月額490円で使える仮想サーバー「ServersMan@VPS」が実現できた訳


 フリービット子会社のドリーム・トレイン・インターネット(DTI)は1日、月額490円から利用できる低価格の仮想専用サーバー(VPS)サービス「ServersMan@VPS」を開始した。

 月額490円という料金設定は、VPSサービスとしてもかなり安い。また、サービス名称にもあるように、フリービットがiPhoneやデジタル家電向けに提供しているサーバーソフト「ServersMan」が、このVPS上で利用できる点も特徴だ。

 低価格のVPSサービスを提供し、ServersMan構想を進める狙いはどこにあるのか。フリービットおよびDTIの社長を務める石田宏樹氏に話を伺った。

月額490円・HDD10GBのVPS、ストレージやIPv6環境としても利用可能

石田宏樹氏

――「ServersMan@VPS」はどのようなサービスなのでしょうか。

石田氏:まず単純にスペックだけで言えば、ワンコインで使えるVPSです。「Entryプラン」では、HDD容量10GB、メモリー容量256MBのVPSが、月額490円で利用できます。初期費用は無料です。さらにハイスペックなサービスを必要とする方向けには、月額980円の「Standardプラン」(HDD容量30GB、メモリー容量512MB)、月額1980円の「Proプラン」(HDD容量50GB、メモリー容量1GB)もあります。

 StandardプランとProプランについては4月下旬からの受け付け開始となりますが、Entryプランでは4月末までに申し込んでいただければ、月額料金が3カ月無料となるキャンペーンを行っています。

――かなり低価格ですが、サーバーとしては普通に専用の仮想化サーバーなのですか。

石田氏:root権限付きで、OSはCentOS 5.4、IPv4の固定アドレスも1つ付いていて、もちろんWebサーバーやメールサーバーとしても使えます。StandardプランとProプランには、Webブラウザーから各種設定を行える「BlueOnyx」も搭載します。

 さらに特徴としては、「ServersMan」の機能を標準搭載しているので、ファイルのバックアップであるとか、携帯電話やスマートフォンで撮影した写真をダイレクトにサーバー上に保存するといった、クラウド上のストレージとしても使えます。また、IPv6にも完全対応していますので、IPv6環境のサーバーが欲しいという人にも使っていただけると思います。

「ServersMan@VPS」の料金プラン

余っている上り回線を使い、仮想化技術の独自開発で低価格を実現

――単純にVPSとしても、月額490円はかなり安いサービスだと思いますが、なぜこの価格が実現できるのでしょうか。

石田氏:DTIは接続サービスを提供しているプロバイダーなので、上り回線がすごく余っています。サーバーから見れば下り回線で、この部分のトラフィックのことをほとんど考えなくていいことが大きいです。次に、中国に開設した研究所で、OpenVZなどのオープンソースソフトをベースとして、独自の仮想化技術を開発しました。従って、ライセンス料が発生しないという点も大きいです。

 仮想化サービスのためのインフラ整備には、メディアエクスチェンジ(MEX)と共同でずっと取り組んできました。今回のサービスだけでなく、既にDTIの各種サービスもほとんど仮想化環境の上に構築されています。単にVPSを提供するだけならもっと早くできたのですが、ワンコインで提供することを目標にしてきたので、490円になるまでには1年ほどかかりましたが、今回実現できました。

――仮想化サーバーのパフォーマンスは問題ないでしょうか。

石田氏:仮想化で大丈夫なのかという声は、正直社内にも当初はありましたが、実際にDTIのサービスもほとんど仮想化環境の上で動いています。ServersMan@VPSの各サーバーあたりのリソースも、本当は1台のサーバーにもっとたくさんのVPSを収容できると思うのですが、かなりリッチに割り当てています。

ServersMan@VPSの各プラン詳細

ServersManがVPSで動くことで、ストレージや連携サービスも

「ServersMan」の利用イメージ

――ServersManの機能がVPSに入ることで、どのようなことが可能になるのでしょうか。

石田氏:ServersManは2008年12月の発表以来、iPhoneやAndroid、Windows Mobileといったスマートフォンや、NAS、デジタル家電といった機器に対応してきました。「ServersMan@VPS」は、最もリッチなインターネット環境であるデータセンター内にServersManを置くことで、さらにできることの幅が広がります。

 たとえば、携帯電話やスマートフォン向けには「Scooop」というアプリを公開していますが、これを使うと撮影した写真をServersManに直接保存できます。ServersMan@VPSは普通のインターネットサーバーでもあるので、そうした写真とWebアプリケーションを組み合わせるといった利用も考えられます。

――ServersManは「iPhoneがサーバーになる」という点はインパクトがありましたが、具体的にどう使えばいいのかが分かりにくい部分もありました。VPS上で動作していると便利に使えそうですね。

石田氏:理想的にはスマートフォンも常時サーバーとして動作してほしいのですが、iPhoneですとバックグラウンドで動作しませんし、電池の問題などもありますので、現状ではスマートフォンからは主にファイルの送受信に使われています。ただ、ServersManはグループ化して動作させられるので、ServersMan同士の連携も可能です。

 現在、「Cloud Shell」というWebDAVクライアントを開発していて、近日公開予定です。見た目はWindowsのExplorerと変わらないのですが、これでServersManのフォルダを2つ開いてファイルをコピーすると、ローカルのPCを通さずにファイルをコピーします。こうした「クラウドtoクラウド」のアプリケーションを、もっと提供していきたいと考えています。

 今回のServersMan@VPSで、ServersManを発表した時に考えていたことのうち、第一章の部分の実装はだいたいできたかなと思います。

iPhoneで撮影した写真を、ServersMan対応のデジタルフォトフレームに転送といった動作も簡単に行えるServersMan@VPSのコントロールパネル。VPS上のServersManも簡単に設定が行える

DTIの古くからのユーザーには月額105円で提供

DTIの長期ユーザーには月額105円でEntryプランを提供する

――DTIといえばプロバイダーのイメージですが、ServersMan@VPSをDTIブランドで提供するのはなぜですか。

石田氏:DTIについては、回線から切り離したサービスにしたいと考えています。ServersMan@VPSは、接続サービスに依存しない新たなDTIのサービスとして、DTIの接続会員でないユーザーにも使っていただければと思います。

 一方で、ServersMan@VPSはDTIのサービス拡充の一環でもあります。DTIでは、4月下旬にはメールサービスの名称を「DTI Cloud Mail」と改め、メールボックス容量を5GBに拡大します。IMAP4にも標準対応で、PCやモバイル機器からメールを一元管理できます。また、フレッツ光のユーザーには、インターネット回線のトラフィック情報をリアルタイムで公開するほか、回線に帯域制限を設けないオプションサービス「プラチナオプション」の申し込み受け付けも、DTIの長期利用者から開始しました。

 ServersMan@VPSも、2000年12月31日以前にDTIに加入したユーザーには、Entryプランを月額105円、Standardプランを月額690円、Proプランを月額1580円で提供します。2001年1月1日~2010年3月31日にDTIに加入したユーザーの場合も、Entryプランが月額315円、Standardプランが月額880円、Proプランが月額1790円と割引になります。

――2000年以前の入会というと、かなりの長期ユーザーですね。

石田氏:長年DTIを使っていただいている方もたくさんいますので、そうしたユーザーへの感謝を込めて、月額105円という思い切った価格にしました。DTIユーザー向けには、テストの意味もあって先行して受け付けを行ったのですが、おかげさまで予想を大幅に上回る申し込みがありました。有償のオプションサービスとしては、過去に例のない数の申し込みで、早くも設備増強が忙しくなっています。

――これだけ低価格ですと、VPSも様々な用途が考えられると思いますが、どういったユーザーに使ってもらいたいと考えていますか。

石田氏:まずはスペックと価格で見てもかなりお手頃ですので、低価格のVPSサービスとして使ってもらえればと思います。そして、ServersManが標準で使えるので、オンラインストレージとしても便利に利用できます。また、IPv6にも標準対応していますから、IPv6のテスト環境が欲しいといったユーザーにも、気軽に使っていただけます。

 仮想サーバーということでパフォーマンスが気になる方も多いと思いますが、4月までに申し込んでいただければ3カ月無料で試せますので、まずは使ってみていただいて、その上でサービスを継続するか、やめるか、あるいはよりハイスペックなプランにするかを決めていただければと思います。

――どうもありがとうございました。


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(三柳 英樹)

2010/4/5 11:34