NTT西、デジタルフォトフレーム型電話アダプターによる振り込め詐欺対策~来春商品化へ


「KIZUNA(絆)」試作機を手に持って説明するNTT西日本 サービスクリエーション部 新ビジネス部門 ネットバリュー担当課長の木村吾郎氏

 西日本電信電話株式会社(以下NTT西)は12月6日、11月岡山県真庭市でトライアルを実施しているデジタルフォトフレーム型電話アダプター「KIZUNA(絆)」(仮称、コードネーム)の記者向け説明会を開催した。岡山県真庭市でのトライアルは1月31日まで2カ月半にわたって実施し、NTT西ではトライアル結果を踏まえて2011年春には商品化したい考えだ。価格は未定だが、通常のデジタルフォトフレームと同程度、2万円前後にしたいとしている。

 「KIZUNA」はタッチパネル付きのデジタルフォトフレームに、電話アダプター機能を付加したもの。機器に登録されていない番号からの電話がかかってきた場合には、画面表示と音声で「登録されていない番号です」と注意喚起。また、三者通話機能により、かかってきた未登録番号の通話を保留し、登録済みの家族に画面の写真を選ぶことで発信して確認や報告ができ、保留をオフにして家族に直接、電話してきた相手と話してもらうこともできる。通話していない間はデジタルフォトフレームとして利用できる。

 三者通話機能は、NTT網の付加サービスではなく端末側の機能を利用するため、三者通話機能利用による追加料金などは発生しないが、同時に2つの電話番号(未登録の発信者と、その後にかける家族の電話)との通話を行うため、利用には2回線が必要となる。高齢者ではアナログの固定回線が1回線だけ引かれている場合が多く、実際の利用にはこの点がハードルになると思われるが、NTT西では「光回線利用のサービスがこのほかにもあるため、これをきっかけに光回線をご利用いただければと考えている」という。

 NTT西日本 サービスクリエーション部 新ビジネス部門 ネットバリュー担当課長の木村吾郎氏は、「2009年の被害総額約95億円で被害者の約8割が60歳以上という振り込め詐欺の被害状況を上げ、被害はお年寄りが大半を占めるため、固定回線で電話を受ける割合が多く、固定回線の事業者として、こうした被害をなんとかできないか」と開発の背景を説明。

 振り込め詐欺の有効な対策として警察では、(1)家族で振り込め詐欺対策について話し合う、(2)不審な電話のサイは、すぐに家族に相談する、(3)知らない電話番号からの着信には注意する、の3つの項目を挙げているという。木村氏は、このうち(2)(3)を技術でカバーできないかと考えたと述べた。

 真庭市で実施しているトライアルでは、実際に振り込め詐欺の電話がかかってきた例はまだないが、端末に家族の顔写真が表示され、タッチパネルで押すだけで電話がかけられるため「使いやすい」といった声や、「文字ボタンはもっと大きくしてほしい」といった要望などが上がっているという。NTT西では、こうした声をもとに2011年4月頃には商品化したい考えだ。

「KINUNA(絆)」は開発コードネーム。来春発売を目指す利用イメージ未登録の番号から電話がかかってくると、注意を喚起するメッセージが表示され、「登録されていない番号です」と音声も流れる
未登録番号は自動的に録音する機能も備える未登録番号からの通話を保留し、三者通話機能を使って、長男の携帯にかける未登録番号からの通話の保留を解除し、三者通話機能で長男と直接話してもらうことも可能

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(工藤 ひろえ)

2010/12/7 06:00