモテープ特集』の配信にトライしたい」とも
――火曜日の名物企画として、リスナーが投稿してきたデモテープを流す特集がありました。楽曲部分がNGということであれば、「NHK青春ラジカセ」での配信はないのでしょうか。

倉又氏:いや、「デモテープ特集」は火曜日の坂本龍一さんの回を語る上では欠かせない存在です。投稿者の許諾をとり、何らかの形で復刻させたい。テイ・トウワさんや槇原敬之さんのデモテープがかかった回を中心に実現できればと思っています。坂本龍一さんにとってデモテープの募集は、「サウンドストリート」を離れた後も、他の番組でずっと続けているものです。新しい才能と出会いたいという気持ちが大きいのかもしれません。

松本氏:デモテープに関しては、「DEMO TAPE-1」というCDにもなっています。「デモテープ特集」で放送されたものすべてが収録されているわけではありませんが、そこから著作権者をたどれるのではないかと考えています。エアチェックテープは、テイ・トウワさんのデモテープがかかった回など集まりつつあります。

倉又氏:坂本龍一さんの回といえば、もう1つ外せないのが「電気的音楽講座」。これは、1981年8月に放送された夏の特集番組で、「サウンドストリート」の火曜日のテーマ曲を作る過程を5日間に分けて伝えた音声ドキュメンタリーです。これを聴くと、当時どうやってシンセサイザーを使って曲を作っていたのかがわかります。今ならMacが1台あればできることですが、当時はまだMTR(マルチトラックレコーダー)もまだ一般的ではなく、アマチュアはピンポン(2台のテープレコーダー間でダビングしながら、その上に音を重ねていく手法)で曲を作っていた時代です。現在音楽制作をされている方で、「電気的音楽講座」を聴いて感化されたという方も多いようです。

松本氏:「電気的音楽講座」は、「NHK青春ラジカセ」でも特別版という形で5回分をそろえて公開したいところです。実はすでに2人の方からエアチェックテープは提供いただいています。これから坂本龍一さんに許諾をお願いして、配信できればと考えています。


今後は「NHK時計」ガジェット的展開も?

自身も「サウンドストリート」世代の倉又氏。「NHKに入社してやりたかったことの1つに、『サウンドストリート』の音源を聴くことがあった」が、当時、資料室に行って探しても保管されておらず、驚いたという
――「NHK青春ラジカセ」は実験的・試験的サイトとのことですが、今後の展開を教えてください。「NHK-FMオンデマンド」のようなサービスに発展するのでしょうか。

倉又氏:「NHK青春ラジカセ」は現在はWebサイトとして公開していますが、私がこれまで「NHK時計」ガジェットを作成・公開してきた経緯を踏まえると、Webならではの造り込みを考えると面白いと思っています。

松本氏:「MAXプロジェクト」は実験的な取り組みを行い、何かきっかけをつかんで、それを事業ベースに移したら、次のプロジェクトを考えるのが仕事です。「NHK青春ラジカセ」をずっと続けて欲しいとの声もいただいていますが、多分、半永久的にやるというものではありません。ただ、今回、「FM40」で「サウンドストリート」が“再放送”されるという成果を生む第一段階まで来ました。「NHK青春ラジカセ」のサイト自体は4月以降も続けながら、次の展開を考える段階にあります。

 これが当時のリスナーの心をつかむということであれば、編成局の方で何か展開を考えるかもしれませんし、「サウンドストリート」に限らない別の展開もあるかもしれませんが、今はそこまでは至っていません。「NHK青春ラジカセ」を開始してもう5カ月になります。その成果もふまえて、関係部局や局外ともご相談していきたいと思います。

――ありがとうございました。

 「サウンドストリート」のDJは、同番組の“黄金期”とも称される1983年度から1985年度までの佐野元春(月曜日)、坂本龍一(火曜日)、甲斐よしひろ(水曜日)、山下達郎(木曜日)、渋谷陽一(金曜日)という面々のほか、松任谷正隆、森永博志、烏丸せつこ、川村恭子、松浦雅也、大沢誉志幸、平山雄一が起用された時期もある。

 しかし、このうち初期の松任谷正隆、最終年度の松浦雅也、大沢誉志幸、平山雄一についてはまだ1本もエアチェックテープが入手できていないという。倉又氏は「ぜひコンプリートさせたい」として、この4名の回のエアチェックテープを保管している人はぜひ情報を寄せてほしいとしている。


「サウンドストリート」の歴代DJと担当した曜日、放送時間については、「NHK青春ラジカセ」のサイトの「サウンドストリートとは」のページで一覧表を掲載している (C)NHK

関連情報

URL
  NHK青春ラジカセ
  http://www.nhk.or.jp/my-fm-days/
  「FM40」特設サイト
  http://www.nhk.or.jp/fm/40th/

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NHK-FM「サウンドストリート」の録音テープをネット配信(2008/11/20)


( 聞き手:永沢 茂 )
2009/03/17 11:29

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